白痴日記
白痴



 一人に慣れてしまっている

周囲は五月蠅い.
同じ予備校か,大学なのだろう.
強がりだとか,見え透いた嘘が飛び交う教室を
抜けて,外に.

見上げる空は青い.
掲示板の一つ一つを見て歩く.
チョコレイトを食べる.

2006年04月30日(日)



 臨界

臨界点を突破.

2006年04月29日(土)



 弛緩の笑顔

息をしていない,死んだものと会う.
抱くと,まだ温かい.
舌が出ていて,乾いていくことに耐えきれず
硬直した口を開けて押し込む.

焼き場で,硬直も解け,弛緩した顔は笑っている様に見える.
二十時間の間に急変した躰が棺におさまる.

煙を見ていていいですか?
訊ねて,外に出る.
小さな躰からは煙さえ少ない.

肋骨は爪楊枝より細い.
出ていってしまった生命.

嗚呼.

2006年04月28日(金)



 呼ぶ

死んでしまいそうな生命の名を呼ぶ.
大声で呼ぶ.
戻るように.戻るように.


2006年04月27日(木)



 心にない言葉

頭だけで考えた無難な台詞.
鏡の前でもできる笑顔を付録.

頭が痛い.
もう二度と会わない人たち.
何の未練もない人たち.

一人になって付録を破り捨てる.

2006年04月26日(水)



 君へ

生まれ育った町の近くに,ずっといてくれる君へ.
小学校の入学式,同じ教室.
私は絵の上手い君がとても好きだった.
エレクトーンを習っていた君.

誕生日おめでとう.

2006年04月25日(火)



 予定

私は予定が嫌いだ.
前も書いたかもしれない.
手帳が埋まっていくのが憂鬱.
偶然が大好きで
いきなりが大好きで.

最近の手帳を見るたび
自分で動いていることだけれど
その隙の無さに,うんざり.

予定は未定がいい.
空の色みたいに.

2006年04月24日(月)



 御茶ノ水

小さな駅を出て,大きな建物へ行く.
小さな川を越える.
雨.
傘を持たない肩が濡れていく.

朝.
朝なのに
雨なのに
淀む空気.

空気より人のほうがたくさんいるせいだ.

2006年04月23日(日)



 わらふ

笑って受け止める人がいること.
私はそれだけで十分だと思う.
それ以上望むことはない.

目を合わせても争うことのない.
その肩は私を覚えている.
身体は私を覚えている.

そういうことになっている.
わらふ.


2006年04月22日(土)



 東京

五人に一人.
ぶつかって謝る人.
ぶつかってもこちらを見ず素通りする人.
まるでいないみたいに.
怖い顔をしている.

吐き気を起こしそうな高層ビル.
見下ろす東京.
此処は49階.

出会う人々は嘘くさい.
頭が痛い.

2006年04月21日(金)



 血の滲む揺り篭

大きな揺り篭.
申し訳程度に入った玩具と毛布.
全てを捨ててしまえと.

生命を持つ三匹.
他に姉弟がいたかなど聞きようもなく.
揺り篭で産まれた,育った,大凡一ヶ月の日々.
産まれた時の血.

母の匂い.

大雨の朝に.

2006年04月20日(木)



 逃避の方法

私の逃避の方法は自殺だけだ.
自分をなくすことでしか,私は逃避することができない.

2006年04月19日(水)



 機能消失

幸福を感じる機能を失った.
いつの間にか失ったので,どこを探したらいいのかわからない.
薬に浸る毎日で.
けれど効きが良いのか悪いのか,多幸感は降ってこない.
憂鬱な日々.

何処かに行きたい.
もう其処で死に至る所.

2006年04月18日(火)



 

情が深い.
底は浅い.
我.

2006年04月17日(月)



 だから,そういうことではなくて

君の態度や言葉や
そういうもの全てが作為的に感じる.
私にかかってくるなら,関わるなら
本気でかかってきてよ.

格好つけたり
意地を張ったり
うざったいだけなのよ.

暇じゃないの.

本音を言えよ.
本音を.

どこまでも作為が続けられると思っているなら
地獄行きにしてしまうよ.

2006年04月16日(日)



 一人ヘンゼルとグレーテル

血生臭い部屋で
点々と
辿ることのできる足跡.

時折出来ている血溜まり.

白痴な女.
内股を伝う血,拭いもせず.

滑っていく床.

