白痴日記
白痴



 掃除機

掃除機をかけた.
新聞をポストから抜いた.
薬を飲み,お水を飲んだ.
風呂に入って雑誌を見た.

ひとつひとつの行為が
どこか遠く
意識のない人のように
思える.

2005年03月26日(土)



 ご卒業おめでとうございます

袴の色が様々で
目眩がしてきた通学路.

華やかな鯉のぼりが泳いでいるようだった.

私は顔色が悪くて
それ以上に
私の表情はその場に相応しくなくて

空を見た.

2005年03月25日(金)



 

涙が表面に出てきたのは何ヶ月ぶりだったのだろう.
一度出てしまうと,止まらなかった.
頭に置いてくれた手が,それを赦してくれているようだった.

泣けばいいのだ
と言われても,私は君がいないと泣くことができない.

寂しすぎるのだ.
それは.

2005年03月24日(木)



 幼い頃は屹度

幼い頃は屹度仕合わせだったに違いない.
そうじゃないと辻褄が合わない.

乳を吸う私は満ち足りていて
何の不安もなく
赦されていた.


一瞬だと思う.
私は目を閉じるから.


2005年03月23日(水)



 傘の匂い

降っているのは同じ雨だというのに
傘立ての傘の匂いはバラバラで,私は少し
気持ち悪くなって
傘立ての横にそっと傘を置く.

その傘は半分故意に忘れた.

2005年03月22日(火)



 涙腺ストライキ

私は泣かない.
屹度それは意地なのだ.
泣いて無様で,それでいてどうにもならなかった過去を
繰り返さないように.


感情をなくしたくはないけれど.
なくしたほうが楽に生きていけるだろう.
感情を持っているふりなんて,とても簡単だろう.

今,私の口から零れそうな溢れそうな
うめき声を叫び声を
どうか
届けて下さい.

鼓膜にダイレクトに.
破れてしまうぐらいに.

2005年03月21日(月)



 大丈夫

大丈夫という言葉を何回か使いながら
感謝をしながら.

地震に関しては大丈夫.



2005年03月20日(日)



 脳内

心は胸の下ぐらいにあると言われているけど
それは,あくまで心臓=ハートという図式があるだけ.
心なんて存在しない.
存在するとしたら脳内にあるのだろう.

何でこんな当たり前のことを書いているのだろう.

脳内を整理するため,言語化する.
吐き出さないと脳が破裂しそうな時は
こうやって吐き出す.

薬で霞みかかった脳内で
生息中.

2005年03月19日(土)



 愛しすぎるのは自分を愛してほしいからだ.

この様に浅はかで愚かな性質
だけれども
私は求め続けるだろう.

浅ましい女.

今の私を一言で表現すると,
此だと思う.

2005年03月18日(金)



 燃えるゴミ

可燃ゴミの収集はよくある火・金.
私の地区は遅くて,昼過ぎに来る.
だから重役出勤の出がけに出しても余裕.

だったのだが.

今度から経路が変わると
この間五月蠅いスピーカーが
女の声を出していた.
八時半には出すようにと.

ゴミを夜出すのは苦手だ.
特に可燃ゴミは.
ゴミあさりの方々が多いので.
それが近所の人のゴミチェックだったりする.

ベランダに座って,静かに観ていると
他人のゴミを見たいだけの人もいる.

他人のゴミを見る横顔は生き生きしていて
私は煙草に火をつけるのさえ忘れる.


2005年03月17日(木)



 覚えておきたいことは

覚えておきたいことは少ししかないかもしれない.
忘れたいことは忘れてきた.表面は,とりあえずは.

大人になってから
覚えておきたいことは減った.

子供の頃は
たくさんあった.

サンタクロースの手紙や母のお菓子や.色々.

覚えておかなきゃいけないことで
埋め尽くされる脳.

2005年03月16日(水)



 雨の温度

雨がもう生温くなっている.
街の雨は舐める気になれない.

春の雨.
しとしとと降り続く.

人々は皆傘をさして,濡れて止まっている気違いを
追い越していく.

目を閉じる.
100%の湿度を感じる.

そのまま倒れたかった.
けれど
人の波にまた戻って
歩く.


