宿題

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2002年01月31日(木) 青春デンデケデケデケ/芦原すなお

しかし、これを書いている現在のぼくには、もう腹立ちはない。

いや、あれはいい死に方だったと考えてはいけないだろうか、とさえ思うことがある。

あんな死に方があるものか、などとどうして赤の他人に思う権利があるか。

生まれ方同様、死に方だってまず当人の思い通りにはなるまい。

他人があれこれ評すべきものでもあるまい。事実は事実なのだ。

だったら「いい」と思えばいいではないか。

「ひどい」と思ったのでは、当人や家族はなおのこと無念ではないか。

そうだ、あれはいい死に方だったのだと、赤の他人のぼくは、先生が大好きだったぼくは、

そのように非論理的に考えることにする。


★青春デンデケデケデケ/芦原すなお★

2002年01月30日(水) 青春デンデケデケデケ/芦原すなお

全員テントに入って横になる。

もちろん寝心地がいいわけはないが、ぼくはとても安らかな気分だった。

富士男と岡下は申し合わせたように毛糸の腹巻を持参していた。

この世には悪意というものはないのだ、あったとしてもほんの少しのもので、善意の方がずっと多い

――などと、ぼくはふとそんなたわけたことをぼーっとした頭で考えているうちに、

やさしい祖谷の闇に包まれていつしか深い眠りに落ちた。


★青春デンデケデケデケ/芦原すなお★


2002年01月29日(火) 市松生活(Jan.29)/宮沢章夫

図書館勤務のS君が、いま、いとうせいこう君の「小説のワークショップ」に参加していると

メールで教えてくれた。そのなかでいとう君が、「きらいなことのなかにしか可能性はない」

と友人から言われたという話をしていたそうだ。


■「きらいなことのなかにしか可能性はない」

■この言葉が含む真の意味がわかっているかは曖昧だが、僕なりに解釈しべつの言葉に

置き換えれば、「他者に出会う」ということではないか。

わかりあえる、よく理解しあえる誰かとばかりいるのは気持ちが楽だが、そこから生まれる

ものには限界がある。

「きらいなこと」という圧倒的な他者と出会ってゆくこと。

「他者」はここでは「人」のことばかりではなく、「きらいな音楽」「きらいな映画」「きらいな小説」

たちももちろん含まれる。

■それに出会ってゆくのは勇気がいる。

■めんどくさいしね。

■不愉快なこともきっとあるし。

■だけど、「きらいなことのなかにしか可能性はない」という言葉に喚起された、

いとう君の覚悟に似たものに僕も共感する。


★市松生活(Jan.29)/宮沢章夫★


2002年01月28日(月) 鳩よ!No.214/松尾スズキ

宮藤のドラマにもねー、もっと出してほしいんだけどねー。

なんか“アップリケ”みたいな使われ方してるから。


★鳩よ!No.214/松尾スズキ★

2002年01月27日(日)

