ジョアのコマーシャルで、「ほいずぁ、オレンジだべよ。」と、 山形出身の女優さんが言っているのを聞いて、無性にその女優さ んと話したくなってしまう。 見事な山形弁である。 ドラマ用にとか、他県の人がわかりやすいように気を使った方言 ではない所が、ずきゅんと胸に届くのである。 「ほいずぁ」も「だべよ」も、なかなか出てこない言い回しだ。 他県の人からすれば、ああなまってるなあですむのかもしれない が、出身者にとっては、これだよこれ、である。 彼女は60代、わたしは50代だが、生まれ育った頃の方言は、 おそらく同じだったと思われる。 年代とともに方言も変化してくるものだから、自分の年代に近し い人の方言はとても懐かしい。
そういった、本物の方言に出会うと本当にそのまま話をしたくな ってしまう。 相手が本物でないと、自分も本物の方言が出てこないのである。 だから、同郷の人と方言で話ができるのはうれしいものなのだ。
わたしは、小さい頃からテレビっ子だったからなのか、頭の中で 考えるのはずっと標準語だった。 だから、上京してなまらずに話すことも簡単にできた。 それでも、方言は忘れられない懐かしい宝物である。
生まれ育った家は何十年も前に無くなってしまったが、生まれ育 った言葉はいつまでも残っている。 そのスイッチが入るのが、同郷の人の言葉を耳にした瞬間なので ある。 ああ、なまってしゃべりたい。
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