篠田節子 新潮社 2014
STORY: 「家守娘」…介護が必要な母のため、結婚をすることもできず、ついには仕事もやめた直美の行く末は…。 「ミッション」…がんで死んだ母の主治医に憧れ、医者になった挙句、主治医の後を継ごうとヒマラヤにやってきた頼子は…。 「ファーストレディ」…糖尿病の母の看病と医者の父の手伝いに明け暮れる慧子。母の容体が悪くなって…。
感想: 実は長編だと思っていた。そしたら、短編が3つだった。
1作目と3作目はどちらも母の介護系の話で、長女というだけで、母に束縛された挙句、母の看病をし続け、母に反発しつつも、母にはあらがえないみたいなそんな感じが共通している。
2作目は母も父もすでに亡くなっているのではあるが、母が病死した後、自分の夢のために老いた父を一人、家に残した挙句、父が孤独死した経験があるという、ちょっと特異な境遇である。
面白さという意味では、1と3がよかったかなとは思うけれど、2は毛色が違ったけれど、それはそれでなるほどと思わせるものがあって、人の死について考えさせられる。
1は痴呆の問題を扱っている。すでに嫁いでしまった妹には理解してもらえない状況だ。
実の母というだけで、娘以外の介護をことごとく拒否したり、デイホームなどの福祉についても、「老人ホームに捨てるのか」のような感じで言われ、仕事を続けるのも難しくなって、母のためにどんどん世界が狭くなっていく直美…。
すべてを投げ出したくなる閉塞感がそこにはある。
そして、3作目の母は糖尿病を患うが、娘の作った病気によい食事には一切手をつけず、隠れてスイーツをむさぼり食う。そして、次第に病状が悪化した挙句、「あなたの腎臓ならもらっていい」と…。
母が娘を自分の所有物としてしか見ていないことに気付いた時、慧子はここにはもういられないと突然悟る。
そして、2作目だが、ヒマラヤの奥地の村では、突然死が当たり前であった。それを西洋医学の力が変える。
確かに寿命は延びたが、前日まで健康だった人が、突然死ぬのと違って、体のどこかが悪くなり、そこを薬で治し、今度はまた別のところが…と、病に苦しんで死ぬようになってしまった。
村人は初めは西洋医を歓迎していたが、徐々に考えが変わって…という話で、日本のように薬や医学の進歩によって、介護を必要としながらも十年以上生きながらえるというような現実に対しての、疑問を投げかけているような感じかと思う。
長女とは、母からの影響を一番受けるもので、長女だから、その母を無下にすることもできず、苦しむのかもしれない。
でも、あまりにもそれがひどすぎると、家から逃げ出そうと思うのかもしれない。
それもできずに苦しんでいる人もたくさんいるのかもしれないと思った。
スタジオジブリの新作。「借りぐらしのアリエッティ」の監督である米林宏昌の2作目。
NHKの特集などを見て、原作がイギリスだかの児童文学で、宮崎駿ですら映像化するのは困難と言わしめた作品だということがわかった。
自分が大嫌いで心を閉ざす少女・杏奈の成長物語である。
喘息の療養のため、北海道の田舎に行くことになった杏奈は、そこで古い洋館を見つける。人が住んでいないはずの洋館には、マーニーという金髪の少女がいて、杏奈と親しくなる。
マーニーとのかかわりを通して、杏奈は心を開いていく…という話なのであるが…。
確かに、宮崎駿が映像化が難しいと言うのがわかったような気がする。
後半、マーニーの謎に迫っていく部分では、そうだろうなーという思いを持ちながら、感動することはするのであるが、正直な話、途中のマーニーと杏奈のやり取りがちょっと乗れないところがあった。
どうしてこんなに仲良くなれたのか、二人の心情部分が絵だけではやはり伝えきれていないのかもしれないと思った。
原作には少女の心の動きが細かく描写されているらしい。原作を読んでみたいような気もした。
しかし、背景の絵の美しさや、登場人物の描かれ方などは、今までのジブリを踏襲していて、美しく、息をのまれる感じがする。
この話は、見たときの年齢やそのときに置かれた境遇などで、感想も変わってきそうだ。
もっと若い頃に見たなら、もう少し違った印象を持ったかもしれないのであるが、一児の親となった今、私は杏奈の育ての親の気持ちになってしまい、あんまり杏奈を受け入れることができなかったというか、杏奈に感情移入ができなかった。
もしかしたら、そこが一番私が乗れなかった部分なのかなとも思う。
この先、ジブリは解散するとかいう噂も流れているが、ここまでの品質のものが作れるのであるし、原作を使う使わないは別として、もう少し気持ちが晴れやかになるような作品をまた作ってもらいたいなーとちょっと思う。
せっかくここまでできるのだから、もっと後進の人を育てていってほしいものだ。
2014年08月12日(火) |
55歳からのハローライフ(ドラマ) |
録画で見ているので、非常に感想が遅れていて申し訳ない…。
村上龍の原作が面白くて、ドラマも見たいなと思っていたのだけれど、第1話目を見逃してしまった!
それでも、2話から最終5話まで見た。
1話目が見られなくて残念だったな…。
どの話も胸に来る部分があったりして面白かったし、出ている俳優陣も皆、演技派揃いだし、すごくよかった。
それぞれの話が独立していてオムニバス形式だけれど、場所が前に見たのと同じ場所だなとか、他の話に出ていた人がちょっとだけ登場したりと、同じ世界なんだなと思わせられた。
小説を読んでいた時に、他の話の登場人物が出てくるとか思い当たらなかったのだけれど、注意深く読めば書いてあったのかな。それとも、これはドラマのための演出なのか?
見てよかった。
伊岡瞬 角川書店 2014
STORY: 子供の頃、火事で両親を亡くした圭輔は、親戚の達也の家に引き取られるが、そこでは悲惨な毎日が待っていた。大人になり弁護士になった圭輔のもとへ、達也の弁護を引き受けてほしいという話が持ち上がり…。
感想: かなり面白く引き込まれるように読んでしまった。
子供時代、達也と道子の母子のもとに引き取られることになった圭輔。圭輔にはある弱みがあり、そのことから、二人に頭が上がらないような感じにどんどん追い込まれていく。
そんな悲惨な状況から助け出してくれたのが、寿人という友人の存在だった。彼のおかげで圭輔は弁護士になることができた。
しかし、再び達也が関わり出して、圭輔は振り回されることに…。
達也は無罪を主張し、その弁護を引き受けた圭輔だが、気持ちとしては有罪になってほしいと思っていた。しかし、実際は…。
いやぁ…達也が恐ろしすぎる。達也の母もかなりな性悪だけれど、一番怖いのは達也のようなタイプかもしれない。
こんなのに目をつけられたら最後なのかな…。
どうなるのか目が離せない感じで読み終わった。
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