ものかき部

　　　　　跳んでいく　　　　凄まじい

　　　　　エメラルド色の　　　　　　輝きに満ちた

　　　　　目尻から米神へと　　　　　　　　　　　透明からの爆発

　下まつ毛は少し多いらしい
　上まつ毛は普通に長いらしい
　けれど、あまり人には気がつかれないそんな顔面をしている

　下まつ毛と上まつ毛をつけるまでもなく、そんな顔面の持ち主は深い水の中に潜っていける
　小学校の昼休みの校庭で、高校の卒業式で、大学の小汚い部室の中で、うらぶれた居酒屋の畳の上で、ふっと持ち主の住んでいる世界が酷(ひど)く深い事に気が付かされてきた
　どうしてもあの人は理解してくれなかった
　あのつるっとした額を白々しく輝かせながら、歩くとヒョコヒョコと可愛く揺れるあの人は
　
　まつ毛を会わせれば何時でもあの人にも逢える
　包み込むような暖かい肉体の記憶が今でもはっきりと思い出せる
　けれど、ちょっとでも気を許してまつ毛を離してしまうとあの人とも離れてしまう
　決して混ざり合えない鮮血と泉水のような隔(へだ)たりが観えている
　持ち主はこちらの世界に居るのにあの人もこちらの世界の住人なのに、泉水には決してヌルヌルとした粘液や異臭を放つ彩度がないのだから

　下まつ毛と上まつ毛をつけるまでもなく、そんな顔面の持ち主は深い水の中に潜っていける
　時々、お休みをして小高い森の中に散策にいく
　そして枯れた葉っぱの匂い、黒土の暖かみ、草の柔らかさに手助けされながら目蓋をそっと閉じる
　大自然に抱かれながらあの人にもそっと抱かれる夢をみる
　
　もう疑問や感傷はこの安寧を邪魔しなくなった
　大きくお風呂に入った瞬間のような声を出してゆっくりと浸(ひた)りきったら、またこの森を出て出発するだろう
　それまでは、夕暮れの寒さが持ち主を急かすまでは、もう少し

　狂っているのは私の魂だった。
　神を不完全へと葬り去り、阿弥陀を仏へ押し戻し、死者を病院へと追いやり、弱者を世間を通して見ないようにしたのだから。
　
　君を見ているよ。君が大好きだよ。君に優しい言葉を掛けてあげるよ。君の頭を優しく撫でてあげるよ。
　だって、狂っているのは私の魂だったから。

　眼を閉じれば私は終わっていくだけになってしまった。
　眼を開けば私は何ものにも手助けを借りず、何人にも心を許さず、何にもなれないのだ。
　何になったかという基準までも私の狂気が覆ってしまったから。

　狂っているのは私の魂だった。
　神を不完全へと葬り去り、阿弥陀を仏へ押し戻し、死者を病院へと追いやり、弱者を世間を通して見ないようにしたのだから。
　死も生も来世も現世も弱者も強者も全て私だけから産まれるという奇蹟が驚喜とさせ鬼籍とさせたのだった。