○プラシーヴォ○
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2000年08月12日(土) ここにいると思おう

今日はバイトが午前のシフトだったので
お昼にハム男が迎えに来てくれた。

「お待たせ〜!」

と車に乗りこむと、
ハム男が誰かに携帯で電話をかけていた。

相手が電話にでなかったらしく、
少しディスプレイを見つめてから電話を切った。

「誰に電話してたの?」

「youちゃん。
明日、釣り行くやろ?
youちゃんも行かへんかな〜、と思って」

ガンっと頭を殴られた気がした。
youちゃんは私の一番の親友で、ハム男と3人で遊んだこともある。

でもまさか、ハム男から直接電話するなんて?!
せっかく久しぶりに二人きりで遊べるのに

どうしてわざわざ誰かを呼ぼうとするの!
私と二人じゃつまらないの?!

「落ち込みスイッチ」
がオンになってしまった。
1度オンになると、そうそう元には戻らない。

youちゃんは料理もできるし
面白いし
なにより中絶してないし
卑屈じゃないし

深〜い落とし穴の底で、冷たい地面にべちゃっと倒れている感じ。
ハム男が何を言ってもほとんど答えない状態で車は走っていた。
ハム男の家でも私の家でもない景色が流れる。

「・・・何処いく気なの」

やっと口をきいた私を見て、
ハム男が優しく答える。

「お腹すいたの?ちょっと俺、用事があって・・・。
一緒についてきてよ。すぐ終わるからさ」
「じゃあさ、どこでもいいから降ろしてよ。
勝手に御飯食べるから。
用事が終わったら迎えにきてくれればいいじゃん」
冷たくて突き放すような言葉。
「・・・そんなこと言わないで。お願い」

そのうち景色は見なれたものに変わって行った。
私が行っていた短大の近く・・・
そしてここにはアレがある・・・。

ハム男?

目的地に気づいて、ハム男の方を見る。
「はい、着きました!」

駐車場に車をとめて、100メートルほど歩くと
大きなお寺の門が見えてきた。
「ここでいいのかな?」
と、ハム男が門をくぐってすぐ左手にある
『水子供養』と書かれたところへ入っていった。
ふたりでぎゅうっと目をつむって手を合わせる。
とてつもなく広いお寺なので二人で散歩した。

彼の家へ帰って、ベッドの上で絡まりあった。
エッチな意味でなく、まるで知恵の輪のように
手足がくるくると絡み合って寝ていたのだ。
私より体温が高いハム男のせいで、汗がでてくる。
いつのまにか「落ち込みスイッチ」は切れていた。

やっと笑い出した私を見て、
「はあ、やっと戻った。よし!がちゃ子の釣り竿買いにいくぞ〜!」

手のかかる彼女でごめんね。


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