カンラン
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目覚ましをかけずに眠りについたところ、目覚めたのはお昼を軽くすぎた頃だった。 パンとヨーグルトを食べ終えるところまではのんびりじっくり。ただし、そっから先は、さすがに危機を感知するおつむも動き始めたようで、ばたばたと出掛けの用意に取り掛かったが、いつもどおり足掻きに対して成果はうすっぺらだ。 とりあえず、嵐のあとのような空気を布団の中に隠して家をあとにする。
昼下がりと夕方の間の時間帯の街。 途中、電車の中から、街を練り歩く人びとを見かけた。 「派兵反対」などと書かれたプラカードを持った長い長い行列が平和公園へと続いている。あれから1年が経つそうだ。 おもしろくなさそうな子供、行進しながらも携帯電話にて通話中の人、そして車いすに乗ったまま運ばれてくちいさくて細いおばあちゃん。 そんな光景に、むなしさがつのる。
結局、待ち合わせの時刻には10分ほど遅れて到着。 夏の研修で会った以来ご無沙汰してたエヌさんは、あいかわらずしゅっとしたべっぴんさんで、きれいなブルウのスプリングコートを羽織っていた。 待ち合わせ場所の地階でお茶(お腹が減ったというエヌさんは食事)をしながら近況報告。 その後ぶらりぶらりと歩いて本日のメインイベント、ボウリング大会会場へ。
いまだに声をかけ続けてくれる昔の職場の方には感謝。 出不精の私は、正直、いつもいつも誘われてすぐはなかなか気分が盛り上がらないのです。 でもそこを通り越すと、ほんと毎たんび楽しませてもらっちゃって。嬉しいかぎり。
ブービー賞のおうちボウリングセットをおみやげに、地下のりばから出る電車に乗る。 おむかえありがとう。
考えられないへまをした。 へまってか、自分で自分が信じられなくなるようなことだ。 つまりは、「仕事ができない」とか、「要領が悪い」とかそんなんじゃなくて、もっともっと基本的な失態。
「忘れてたでしょ?」と指摘されてから事態を把握するまでの一瞬は、一瞬に間違いないはずなのに、ひたひたと嫌なものが近づいてくるような、ひとひらの考えが動き出すのにもぼぉぉ・・・だの、ごぉぉ・・・だの重低音が響き渡るような、息苦しく長いひとときに感じられた。 もう、やだ。 人間性疑うぜ、私自身よ。
ほんとに足元すくわれちゃったか。
春の風に、足元をすくわれる。
しっかりと地面をつかむようにして立っていた足は 巻き起こる砂埃にくすぐられ、 平穏なこころを示す足跡は見る見るうちに洗われ消え行く。
生ぬるい風がおさまった今も 耳の奥ではざわめく木立。
目をつむってやり過ごそうか。 自分が望まない限り、 吹き飛ばされることはないのだから。
12枚目の定期が切れた。 帰りの列車がホームに入ってくるまでの間に、顔なじみの駅員さんに回数券の発行をお願いした。 「寂しくなるのぅ。」と言いながら機械に向かって打ち込んでくれるその姿をぽうっと眺める。
その昔、滋賀県はM市から、数週間、京都の学校に通ったことがある。 今思えば、定期券を買ったほうがお得だったんだろうけども、貧乏性の私は一時にどかんと高額のお金を払うことに不安を覚え、回数券を買った。 親元を離れての居候の身だったこともあるし(何かのときにお金はとっておきたかったんだろう、多分。)、買った定期券を失くしたら自分では取り返しのつかないことを危惧した上でのことだった。 そのとき買った回数券は、たしか、いわゆるほんとの綴りのかたちをしていて、金額部分は駅員さんがスタンプで押してくれた。一枚一枚ぴりぴりちぎっていくものだ。
そんなしわしわな記憶を何年かぶりで頭の中から引っ張り出していたら、めりめりと印字音が聞こえ出し、11枚の綴りを手渡された。 青色をしていて、うんと遠いところまで行ってしまえそうな切符だった。 少し寂しい。駅員さんに会えなくなることも、すっきりきれいな11枚の切符も。
私はあともう一度、この回数券を買う。
市内にて出張のため、いつもより2時間も遅起きできる!と喜び勇んで眠りについたのは昨日のこと。その小さなしあわせがぶちんぶちん音をたてて見事に消えてしもうた。 研修内容、きびしすぎ。このくそ忙しい年度末にそりゃあないぜ・・・とためいきがつきない。うちは田舎だし職員も少ないからまだ随分ましなほうだと思うけど。間違いなくややこしいことが付随してくるなぁ。
