長いお別れ
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「あなたはおかしいことは言わないよ」 と、先生が仰った。 「普通に理解して、明確に答えてる。大丈夫」 ほっとした。 最近、人と会う事が増えて、嬉しい分、不安だったから。 私の言ってる事、変なんじゃないかって怖かったから。 だって、もう1年以上、ホントにひとりっきりで暮らしてる。 2週に1回の通院だけが生きている証のような日々。 誰かの風景にしかならない日々。 でも、最近、メールでお話をしていただいている人達と 月に一度くらいの割り合いでお会いできるようになった。 人の為にお洒落して。無理してでもお化粧もして。 指が震えてしまうのを止められなくて食事中とか困るけど。 緊張しているので、と答えたら皆さん笑って優しく手を握ってくれる。 その手の柔らかさに、私の孤独は満たされる。 薬を飲まなきゃ、普通の人のように生きれないけれど。 そのことが泣く程辛い時もあるけれど。眠れない夜もあるけれど。 去年より楽になってる。去年の私よりは前を向いている。 まだ何処を目指して歩いていっていいのか判らないけれど。 足が竦む事ばかりだけれど、生きなくては。生きていかなくては。 自分の思い込みだけで、誰かを傷つけるなんて、もうしちゃいけない。
爪を切ると、生きているんだなと思う。 伸びっぱなしの髪を見ても生きてるんだなあと思う。 最近、人に会う事が増えたので、この伸びっぱなしの髪は鬱陶しい。 「いい印象を与えたい」と思うのは、決して悪い事じゃ無いはず。 でも、「いい人ですね」と言われると、心臓がドキドキし始める。 また私は「無理して作った私」で人と接しようとしているんじゃないか。 結果的に、その人を裏切ってしまうのではないか。 もうすでに裏切ってるのかもしれない。だって言えないもの、本当の事。 別に格好いい地位や名誉が欲しいわけじゃないけど。 なんにもない人間でも好かれていてもいいんだろうか? 好意の海で溺れそうだ。優しさの渦にのまれそうだ。 また1人でテンパって、言わなくてもいい事を言ったりするんじゃないか。 そうしたら、皆、私から去っていくんだろうか。 幸せな時には、振り向かずに幸せを楽しむ事がきっと大切なんだろう。
嘘を嘘と言わないまま暮らしている。 それは間違いかもしれないし、正しいかもしれないし私にはわからない。 あなたが決めてくれればいい。全部、あなたにゆだねる。 今さら戻れない。今さら止まれない。後ろ向きでも進むしかない。 あなたが見る私の笑顔が、ちゃんと笑顔に映っているならそれでいい。 どんなに落ち込んでいても、泣いていても、何かを求めている。 それを、愛と言うのかもしれない。夢と言うのかもしれない。 大事な人の数を数えた。両手で足りない程溢れていた。 泣きたい夜は、空に笑顔を思い浮かべる。元気?って聞いてみる。 完璧な人間になりたいわけじゃない。普通の人になりたい。
電話をもらった。 甘い可愛い声が、受話器を通して左耳から流れてくる。 たった10分の会話。なんでもない会話。 でも、心を安らかにしてくれた。 「好かれている」とわかる声音。 それが、こんなにも嬉しい。そして怖い。 嫌われたくない。見捨てられたくない。 好きな人に好かれるというのは、なんてすごいことなんだろう。 幸せと不安で目眩がする。
友達に会うと幸せになる。 震えてる指をぎゅうっと握って「大丈夫だよ」と言ってくれる。 「1人じゃないよ。いつでも呼び出して」と言ってくれる。 「甘えていいんだよ。今は長いお休みなんだよ」と言ってくれる。 ありがとう。ありがとう。ありがとう。 その優しい笑い声。あったかい掌。存在。全部が私を勇気づける。 どうすれば、この嬉しさを伝えられるんだろう。 両手ですくった水のように、心を分け与えられたらいいのに。
何故、私は毎日、決められた通りの薬をのみ、言われたように 生活を改善しようとしているのだろう。 楽になりたいなら、たぶん、死ぬ事が一番だと思う。 やりなおせると、私は本気で思っているのだろうか。 いったいどれだけの人の人生を苦しめたと思っているの。 自分も幸せになろうだなんて、厚かましいと思わないの? それともそうやって生きようとする事が償いになると本気で思っているの? 皆、口で言えないだけなんだよ。本当は死んで欲しいんだよ。 そんなこと、聞かなくっても判る事じゃない。 少し考えれば、判る事じゃない。どうして認めたくないの。 そんなに自分が大事なの?愛されたいの?甘やかされたいの? 私がいなくなっても誰も傷付かない。そんな存在じゃない。 でも、私を頼って電話をくれる友達がいる間は、もうあんな風に、 一方的に決めつけて逃げ出す事だけはやめなくちゃ。 8月になれば、大きな問題ごとがひとつ片付くんだから。 せめてその日がくるまでは生きていなくちゃいない。それは義務だ。 大丈夫だよって手を握っていて欲しい。一人じゃないって思いたい。 こんな弱い自分、もう捨てたい。捨て去りたいのに、心のどこかが、 捨てないで、愛して、と叫ぶ。生きていてもいいですかと、聞きたい。
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