2010年11月17日(水) |
小さいおうち 中島京子 |
中島京子 文藝春秋 2010
STORY: 昭和初期から女中として東京に出たタキ。女中として平井家で過ごすことになったタキは、奥様、旦那様、坊ちゃんに尽くす。やがて戦争の影が色濃くなって…。
感想: 直木賞を受賞した作品。私は戦前・戦中・戦後すぐの作品は結構好きなので、これも多分面白いだろうと思った。そして、その予感は外れなかった。
中島京子は『平成大家族』を以前に読んで、面白かった覚えがあった。これが2作目…。ほかの作品もちょっと読んでみたいかも。
作品は、現代を生きるおばあちゃんになったタキが、昔のことを振り返る形の手記と、その手記を甥の息子・健史が読んで感想を伝える…という現代の話が交互に出てくる形で進む。そして、最後は健史がタキの生前の秘密を探るような形で締めくくられる。
どうにも戦後生まれの自分なども、健史のように昭和初期〜戦中はもっと時代が厳しかったのでは?と思ったりもするが、案外普通に暮らしている人の日常は、のんびりしていたのかも…とも思う。北村薫の『ベッキーさんシリーズ』もそうだけれど、昭和初期はお金持ちの人にとってはのんびりした良い時代だったのかもしれないなーと思った。
読んで損はない作品。
裁判員裁判の補欠に選ばれた専業主婦・福実(田中好子)が、裁判員として裁判にかかわる様子を描いたドラマ。
被告は、ぜんそくの持病がある息子を誤って放置し、死に至らしめた罪に問われている女性・種本千晶(板谷由夏)。離婚後、働きながら一人で息子を育ててきた。当日は仕事が忙しく、ぜんそく発作に襲われた息子を一人残して仕事に出かけ、帰宅した時には息子は亡くなっていたのだった…。
福実にも思春期の一人息子がいて、息子とうまくいっていない。そんなことから千晶と自分は似ているのではないかと思う。
展開としては地味で、派手なところもなくちょっとあっけないような気もしたけれど、裁判員裁判とはどんなものかとか、どんな風に一般の人が裁かれていくのかということがよくわかる作品だった。
2010年11月08日(月) |
ひそやかな花園 角田光代 |
角田光代 毎日新聞社 2010
STORY: 子供の頃、夏には別荘地でキャンプをした子供たち。一体何の集まりだったのか。大人になってキャンプに参加していた子供たちが集まることになって…。
感想: 子供の頃の記憶は大人になってから見ると全然違っていたりする。
キャンプで毎年会うことを楽しみにしていた子供たち。ある年、突然そのキャンプは中止になり、それから一度も行われることがなかった。親たちはキャンプについては口を閉ざし、子供たちも大きくなるにつれて、そのことは記憶の彼方に忘れ去られていたはずだったのだが…。
このキャンプは何の集まりだったのか…それを親から聞かされた子供もいれば、そうでなかった子供もいた。
時代背景が違うのもあると思うけれど、子供はそういうことを聞かされて、ショックを受けるものなのかな…なんて、ちょっと思った。
今だったら、こうした技術で産まれる子供はたくさん(?)いるような気もするし。まあ、この場合は、他者のものを使って…というのが引っ掛かるのかもしれないけれど…。
とりあえず登場人物たちがよりよい前向きな人生を歩めそうなラストでよかった。
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