感想メモ

2014年11月18日(火) 舞台  西加奈子


西加奈子 講談社 2014

STORY:
葉太はニューヨークに一人旅に来る。目的はセントラルパークで寝転んで本を読むこと。その目的を果たそうとしたそのとき、すべてが入ったバッグを盗まれ…。

感想:
 葉太は変に人を意識しすぎて、人生を演じている。そして、自分のことがすごく恥ずかしくなってしまったりして、ますます演じてしまう。

 最初は疲れそうな人だなーと思って読んでいた。

 バッグを盗まれてからも、彼はニューヨーク観光初日でバッグを盗まれたバカと思われるのが恥ずかしすぎて、その場で「泥棒!」と叫ぶこともしないし、そんなことは大したことがないんですよ…と演じて、さらにパスポートやカードを盗まれたというのに、そのまま何もせずに数時間過ごしてしまう。

 そして、結局領事館にも数日後に盗まれたということにしようと考える…。

 ここら辺で、結構この人にはついていけないなーと思うものの、どうなっていくのか続きが気になり読んでいくと…葉太がどんどんおかしくなっていく。

 その精神の壊れっぷりにますます恐ろしくなって、さらに続きが気になり出して、結局あっという間に最後まで読んでしまった。

 うーん。精神の壊れっぷりがすごい。すごすぎる。

 でも、こういう描かれ方だと、何となく理解できるというか…。

 すごくつらそうで、どうにかしてあげたくなったけど。

 両親とのトラウマみたいなものも、葉太の精神状態に関係があるんだろうか。

 どうしたら楽になれるんだろうね。今回の件で少しは楽になれたんだろうか…。そうならいいけど。

 父もすべてを演じており、最期まで演じ切ったと葉太は思うのだけれど、父は演じていたわけじゃないんじゃないのかなーとも私は思ったりして、思い込みが激しいというのは、生きていくのに本当に大変だなと思った。全くそういうのがなくても困っちゃうのかもしれないけど…。

 やっぱり人間何事も真ん中あたりにいるのが無難だな。



2014年11月10日(月) 迷子の王様  垣根涼介


垣根涼介 新潮社 2014

STORY:
数々のリストラを請け負ってきた真介だったが、社長の高橋がリストラ会社を畳むことになり…。

感想:
 「君たちに明日はない」シリーズ第5冊目。そして、多分これでシリーズ完結だね。

 真介の会社自体がなくなることになり、真介は自分のこの先を考える。

 今までにリストラで関わった人たちと細々とやり取りを続けていたりして、そのことがまたこの先に繋がっていくのかも。

 しかし、前作以前に出てきた人のことって、すっかり忘れている自分は、感動が少しそのことで薄らいでいるかもしれない。

 結局恋人の陽子とはどうなるんだろうなー。そのことが気になりつつも、まあ、爽やかな終わり方だったような気もする。



2014年11月01日(土) 女系の総督  藤田宜永


藤田宜永 講談社 2014

STORY:
女系家族に囲まれほぼ唯一の男として生きる崇徳。ボケが始まった母を気にしつつ、亡き妻とのいざこざから疎遠になった長女との関係を修復したいと願いつつ、身内の女どもの悩みや問題に立ち向かう。

感想:
 面白かった。

 けれど、家族がいっぱい出てきて複雑なので、思わず家系図を書いてしまった。続けて読む時間がないので、この紙は役に立った。

 今、書いていて気付いたけれど、タイトルの総督と主人公の名前崇徳(「むねのり」だけど、「そうとく」と呼ばれることもある)がかけられていたのね。

 かつての崇徳の浮気のせいで、長女・美千恵との関係が悪くなってしまい、修復できないまま長い時間が経っている。

 その関係を修復したいと思いつつ、自分の姉の夫婦関係のこと、妹夫婦の離婚騒動に姪っ子の男関係のトラブル、三女夫婦のセックスレス疑惑、そして、自分の母がボケ気味だけれど、病院に行こうとしないこと…などなど、様々な問題を解決すべく奔走する。

 そんな中で、出会った一人の女性(バツ2でバリバリと働いている)との関係も発展させつつ…。

 まあ、色々あっても、最後にはいい方向に進むのも後味がよくてよかった。


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