研修会場から外に出ると、夕方の弱弱しいひかりがあたりを照らしている。朝方にどでんと頭上に居座っていた雨雲は、きっと今頃どこか遠いところで雨を降らせているんだろう。また冬が遠のく。 以前どこかのHPで見たパン屋さんを発見して、シナモンブレッド他2点を購入。こじんまりとした、近所にあれば嬉しくなるようなお店だった。街なかにあるようなこじゃれたパン屋さんではなく至って日常使いなんだけど、英国っぽい雰囲気が漂う静かな空間。 明日の朝ごはんは、ねぼけまなこを振り払って、しっかり味わって食べよう。
その後、街で母と待ち合わせ。 父に持たせるホワイトデーのプレゼントを買うため、あちこちデパートめぐりをしていたんだそう。毎年毎年一応いろいろ悩んだりするけど、結局おんなじようなものになってしまうよね、などと喋りながら、久しぶりに二人してぶらぶら歩く。 夕食前に立ち寄った私の好きなお店で、思いがけずプレゼントを買ってもらった。バレンタインにあげたチョコが大きく化けて返って来た。ありがとう。 春が待ち遠しい。
積もらない雪が降る。 自分の中で真冬は随分と昔にやり過ごしているつもりでいるらしく、白いものが落ちてくるのを見ると、驚きのあまり、一瞬からだが固まってしまう。そんなわけでここ3日間ぐらい、何度も固まり続けている。
積もらない雪。 落ちているその瞬間しか目にとまることのない雪。 雨のように地面をびっちゃにすることも、 人に鬱陶しがられることもなく、 さらさらと落ちては人の肩にとまり、 人に踏みつけられる前にそぅっとその姿を消す。
嗚呼・・・、とその先のことばが見つからないままに雪のやってくる方を見上げる。 小さな子が口を大きく開けているそのすぐそばで。 嗚呼、暖かい毛布が今すぐ欲しい。 続きのことばを思い当てて、先を急ぐ。
部屋の戸を、犬ががりがりやっているので目が覚めた。 眠いのと寒いのとで、可能なだけ布団を被ったまま、からだをめいっぱいのばす横着スタイルで開けてやる。わき腹あたり、間違いなくいつの日かつりそうだ。 それにしても、平日の今日、なんで私が潜伏してることを知りえたのか。お座敷犬の意外なるリサーチ能力に脱帽。
ところで、本日ついに私も「今風」に仲間入りした。 今風認定書ならぬ、とある一枚のはがきを握ってあらわれた母。少し前に(←この時点ですでに「今」じゃないかも。)連日マスコミに取り上げられていた、最後通告とかいうやつ。ついに私のところにまでやって来たか。世も末じゃ。 連絡期限は本日3月5日。今日中に連絡がなかった場合には・・・云々。もちろん記されているのは携帯番号でさ。こわい、ってか、きもいよね。どっから漏れてんだよ、住所。名簿売って金儲けしてる輩、結構うようよしとんじゃろね。気分わる。
午後から気を取り直して近所へ買い物。 今日の夜ごはんは、タラコミルク煮ライスとアボカドの酢醤油和え。かんたんにできておいしいご飯。 留守番仲間の犬にもお皿にすこし残った分をおすそわけしたら、あまりの狂いようにすっかり閉口。もうやんない。・・・多分。
仕事のことでもやもやもや。そんな気分のまま、3連休行きの電車に揺られること一時間と少々たった頃。いつの間にやら一通のメールが届いていたことに気づき、開封。 なにやらもったいぶった、けれどいいことの前兆を感じさせるような文面に添えられたURL。しばらく待ってあらわれた画像はなんと初代の手袋くん。しかも、両手がちゃんと揃って!ややするめな姿、間違いなく私が生まれて初めて編んだ手袋だ。
昨年より行方知れずになっていた片われ、まいさんちの自転車置き場にぽてんと横たわってたらしい。何度も何度もそこを通りかかっていたはずなのに気づかなかったとは・・・。雨の日も雪の日もずっと近いとこにいたんだねぇ、と見つかった嬉しさの中に一握のせつなさを感じつつ、あっち(まいさん)やこっち(うち)で喜びあった。 とは言え、すでに二代目が活躍してるわけだし、長らく屋外で放置されていたことによってぐちょぐちょのよれよれになっているはず。 そう思っていたところが、不思議なことに状態はどうしてなかなか良好らしい。どっかから歩いてきたのか。五本の指をゆらゆらさせながら深夜人知れず行進する片われ手袋の姿を妄想。
おかげで仕事のもやもやもやが吹っ飛んだ。 明日から3連休だ、いぇい。
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