2016年07月20日(水) |
日本のヴァイオリン王 〜名古屋が生んだ世界のマエストロ 鈴木政吉物語〜 |
今でも有名なスズキバイオリン(バイオリン製作)の創始者・鈴木政吉の物語。
鈴木政吉(武田真治)は三味線作りをしていたが、時代の流れから、三味線づくりをやめてしまう。そんな時、バイオリンと出会い、思い立ってバイオリン作りを始めることにする。
赤貧と戦いながら出来上がったバイオリンは初めはいまいちだったが、その後、改良を重ね、数々の賞を受賞するようになる。その陰には妻・乃婦(のぶ・笛木優子)が夫を支える姿が常にあった。
今のヤマハとカワイの創始者との話も出てくる。ヤマハとカワイは今は二大音楽教室のような感じだけれど、最初は仲が良かったんだね。(今も悪くはないのかもしれないが…)
しかし、時代の流れとはまたしても非情なもので、一時は隆盛を誇ったバイオリン工場も倒産。またゼロから始めればいいという政吉。
という、戦前のバイオリン作りの歴史がよくわかる話だった。
さて、バイオリンの教授法で有名なのは、スズキメソッド。このスズキメソッドの創始者が鈴木鎮一なのだが、この鈴木鎮一は政吉とその内縁の妻・良(中村ゆり)との息子なのだった。
父・政吉はバイオリン作りに生涯を捧げるが、バイオリンを人前で弾くということにはあまり関心がなく、はじめは鎮一がバイオリンを学びたいというのに大反対するのだった。
しかし、結局は乃婦の後ろ盾もあって、バイオリンを学ぶことになり、スズキメソッドという大いなる教授法を編み出すことになるのだから、不思議なものだ。
ということで、バイオリンの歴史を知る上ではなかなか面白い話ではあったが、それ以外の面ではそんなに面白くもないというか。まあ、あまり興味がない人には面白い話ではないのは当然なのかな…。
2016年07月18日(月) |
東京すみっこごはん 成田名璃子 |
成田名璃子 光文社文庫 2015
STORY: 東京にひっそりと店を出す「すみっこごはん」は、その日に集まった人がくじを引いて夕食を作るという面白いルールのお店で…。
感想: 謎にあふれた「すみっこごはん」というお店。その店はその日に集まった人がくじを引いて夕食を作る。「素人が作るからまずいときもあります」という注釈つき。
いかにも怪しげなその店に、たまたま行き場所のなかった女子高生・楓がふと入ったのが運のつき。
お店の謎も次第に明らかになって…。
なかなか面白いお話だった。料理が下手な人もお店にあるレシピ本の通りに作れば、まず失敗はしなそうなのだけれど、失敗するときは食べられないような代物ができる時もある。
料理って、そんなに下手に作れるんだ?というのが、正直な感想だが、私も初めの頃は今よりもよくわからなくてちょっとした失敗はよくしたかもしれないなーとも思ったり。
爽やかな気分になれる読後感も良い感じ。
2016年07月09日(土) |
羊と鋼の森 宮下奈都 |
宮下奈都 文藝春秋 2015
STORY: 高校2年生のある日、ピアノを調律するために学校にやって来ていた板鳥の調律する姿を見て、突然調律師になりたいと思った外村。彼は専門学校に入り、調律師として板鳥の職場に入社するが…。
感想: 本屋大賞を受賞したというこの作品。もう少しエンターテインメント性があるのかな?と思っていたら、そうでもなく、思ったよりも地味で、この本が本屋大賞を取ったということが意外な気がした。
とはいえ、私は音楽が好きで、ピアノもまあ弾くし、ほかの楽器もするので、音楽を扱う作品自体は好きだし、調律の奥深い世界を知ることができて、面白く読むことができた。
取り立てて大きな事件が起こるわけでもなく、外村が悩みながらも調律の仕事に向き合っていく様子が描かれている。
外村は北海道の山奥の生まれで、もともとクラシック音楽とも縁遠く、全く楽器のこともわからない素人であったが、なぜか板鳥の調律する姿を見て、調律師になろうと思う。
そんなこと、あるのかなーともちょっと思ったけれど、まあ、それを言ったら物語が始まらない。
そんなわけで、自分はピアノのこともクラシックのこともわからないという劣等感みたいなものが常に潜んでいる。
そんな外村が悩みながらも前に進んでいく様子がじわじわと描かれているこの作品。
こういうのが、本屋大賞に選ばれるのだなー。
私はあんまり本屋大賞のことはよくわからないし、毎年どういう作品が選ばれるかもわからないけれど、読書好きな人は決して派手な作品ばかりを好むわけではないのだな…というのがわかって、ちょっと好感が持てたかも。
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