四十九日。


2001年12月10日月曜日より。

2002年01月26日(土) クラウド・コレクター/クラフト・エヴィング商會

ときどき思います・・・

なぜ音楽というものは、人の記憶や、忘却までもを再生するかのようにして

私たちの心に届くのだろうかと。


★クラウド・コレクター/クラフト・エヴィング商會★

2002年01月25日(金) 東京日和/荒木陽子+荒木経惟
5/16

写真、ヴィデオ、シルクスクリーンによる

『空景』展

妻が逝って、私は、空ばかり写している。


★東京日和/荒木陽子+荒木経惟★

2002年01月24日(木) 東京日和/荒木陽子+荒木経惟
夫はこんな私を慰める為に、いつも大ぶりなイキイキした花束を抱えてやってきた。

一抱えもあるような背の高いヒマワリは見事だった。

夫の去った跡、鮮やかな黄色の炎のようなヒマワリを見ていると、

確かにそこには夫の姿やぬくもりや匂いが感じられ、私はいつまでも見つめ続けていた。

人の思いというのは存在する、本当に存在して、疲れた者の体と心をいやしてくれるんだ、と

私はこの時いやというほど感じ入った。

涙がボロボロ流れ出してなかなか止まらなかった。


また明日も来てあげるから、と言いながら彼は私の右手をギュッと握りしめる。

それは握手というより、夫の生命力を伝えてもらっているような感じで、

私はいつも胸がいっぱいになった。

彼の手は大きくて暖かく、治療の疲れて無気力に傾きそうになる私の心を揺さぶってくれた。

その時の私にとって、彼の手の暖かさこそが生の拠りどころだったのではないか、

と今しみじみ憶い出す。


★東京日和/荒木陽子+荒木経惟★

2002年01月23日(水) “詩人兼母”工藤直子/松本大洋

いつもニコニコしている人ですが、

人間に対する関心はほとんどないのではないかと感じます。

ないからこそいつもニコニコしているともいえます。

年々その傾向はつよくなっているようで、

一体どこへ行くのやら。

オ――――イ。


★“詩人兼母”工藤直子/松本大洋★

2002年01月22日(火) まぶだち/古厩智之

「あれなんだ?」ってオレ、言ってやるよ。


★まぶだち/古厩智之★

2002年01月21日(月) ファンキー!宇宙は見える所までしかない/松尾スズキ

「人を応援できる立場?あんた。みんなね、問いなおしてほしいよ自分に。

一つ誰かを応援するにも立場とセンスが問われなきゃ。価値ないわけでしょ応援の。

資格はあるの?応援される立場ってのは、100%じゃないってことさ。

じゃ、応援するあんたは100%なのか?

人に頑張れっていうんなら、そこんとこをクリアにしてからにしてくれない?」


「今、応援の世界はそんなにシビアなことになってんのか?」


★ファンキー!宇宙は見える所までしかない/松尾スズキ★

2002年01月19日(土) ONE THOUSAND 20TH CENTURY CHAIRS/カヒミカリイ

引っ越すの 最悪の出来事から抜け出して

今がその時期だわ チャイナタウンに行くの


チャイナタウン ビルの29階で 空を見上げる 何故なら

見下ろすと目がくらむから


13番地区で 窓の傍に腰をかけて この街をどんなに愛してるか考えてる

 
告白するよ One Thousand 20th Century Chairsの本、盗んだこと

引き裂いて ページが舞うのを見てたんだ


なんて気持ちいいの


One Thousand 20th Century Chairsの本を引き裂くなんて!

One Thousand 20th Century Chairs


べックをかける だって昔一緒に住んでた建築家のヤツ

わたしを躍らせてくれなかった Odelayをかけたのに


Odelay 一人ぼっち 気が触れて でもハッピー

ヤツったら 囲いこもうとしたけど 逃げ出した


引き裂くことに大満足 空をひらひら舞っている

One Thousand 20th Century Chairs

 
わたしのお気に入りの椅子は

Zabriskie Point にでてるもの スローモーションで爆発して

空へ駆け上がる 降ってくる 降ってくる 降ってくる

地上へと


★ONE THOUSAND 20TH CENTURY CHAIRS/カヒミカリイ ★


2002年01月18日(金) 若草の頃/カヒミカリィ

風を切って 私達は走る

すべてを横切って 希望の中へと

向う側の丘には たぶん きっと


LaLa私達が手をつなぐ時

すべての風景は 理想へと変わる

世界中の日差しを巻き込むように


虫が笑う

土にとける


本当は私達 何でもできるはずね

ほら あの虹だって飛び越えられる


時が止まる

花が揺れる


雲の上で 私達は笑う

それが森の中で木漏れ日に変わる

悲しみの雨が虹に変わる


闇は消える

草が揺れる

鳥は眠る

すべてきっと・・・・・・


★若草の頃/カヒミカリィ★

2002年01月17日(木) 木更津キャッツアイHPより/宮藤官九郎

このドラマの舞台である木更津という町は、アクアラインを通れば東京から40分ぐらいで行けます。

近い。

しかし通行料は3千円。往復6千円。高い。

初めて通る人にとっては国境越えに等しい勇気が必要です。

僕も初めての時は料金所でドキドキしました。近くて高い町。


だからってわけでもないんでしょうが、木更津にはヨソ者を寄せつけない空気があります。

はっきり言ってガラが悪い。街がメンチ切ってる。なんせ行った時点でこっちが3千円負けてる。


ここでは『池袋(ウエストゲートパーク)』の時のような「逆にオシャレ」という言いわけも通用しません。

キングもバレリーナもいません。

ただただ殺伐とした空気とオバちゃん臭が潮風に運ばれて来ます。あとタヌキ。

いやんなる。アクアラインはいつもガラガラ。

でもここで帰ったら6千円負けることになる。悔しい。クソ、なんかないか、なんかないか。

そんな負けん気でいま脚本を書いています。


あと今回はテーマとして「死」を扱っているものの、書いてる本人が時々忘れてしまうので、

そこは普通のドラマ好きには突っ込まれるでしょうね。でもいいじゃん。面白いんだから。

忘れるってことは思い出すってことなんだから。


それから「セリフが今っぽい」とか「小ネタに命かけてる」とか言われがちな私ですが、

今回はそれだけじゃないゾと、もっとこうドラマの構造みたいなものにも一応こだわってるゾと、

なんか分かんないけど凄いゾと、言われても いいかなと。

いやちがう、もっと控えめに、毎回あースッキリしたみたいな、そんな感じで。うん。

みんなに好かれたいですね。つーか友達が欲しいですね。

手掛ける作品の世界と私生活の「友達多そう感」のギャップを埋めたい。

だから友達募集。視聴率1%より友達1人!