2005年03月15日(火)



 どうせ死なないのでしょう

どうだろ.
わかりません.
答えはそれだけ.
わかりません.



2005年03月14日(月)



 途切れなく

薬を足していく.
自分に出ている薬がどの程度の物かはわかっている.

最近よく使うのは思考がまとまらなくなる薬.
まとまったら,それは尖って,自分を殺すだろう.

薬でぼんやりと
廃人のように.

そのような私を見て.
自分が作った作品を見なよ.
自分が七年かけて作った私を見てよ.

自分がいなくなったら死ぬこと
わかっていたくせに.

あなたは私を見捨てたの.


2005年03月13日(日)



 可愛い服と格好いい靴

可愛い服と格好いい靴を履いて
春の中に出ていきたい.

一人でも平気だと.
一人だなんて,疾うの昔に気づいていたと.

花があれば写真を撮り
空を見上げて.

涙を誤魔化すように瞬きを.


無理そうだな.

2005年03月12日(土)



 マネー

金がない.
授業料が払えない.
作るしかない.
この躰で.

どうせ見捨てられたのだし
私の躰など誰も要らないのだし

短い時間で高収入のアルバイトなんて限られている.

自傷のかわりに私は摩耗しよう.

2005年03月11日(金)



 日付

もう今は11日だけれど,10日の日付で書くことができる.
便利だね.
便利なことは,良い面ばかりではないことは知っている.

でも
少しの嘘.
タイムマシーン.



2005年03月10日(木)



 不安がらせる

不用意に人を不安がらせるのは危険だ.
不安な人は何をするかわからない.

ひっそりと事を進めるのだ.
頭の地下室で.

ある日突然爆弾を贈ろう.

2005年03月09日(水)



 散髪

ずっと通っていた美容師さんが退職すると葉書が来ている.
その美容師さん以外に魅力がないので,もうそこには行かないだろう.
もう一人,やってもらっていた人は東京の本店に行った.

最近は自分で髪を切っている.
梳き鋏と直線切りの鋏.
下手くそだが疲れない.

しばらくこれが続きそうだ.

2005年03月08日(火)



 意欲

意欲

い‐よく【意欲】
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[名](スル)
1 進んで何かをしようと思うこと。また、その心の働き。「―あふれる人材を求める」「研究―に燃える」
「衝動はこれに能動的に働きかけて認識し、情感し、―する」〈倉田・愛と認識との出発〉
2 哲学で、種々の動機の中から選択した目標に、積極的に働く意志活動。狭義には、主観的、特殊的な意志活動、すなわち任意・気随の意。


2番目が好き.
1番目は病気が連れ去った.と言ったら逃げだと言われたけどね.

2005年03月07日(月)



 62

父は62に今日なった.
34歳から私と付き合っている人間.
私の思考の基礎を作ってくれた人間.

年老いていくばかりだろう,これからは.
優しくしたい.
恩を返していきたい.

2005年03月06日(日)



 私はママじゃない.医者じゃない.

万能ではないことを嫌というほど知っている.
それでも受け入れることは,自分の血肉を切り与えるようなものだ.

ママの手じゃ治らないものは,医師に行くしかない.
それをしないでいつまで周りの肉を喰うのか.



2005年03月05日(土)



 捨てる

机周りをリニューアルする.
この間のもめ事を嫌でも思い出す作業.

少し物を余計に捨てすぎたかもしれない.

宵の街は家路を辿る人,これから商売の女性,連んで遊んでいる若者.
全てを通り過ぎて歩いていく.
ティッシュ配りに心を許すと二個も渡されてしまう.
テレクラティッシュ.

英会話は結構.
エステも結構.
誰も私に話しかけるな.

足がまた速くなる.

2005年03月04日(金)



 ヒナマツリ

とうとう雛人形を持っている女の子にはなれなかった.
貧乏だったし.
それに伴い家も狭かったから.

でも雛祭りの母のちらし寿司と父の笑顔を覚えている.

2005年03月03日(木)



 

人生とは、病人の一人一人が寝台を変えたいという欲望に取り憑かれている一個の病院である。
byボードレール


足掻く.
力はもう弱まって,集まって,きている.

私は赦すこともできず,絶望にも打ち勝てず,死ぬだろう.

2005年03月02日(水)
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