ものかき部

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「 誕生日のようなたまらなさ 」
2007年09月15日(土)



 十五夜の満々と輝きを撒き散らす満月
 その満月を引き立てるだけの漆黒のような肉体を借りている
 北海の弾けるようなオレンジ色の鮭
 その鮭を育てるだけのにごって暗い海水のような心を借りている
 寒梅の霜を切り裂くような鮮やかな紅白
 その紅白を1年も前から隠し持っていた樹木のような魂を借りている

 天空と地上と植物、存在とさえ一致する借り物の雄大
 雄大の幽玄さと、借財の有限さに、自我の有言さえ

 

「 残暑のようなたまらなさ 」
2007年09月01日(土)



 体内から吹き出た粘液の、べっとりとした汚れが指紋にこびり付いた
 手首の付け根から、鼻腔と上唇で舐めるように指先へと向かう
 大きく肺が膨らむたびに、墨石鹸と粘液の匂いが漂(ただよ)い
 まるで人肌にバターをたらしたような濃厚な、それでいて生暖かい触覚が鼻腔と上唇を満たしていく

 鼻先を親指と人差し指の間の水かきに深く入れ、両側から鼻の穴を閉じるように撫で回す
 片側で、上下に前後させながら、鼻をクンクンとさせながら
 両肺が狭まる時、口腔から吐き出し石鹸と粘液と人肌の仄(ほの)かな香りを邪魔しないようする

 手首を横に倒して口の開きと平行にして、親指と人差し指の間で左右に上唇を撫で回す
 黄色いバターがそっと上唇の上の肌色に溶け込むようなむずがゆさが、その内たまらなくなってくる
 もちょもちょとした錯覚とバターの香ばしさが溶け込みながら、スベスベとした手の甲の皮膚がアクセントになって
 もうもう 

 たまらない たまらない とまらない たまらない 


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