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徒然
壱岐津 礼
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2014年03月02日(日)

 あまりにテンションが変になってましたので、改めて。
 2月末日に、すぴばる小説部に新作をUPしました。

 こちらです↓
 『永遠の放浪者 とわのたびびと』

 ボリュームとしては中編。長編にはあと四百字詰原稿用紙100枚くらい及びませんでした。微妙に悔しい―――しかし二次創作としては、充分「長すぎる」くらいな長さかと思われます。しかも私の文章スタイルは基本ぎっしりみっちりですから……。
 えー……、二次というからにはジャンルというか原作が存在するわけですが、今回のジャンルというか原作は『吸血鬼ハンターD』です。はい、そこのお年を召した方、遠い目をしない。はい、そこのお若い方、「なにそれ美味しいの?」みたいな顔しない。「なにそれ美味しいの?」なお若い方でも吸血鬼は分かりますよね?ドラキュラやカーミラの名を目にしたり耳にしたことくらいは……え?無い!?
 「吸血鬼」というモチーフは、欧州で旧くから伝わる伝承が元になっていますが、かのブラム・ストーカーの著した『吸血鬼ドラキュラ』によって、一気に西洋妖怪界、アンデッド界のスターダムにのし上がりました。アンデッドくらいは分かりますよね?RPGにだって出てくるんですから。グールとかゾンビとかは、アンデッドピラミッドの底辺を支える下層アンデッドで、吸血鬼、或いはヴァンパイア、或いは、ノーライフキングと様々な名で呼ばれていますが、こちらは、アンデッドピラミッドの頂点に立つ存在で、つまり君主で、支配者なんですよ。派生作品が多数作られるうちに、いささか安っぽい扱いもされるようになってきていますが。といいますか、ドラキュラの元々のモデルであった実在したワラキア公ヴラドは一国の君主だったのに、『吸血鬼ドラキュラ』では「伯爵」まで格落ちしてますので、もう、ブラム・ストーカー時点から、そういう傾向はあったのかな、と、脱線しました。失礼しました。
 なお、カーミラの方は、レ・ファニュという、作者の名前はあまり知られてませんが、ブラム・ストーカーとは別の人が書いた百合耽美吸血鬼小説のヒロインですね。ええ、断固としてカーミラがヒロインですね!襲われる娘は別にいますが!それでやっぱりお貴族さまです。
 と、長い前置きになってしまいましたが、『吸血鬼ハンターD』は、こうした吸血鬼作品の系譜の中でも「吸血鬼を狩る者」というモチーフに焦点を当て、「吸血鬼ハント」ものという支流を生み出した、エポック・メイキングな作品なんですよ。ヴァン・ヘルシング教授もドラキュラを退治してますが、あの方は、それを専業とされてたわけじゃありませんからね。D(固有名詞)は「吸血鬼を狩る」のがお仕事です。
 エポック・メイキングってのは、例えばアニメで『BLOOD THE LAST VAMPIRE』からシリーズ化?した『BLOOD+』なんかも、Dが存在しなければ生まれなかった作品だと思うんですよ(『BLOOD+』は個人的にはイマイチでしたけれど)。そんなわけで、後の世代の主にポップカルチャー方面に影響を与えた作品です。
 私がDに出会ったのは、まだ紺色の制服に身を包んでいた頃ですから、今から二十数年前くらいになるでしょうか遠い目……。シリーズは、記憶違いでなければ現在も続いているはずです。Dは設定の上でも年を取らないけれど、私はすっかりおばさんになりました涙目。
 私が出会った当時は第一作『吸血鬼ハンターD』のみが刊行されていたのですが、その後、原則一年に一依頼一巻読み切りスタイルでシリーズが出るようになりました。このスタイルは後年、一つの依頼につき複数巻消費されるようになって崩れるんですが、とりあえず、今回、私が記しました作品のベースは、第一巻『吸血鬼ハンターD』と、第二巻『風立ちて―――D』と、天野喜孝画伯の画集『魔天』に寄稿されていた短編(もしかしたら掌編だったかも)をベースとしています。『魔天』の方は、現在入手困難かもしれませんが、本編の二巻までの知識があれば概ねネタが分かるはずです。ということなので、原作読んでね!?面白いからっ!!太鼓判押すから!!私が大!絶!賛!!!
 殊に第一巻は、スキヤキ・ウエスタンな胡散臭さと怪奇趣味とセンチメンタリズムが絶妙に融合したボリュームも過不足なく満足できる名作!です!!
 拙作の方を先に読まれてから原作を読んでいただくのもアリかな、とも思います。

