ものかき部

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「 バターの誘惑 」
2006年03月17日(金)




 卑猥で極悪で不道徳でさめざめで皮肉な行動をしていく時ほど、純文学が読みたくなってくるものだ
 個般的な狂気が肉体に安楽でスローな浮遊感を与えてくれる

 艶かしい漆黒の海に抱かれて、バターのように蕩(とろ)けだす三日月が、全ての五感を惑わして惑わして
 ぷかぷかと
 いつか陸地に戻って弱肉強食に放り込まれるまで
 いつか停止が音連れて土塊(つちくれ)に放り込まれるまで
 
 ぷかぷかと
 ぷかぷかに不道徳の身を委(ゆだ)ねて目蓋(まぶた)を閉じる


追記:「個般」は造語です。個性的であると錯覚されている一般的な基準の事。例えば「私はマック好き」、「私は〜のブランドが好き」、「私は最先端じゃないと嫌」など。

執筆者:藤崎 道雪

「 白磁の君�将察 �
2006年03月16日(木)



 陶器の花のような白木蓮が散り逝きて生まれてきた白磁の君
 街で一番のホテルの静けさと一流デパートの苺ケーキワンホールと下手くそで大声のハッピーバスデーの唄
 両手で唇を覆いつつ音もなくさらさらと揺れる雪柳のような白磁の君

執筆者:藤崎 道雪

「 ペルシャ猫と三毛猫 」
2006年03月15日(水)




全身の毛並みが鼈甲(べっこう)のようにつやつやと光っているペルシャ猫が、すっとした首をさらに高く伸ばして言いました。
 「やっぱりもっとハンサムな男の人が現れたら、私はそちらの方へ参りたいと思ったの」
肩のいかっている毛並みもギザギザの大きな黒斑点が顔半分を覆う三毛猫が、そっと視線を落としてつぶやきました。
 「こんな恋愛の話を聞いたことがあるわ。3人の男の人の話よ」
遠くからは琥珀(こはく)に見える密集した長い毛を動かさずに鼻先だけを横にして目を、つーんと押しつけてペルシャ猫は答えました。
 「あら、面白そうね。教えて下さるかしら、丁度あの人が来るまで時間があるんですの」
横に向けられた黒い鼻先だけをちらっと見上げて、三毛猫は1つ1つ思い出すように間違えないように、そしてちゃんと聞こえるように落ち着いた声を出しました。

「金田さんと宝田さんと飯田さんが求婚するお話よ」
「あら、みんな、田がつく人たちなの、変わっているわね」
「金田さんは、街では評判の美人、豊子さんに惚れ込んで惚れ込んで、一生懸命頑張って100万円貯めたそうよ。そして豊子さんに求婚をしたそうなの。そうするとそれを同時に宝田さんがキラキラと光るサファイアを手に求婚したの。とっても素敵な輝きを持つサファイアは150万円相当だったそうで、豊子さんは悩んでしまったの。」
「どうしてなの? 宝石の方が高いじゃないの。それって当たり前だけれど大切なことよ」
「豊子さんが悩んだのは、宝石はキラキラしていて綺麗だけれど、お金は色んな物に変えられるじゃない。それに、宝石は売ると75万くらいにしかならないそうで迷ってしまったの。そうして少し悩んでいると、評判を聞きつけた飯田さんが遠くの農村から200万円分の食べ物を持って求婚にやってきたそうよ」
「200万円分も食べたら太ってしまいそうね。男の人に捨てられてしまいそう、大変だわ」
「またまた豊子さんは悩んでしまったの。だって、宝石はキラキラしていて1日中眺めていても飽きないけれど、お腹が減ったら困るもの。けれど食べるだけでは満たされないものがあって、キラキラ輝く宝石はそれを満たしてくれるのね。現金100万円は宝石にも食料にもなるけれど、食料を買うには半分だし、宝石ももっと良くないランクのものになってしまいからね。」
「そうよね、私もそうなったら悩んでしまうでしょうね。でも100万円単位なら殆ど一緒だから気楽に決められるでしょうね。」
「そうしたら、・・・」
「あら、あの人がやってきましたわ。遠くから見ても格好良いですわねぇ〜 どうも面白いお話ありがとう。お陰で退屈せずにすみましたわ」

 ペルシャ猫の右横からすっと現れた影が、「お嬢さん、とってもお美しいですね。是非とも私と結婚して下さいませんか」と言いました。
 琥珀色の毛が、ザザッと逆立ったかと思うとすっと引きました。何故なら、今の恋人が目に入らなくなるくらいのすらっとした顔立ちの正体は、犬だったのです。
 ペルシャ猫はとっても迷いました。
 ずーっとずーっと迷ってしまって何時の間にか死んでしまいました。

執筆者:藤崎 道雪

「 金魚 」
2006年03月04日(土)



一緒に飼っていた金魚が余りにも美しすぎて、私は嫉妬したわ
貴方はいつも金魚の水温や糞までマメに見るというのに、私の煎餅(せんべい)布団は夏も冬も同じだったもの

一緒に飼っていた金魚が余りにも美しすぎて、私は憎んだわ
貴方はいつも私のご飯を、美味しい、って言ってくれないのに、金魚には美味しいか、って聞いていたもの

一緒に飼っていた金魚が余りにも美しすぎて、私は見蕩(みと)れたわ
貴方はいつでも私を蕩(とろ)かす匂いだというのに、金魚の水の匂いで妊婦は嘔吐(おうと)するだけだもの

