代表作は何かって?もちろんどの国のどの時代にも代表的な絵本というものはあるけれど、
1920〜30年代のロシア絵本は集合体としての運動なんですよ。
さまざまな種類の絵本が同時期に大量に、ふだんは絵本と無縁の人まで巻きこんで、
うわーっと出た。百花繚乱の多様性を持ちながら、しかも全体としては共通の未来像を
指向しているために、ひとつもまとまりとして迫ってくる。
それがロシア絵本の最大の魅力なんであって、
代表的な数冊を挙げてことたりるというものじゃないんです。
何百冊も蒐めたうえで、こんなすごいものなのが星の数ほどきらめいていたのかと、
たじろぎながらため息をつく。それこそが正しい鑑賞法。
★芸術新潮「ロシア絵本のすばらしき世界」/沼辺信一★
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