 紺色の制服に身を包んで通学途上の痴漢に悩まされていたその昔、同好の士である友人と「Dで合同誌を作ろう」という話が持ち上がったことがありまして、諸般の事情により、その企画はポシャッたのですが、その合同誌用にかきかけていたネタを仕上げたものが、本作となります。こ……、構想二十ン年……いえ、筆力が無くて当時は仕上げられなかっただけです。といいますか、といいますか多いな、ンもう!最初は漫画で描くつもりでコンテ切りだしたんですよ。10頁切って本題に入れなかったので「こりゃヤバイ」と思って小説に切り換えたのですが、小説にしても「合同誌」に載せるには長すぎましたね!「個人誌でやれ!」ていう感じですよ。あぶないところでした。友人にものすごく迷惑をかけるところでした。企画がポシャッってよかったのかもしれません。
 (「書き上げたら、こちらで発表しちゃっていいか」という件は、了解を得ています)
 同人誌にありがちな日常のワンシーン切り取り、みたいなものではなくて、「ちゃんと起承転結のあるストーリーを書きたい」というのが、本作を書き始めた動機です。
 「起承転結のあるストーリー」と言いましても、実は、D(作品名)は、本編の登場人物を使ってそうしたものを編むのが非常に困難な作品です。というのも、原作で「解決してない事件」に同人が介入するわけにはいかないし、事件が解決してしまったらD(固有名詞)はその場から立ち去ってしまうので、他のキャラクターとの繋がりが希薄なんです。そして、致命的なことにDは喋らない。一人だと本当に喋らない。誰かと一緒に居たって積極的には喋らない。「どういう身の上のやつか」てのについても、職業と、まあ、お父さんはあれなんだろうな、くらいしか分からない。どこでどう育ったとかさっぱり分からない。主役なくせして、基本的な立ち位置が傍観者なんですよ。通りすぎてゆく過程で事件と若干絡むだけで。そういうの、木枯し紋次郎とか、昔の時代劇でありますけどね、様式美。左手と掛け合い漫才で一本、というわけにもいきませんし。結果、オリジナルな舞台を用意し、オリキャラを大量投入し、そこでどうにかしていただくことになりました。二次でオリキャラ投入は、本来、私はあまり好まない方なんですけれどね。
 漫画から「やっぱり小説でいくか」と切り換えた当初、「小説のパロを小説で、てどうなの?」みたいな葛藤は若干ありました。よく考えたら、漫画のパロを漫画でやってたりしてたので悩むようなことじゃありませんでしたよね。
 「せっかくだから、原作の文体を模倣しようか?」と、試みたこともありました。頓挫しましたが。えーと、そもそも、「菊地秀行(敬称略)文体」というのは、真似できるものでも真似してよい文体でもないんですよ。血迷ったばかりにえらく高く分厚い壁にぶつかってしまいましたが、最終的には「自分なりでいいんじゃない」と、自分なりの文章で仕上げました。ただし、お約束として「Dは超絶美形」という部分はくどいくらい押さえました。おかげさまで、自分のボキャブラリーの限界に挑戦する羽目になりました。「美形は絵で描くより文章で書く方が楽」とか昔言った人がいたような気がするけど!そんなことは全然ないからっ!「超絶に美形なんです!」と本文で書けるなら苦労しませんから!!
 それと、菊地秀行作品のお約束として「下衆」いやつを出さなければならないな、と。これに非常に苦しみました。原作に登場した下衆いやつというのは、基本的にそこで片付いてしまってるので引っ張ってこれないんですよ。自力で調達するしかないんですよ。オリキャラでわざわざ「下衆」いやつを書くなんて楽しくないじゃないですか。「下衆」書くの楽しくてたまらない、なんて変態じゃないですもの。しかし、ここは押さえておかなければならない、と、随分頑張りました。
 「下衆」を頑張りつつ、その、元はジュブナイル作品ですから、「全年齢」になるように、「有害図書」とか言われないように、と、その辺、非常に厳しい戦いがあったりしました。私の中で、ですけれどね(ツッコミ入ってから修正とかイヤですから)。昔は大丈夫で、今はアウトな表現などありますので、着想した当時とは色々、設定変えなきゃならない部分もありました。こういうの、つらいですね。高校生ごときが思いつくような設定が今、アウトなんですよ?色々あぶなそうなところを迂回して書いたら、逆に思わせぶりにジュブナイルから足踏み外しそうになってしまいましたよ!
 悔いの残るところとしては、「明るく終われなかった」というのと、「左手の活躍の場が、そういえば作れなかったな」の二点があります。原作のお約束では、基本、一件落着した後は、Dは微笑んで去るものなんですが、書き進むにしたがって、「ああ、無理だなぁ」「これは無理だなぁ」と、結論、無理でした。左手が活躍できなかったのは、所詮、私は一読者な立場であって、左手に何ができるのか知らないわけですし、「これができることにしよう」とでっち上げることだってできなかった、という理由もあったりします。
 ともあれ、やおいでもBLでもない、マジメな作品です。
 友人からは「またエロいものを書いて」と言われそうな悪寒がしますが……原作者がエロスとバイオレンスの双璧の一方をなす方なので、今回については私のせいじゃないわっ!(全年齢です)

 タイトル、「永遠」を「とわ」、「放浪者」を「たびびと」と読ませたかったわけですが、ルビが振れなかったので、このようになりました次第。

 原作と併せて楽しんでいただければ幸いです。

※2月末日のとっちらかった記事も一応残しておきますね……。