一緒に飼っていた金魚が余りにも美しすぎて、私は無視したわ
貴方はどこでも金魚の様子を気にかけて電話をかけて来るというのに、私が実家に帰るのを許さなかったもの

気がついてみれば部屋は40年以上経った6畳しかない古ぼけた畳ばっかりだったんだ
大きな小太りの後から抱き付いて包丁を真横に突き立てて飛び散った金魚色の液体を拭き取るのは大変じゃあなかったもの
何度もその上に金魚を水槽の水ごとぶっ掛けてあげたら奇麗なのに、って思ったわ
でも、やっぱり止めたの
貴方の体から金魚が抜けていって、両頬がどす黒くなってカビが生えてくるのを待とうって思ったもの
貴方の体の中の私を酷(ひど)く惹き付けたもの、狂わせたもの、怒らせたもの、強く勇気付けてくれたもの、愛情を感じさせてくれたもの、そしてこれから怨念を思い出を忘れないようにしてくれるものだもの
それを待ってから、貴方の体の奥底にも金魚色がないのを確認するためにバラバラにして、1つ1つに頬擦(ほおず)りをしてお別れをしたわ
そうしたら涙が止まらなくなって大声を出して泣きじゃくってしまったの
決して貴方と別れたからでもないんだけれど、パクパクさせている4匹の金魚の水槽を見たら、ピッタリ止まったの
金魚よりも雄雄しくて野蛮で力強い鯵(あじ)なんかに食べさせてあげようと持っていったわ

金魚は今でも私の部屋にいるの
その頃のじゃないけれど腹をプカプカさせたらまた新しいのを継ぎ足して
一緒に飼っていた金魚が余りにも美しすぎて、私は嫉妬したわ
だから貴方の事が心の底から大好きだったの
手をパクパクさせて金魚に手を振っているような仕草をする息子を見るとそんな風に思い出すの

執筆者:藤崎 道雪

「 ネクタイを替えるように 」
2006年03月03日(金)



感謝してもし尽くせないほど、感動して憎んで愛して無関心で
だからこそ一言だけ残して立ち去ろう

うーん、その一言が出てこないんだけれど

執筆者:藤崎 道雪

「 停止は出来ぬノンストップ 」
2006年03月02日(木)




円(つぶ)らとはいえない切れ長の瞳から溢れ出てくる水分
気を許せる友達が居ないからなのか
両親の仲違(なかたが)いと我ままさかげんに絶望しているからなのか
この薄汚かった世界がピンク色に一転して踊り出した最愛の恋人の子供が流産したからなのか
はたまた、その最愛の私を生まれ変わらせてくれた感謝の塊にカッとなって兇器を突き刺して薔薇色(ばらいろ)に変えてしまったからなのか
いやいやそうではなく、全ての世界に潜む不平等と不公平に、さらに隠されている暴力に気がついて叫びにならないグチャグチャの脳内が萎縮(いしゅく)したような錯覚からなのか

猫のような御霊(みたま)のような創造神のような両義性で望めばいいのだ 
それでいいのだ
光は闇があるからあるのではなく、光が闇がそれぞれになるのだから
光に闇ゆえになるのであって闇に光ゆえになるのであって相補的な関係は切っても切れないのだ
全ての事象、私の鮮血が産み出す観念の総体、それらは全て相補的な関係であり方法によって限界が規定されていて
規定されていて本能と性によって踊らされていて、踊らされているから観念の総体で把握できるのであって
ピンク色、包丁、言語、両親、感謝、脳内、兇器と狂気と狂喜の区別、創造神というトートロジー、グチャグチャという擬音語、苦しみ、痛覚、生と死、生死一如

積み重ねられぬ 目的などない人生 
重なり合わぬ 創造なぞない可知範囲
整えられぬ 放擲なんかは結局出来ない人間の性

還元しよう、社会の役に立つようにこの生を
変換しよう、喜怒哀楽という仕組まれたこの感情に
倒置しよう、言語の無規定な放胆さにこの肉体物理現象の全てを
放置しよう、この私、この私、他人と違いたいというこの私の、この私の
欲求しよう、この私、社会的価値、精神的意義、通時的観念という表面の方向へ

円(つぶ)らとはいえない切れ長の瞳から溢れ出てくる水分
気を許せる友達が居ないからなのか
両親の仲違(なかたが)いと我ままさかげんに絶望しているからなのか
この薄汚かった世界がピンク色に一転して踊り出した最愛の恋人の子供が流産したからなのか
はたまた、その最愛の私を生まれ変わらせてくれた感謝の塊にカッとなって兇器を突き刺して薔薇色(ばらいろ)に変えてしまったからなのか
いやいやそうではなく、全ての世界に潜む不平等と不公平に、さらに隠されている暴力に気がついて叫びにならないグチャグチャの脳内が萎縮(いしゅく)したような錯覚からなのか

停止は出来ぬ、睡眠を取らなければならぬ、食欲が植えつけられている、性欲で生まれてきている、名誉が欲しくてしょうがなくなるのだから
停止は出来ぬ、喜怒哀楽という個人内、金銭権力という社会内、時間空間という人間内、原子エネルギーという宇宙内の存在者
停止は出来ぬ、停止は出来ぬ

執筆者:藤崎 道雪

「 白磁の君�将此 �
2006年03月01日(水)



 バチバチと頭の中の真っ白をも吹き飛ばす肉体的法悦に浸る白磁の君
 囚われず次から追い求めずおくびにも出さず、太い眉の上でさざめくように香らせるだけで
 倒れ込めなくなるほどの痙攣(けいれん)の後にだけ一言漏れてさっと隠れす白磁の君

執筆者:藤崎 道雪

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