2006年04月15日(土)



 食生活の乱れ

ミシシッピアカミミガメは雑食のはず.
いつか私の手の肉も食べていた.
それが,だ.
ペレットきらしたので,
私のご飯から調味料のついていないおかずを
あげたら,食べない.正確には一口食べて,ぽい.

食生活の乱れは嫌らしい.
そうか.
悪かった.
ごめんね.

2006年04月14日(金)



 29

誕生日.


2006年04月13日(木)



 悪い夢

魘されて,寝汗をかいて起きた.
人の部屋で.
一瞬夢の続きかと思った.
何処かで子供が騒いで,犬が鳴いた.

桜は夜に仄白かった.

2006年04月12日(水)



 maboroshi

細胞がくっついたなど
私の甘い夢が見させた幻で
発作の足音ひたひた聞く夜中.

嗚呼,このままいたいなどと思っても
迷惑なので
私は去るのです.

きつい言葉をいつものように変換できずに
耳から入ってきた其れを飲みこんで
三半規管が血だらけだ.

しかしそれも全て幻.

2006年04月11日(火)



 双生児

くっついてなどいると
私とこの人は双生児で,何らかの理由で今は
離れているだけだと思ったりする.

匂いも
肌の感触も
言語を超えたところにあるというのに.

けれど
一度別れた双生児.
二度と結ぶことなく.

2006年04月10日(月)



 資本主義

金があれば将来が変わる.
そういうことが資本主義.

人の気持ちを踏みにじっていく札束.

紙切れだというのに.

私はこの紙切れに身体を裂かれようとも
決して迎合はしないと

電車の入ってくる風に呟く.

2006年04月09日(日)



 一体何がどう必要ですか

私が幸福という状態になるには
一体何がどう必要なのですか?

え,本人が一番良くわかるでしょう?
わかっています.確かに.
けれど,それが叶えられないことも
同程度にわかっています.

君は私に一体何を求めているの?
関わる全員に聞く.
頭が五月蠅くなる.

嗚呼.
茶番.

2006年04月08日(土)



 午後九時のバス

金曜午後九時のバスは酒臭く
人々は声高で,参ってしまう.

けれどこの時間に帰ることの出来る幸運を
噛みしめなくては.

窓の外に意識を集中すると
パトカーが走る.

私はまた波にのまれる.

2006年04月07日(金)



 少しずつ

少しずつ舐める飴.
どっぷりと降る雨.

私は時々誰なのかわからなくなる.
空気と混濁している.

狂気などその辺に幾らでも転がっていて

ただ小さくなって眠る.
悪い夢を見る.

2006年04月06日(木)



 不倫をしている人

私の机の隣の隣は不倫をしている人らしい.
今春に熊本に来て
私と同じ研究室だ.

私はふと見てしまう.
人には様々事情があるのだ.
不倫といっても千差万別.

けれど
私には共有は無理な相談で.

あの人に誰かできれば
私は死んでしまう.
其処までの生命.
自分に託された命,手のひらに乗せて眺める.

それは落としてはならない.
その日まで.

世の中で一番愛しているなど
きっと戯れ言.
あの人は私の命.
此も戯れ言か.
事実だけれども.

2006年04月05日(水)



 自戒自壊

頑張って
頑張って
頑張って

何処へ行くの?

頑張ったなど言い訳にならない.
誰か君に頑張ってと頼んだの?

勝手に頑張っている自分に酔っているのでしょう.

頭は賢く使え.
身体は無駄なく使え.


2006年04月04日(火)



 脱皮

自分の脱皮の時間が来たよ.
脱皮しよう.
脱皮した殻はそのまま置いていこう.
風に吹かれていつか崩れるだろう.

何処かへ行っても
脱皮しなければ同じこと.

私は脱出して脱皮したいの.
此処は反吐が出るほど嫌いな街だし.
思い出はあるけれど.
悲しいものが多い.
自分の身体も心も嫌気がさしているのよ.

脱皮する.

2006年04月03日(月)



 赤子を産むなら

母が言う.
いつかあなたが母になるのかと.
ならないよ,と即答できる自分の哀しさ.

赤子を産むなら
赤子を産んだら
世界が変わるなどと思っていないけれど

思考が数年前の六月に戻る前に
陶器に朱.
絶望を見た時に戻る前に
嗚呼,間に合わない.

あの人の子が欲しかったのでした.
とても強く欲しかったのでした.


2006年04月02日(日)



 嘘をついていいなら

毎日がとても充実して楽しくて
一度も死にたいなど思ったことがなくて
恋人のことを一途に好きで






ばからし

2006年04月01日(土)
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