以上、宮藤官九郎でした。にゃー。


★木更津キャッツアイHPより/宮藤官九郎★

2002年01月16日(水) きりのなかのサーカス/ブル―ノ・ムナーリ

夏の太陽がすべてをもやし、砂がはだしの足をやくときには、

自然はばっちりと目をあけていて、とってもいきいきしてる。

木はあたらしい葉をだす。鳥はとおくまでとぶ。動物や昆虫は、はしったり、とんだりする。

そして子どもたちは、自分のまわりに、あたらしいおどろきの世界をはっけんするのだ。


けれども、冬になると自然はねむる。

自然が夢をみているあいだに、霧があらわれる。

霧のなかをあるくのは、自然がみている夢のなかへはいっていくようなものだ。

鳥たちは、方角をまちがえるといけないから、とおくまでとばない。

車のライトも、交差点の信号も、よくみえない。

自動車やバスはゆっくりとうごかねばならず、それでも、ちらっとみえたかと思うと、

もう姿をけしている。

夜になると、赤、緑、黄色の光が、あたりをすっぽりとつつむ霧に色をつけ、

なにもかもが、夢の国のできごとのようにみえてしまう。

家のなかにいるときだけ、人や動物は、いつものような暮らしができる。


★きりのなかのサーカス/ブル―ノ・ムナーリ★


2002年01月15日(火) 坑内カナリヤ理論/カート・ヴォネガット

わたしはときおり芸術はなんの役に立つのかと疑いをもつことがあります。

わたしに思いつけるいちばんましな答は、みずから「坑内カナリヤ理論」と名づけたものです。

この理論にしたがえば、芸術家が社会にとって有用なのは、彼らがきわめて敏感であるためです。

彼らは敏感すぎるほど敏感である。

そのために、もっと強壮なタイプの人間がまだなんの危険にも気づかない前から、

彼らは有毒ガスの発生した炭坑の中のカナリヤのように、目をまわしてぶっ倒れるのです。


★坑内カナリヤ理論/カート・ヴォネガット★

2002年01月14日(月) 人間失格/太宰治

いったい女は、どんな気持ちで生きているのかを考えることは、自分にとって、

蚯蚓の思いをさぐるよりも、ややこしく、わづらわしく、薄気味悪いものに感ぜられていました。

だが、自分は女があんなに急に泣き出したりした場合、何か甘いものを手渡してやると、

それを食べて機嫌を直すという事だけは、幼い時から、自分の経験に依って知っていました。


★人間失格/太宰治★

2002年01月13日(日) カナリヤ鳴く空/東京スカパラダイスオーケストラ

嘘ばかりをつきつづける孤独


★カナリヤ鳴く空/東京スカパラダイスオーケストラ★

2002年01月12日(土) スローターハウス5/カート・ヴォネガット

思うんだがね、

あんたたちはそろそろ、すてきな新しい嘘をたくさんこしらえなきゃいけないんじゃないか。

でないと、みんな生きていくのがいやんなっちまうぜ。


★スローターハウス5/カート・ヴォネガット★

2002年01月11日(金) スローターハウス5/カート・ヴォネガット

神よ願わくばわたしに変えることのできない物事を受けいれる落ち着きと、

変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ。


★スローターハウス5/カート・ヴォネガット★

2002年01月10日(木) 『GO』映画パンフレットより/金城一紀

僕は小説や映画は何も変えられないし、変えてはいけないと思っています。

小説や映画でできることは、個人的な小さな化学反応を起すくらいでいい。


★『GO』映画パンフレットより/金城一紀★

2002年01月09日(水) ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを/カート・ヴォネガット

ぼくは芸術家になろうと思う。

ぼくは、この見捨てられたアメリカ人たちを愛していきたい

――たとえ彼らが役立たずで、なんの魅力もなくてもね。

それがぼくの芸術ってわけさ。


★ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを/カート・ヴォネガット★

2002年01月08日(火) ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを/カート・ヴォネガット

こんにちは、赤ちゃん。地球へようこそ。

この星は夏は暑くて、冬は寒い。

この星はまんまるくて、濡れていて、人でいっぱいだ。

なあ、赤ちゃん、きみたちがこの星で暮らせるのは、長く見積もっても、せいぜい百年ぐらいさ。

ただ、ぼくの知っている規則が一つだけあるんだ、いいかい――

なんてったって、親切でなきゃいけないよ。


★ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを/カート・ヴォネガット★

2002年01月07日(月) 青天井のクラウン/ソウルフラワーユニオン
伸ばした手は光を捕まえて   

ガラクタの魂をならす


★青天井のクラウン◇みんなのうた/ソウルフラワーユニオン★

2002年01月06日(日) 月の缶/川本真琴

グラマラスな月の缶詰め 開けないように踊り続けるの

スターライト 歩いていこう

何処が出口かわからない

ソーダ水の泡みたいに 逆さまに流れる砂時計

スターライト 歩いていこう

悲しみがあとで来ても


★月の缶/川本真琴★

2002年01月05日(土) マッド・バイキスト・ヤマナカ/SCUDELIA ELECTRO

大事なこと忘れるから 僕はずっと自由なまま

週末だけ休息だと 誰がそれを決めたのさ


★マッド・バイキスト・ヤマナカ/SCUDELIA ELECTRO★

2002年01月04日(金) 六の宮の姫君/北村薫
何だか、とっても不思議な気持ちがしたわ。

人間ていろんなことを考えていろんなことをやっているけれど、それが昔の誰や、

自分達が消えた後の誰かと、どこかでそおっと重なっているんだなあって、そんな気がしたの。

 
絵を見たり音楽を聴いたりしたってさ、それで動かされるって結局、

そこに自分を見つけるからじゃないのかなあ。


★六の宮の姫君/北村薫★

2002年01月03日(木) ひまわり/川本真琴
ばっさり短くなって ちょっと軽くなった十五以来の前髪

じっと目つむってすっと感じた風 網戸をくぐる蝉の声

バス停に一本だけ咲くひまわりは 今一番大きな種つけて

光をいっぱい受けとめたくて 背高のっぽになっていくの

手をつないで お互い 帰り道ちがう「いつも」探してた

きっと急いで来たからなにか忘れてたの 何度も何度も指切りしたまま

ひまわり あの夏に生まれたんだよ

浴衣とスニーカーで一緒に隠れた

スイカの種をとばしたっけ お祭りに行こう

ねえ いつも太陽のほうに伸びていくのがくすぐったそうだった

まつげの先に夕焼け小焼け 首をかしげて真似してた

君が揺れていた

お互いにとって とってもちっちゃいことなのに

いっつもたくさんケンカした運命はきっと

何かのわけがあってわかんなくて良かったんだな

手をつないで あの自動改札いっしょにジャンプしてとぼう

何処にいくとこもないけど 眩しい空を越えたい

いっぱい いっぱい息をしたまま 

ふたり あの夏に生まれたんだよ

約束しなくても毎日会えた ヨーヨーいっぱい持って待ってたよ

ひまわりみたいに

ねえ あたし最終のバスが通り過ぎても見つけられなかった

半分こにした宿題だけが机の上にすっぽかされてひろげてあるよ

手をつないで次に何をするの?

未来はいつも難しい

どうして走りつづけたらなにか忘れてくの 何度も何度も指切りしたまま

ひまわり あの夏に生まれたんだよ

季節がめぐるたびあの場所で咲く 

ぼんやり君を思い出すよ 繰り返してる

ねえ いつも太陽のほうに伸びていくのがくすぐったそうだった

はぐれない影に夕波小波 首をかしげて真似してた 

君が揺れていた 君と揺れていた


★ひまわり/川本真琴★

2002年01月02日(水) キャノンボール/中村一義

そんなにさしゃべんなくったって

伝わる事もあるだろう


★キャノンボール/中村一義★

2002年01月01日(火) アムリタ/吉本ばなな

お母さんの作ったごはんとか、買ってもらったセーターとか、よく見て。

クラスの人たちの顔とか、近所の家を工事でこわしちゃう時とか、よく見て。

あのね、実際生きてるとわかんなくなっちゃうけど、楽屋にいるとよく見えるの。

空が青いのも、指が5本あるのも、お父さんやお母さんがいたり、道端の知らない人と挨拶したり、

それはおいしい水をごくごく飲むようなものなの。

毎日飲まないと生きていけないの。何もかもが、そうなの。

飲まないと、そこにあるのに飲まないなんて、のどが渇いてしまいには死んでしまうようなことなの。

ばかだからうまく言えないけど、そうなのよ。


★アムリタ/吉本ばなな★

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