夢見る汗牛充棟
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2008年01月26日(土) ファウスト

岩波文庫ワイド版 相良良峯:訳 2冊

図書館で借り。1回延長。

内容じゃなくて、本自体にむかついたこと一つ。
誰ですか? エンピツで線引きいれやがった馬鹿は。
図書館の本はお前のものじゃないです。書き込みたきゃ、買え。

なんとなく読了。

第二部は、とってもややこしかった。難しいです。
苦しみながら自らを追究する人は、その過程で一時神に背こうが、
最終的に救われるであろう……という話なんだろうか。
有為な人間なら、神は見捨てないという話だったら……やだな。 

第1部のグレートヘンの部屋に忍び込む所なんか笑った。
妄執じじいが素敵に描けそうな田丸浩史さんがマンガで
描いてくれたら楽しそう、とか思ってごめんなさい。

とりあえず、メフィストはさんざん努力して報われなくて
お気の毒だったです。

以下は、印象に残ったり、好きだったりしたところ。



〜おれは神々になど似ておらぬ。それは骨身にしみてわかっている。
おれの似ているのは塵芥の中にもぐりこんでいる虫けらだ。塵芥の中で
身を養って生をつないでいるうちに、道行く人に踏み殺されて埋められる
虫けらだ〜(ファウスト)


〜実際老齢というものは冷たい熱病なんだ。人間三十を越したら、もう
死んでいるも同然だ〜(若い学士)

〜――だがどんな愚かな、或いは利口なことを考えようと、およそ先人
のすでに考えたことならぬはないと〜(若い学士の言葉を受けてメフィストフェレス)


……でも若い学士のままでいられたら、人生幸せだろうな、とか。


〜美人を独占したものは、共有をいとうあまりにかえって殺してしまう
ものです〜(フォルキュアス:メフィストフェレス)


……つか、単にサラディン先生の「自分のものにならないいい男だったら
いっそホモになってほしいそうです」(だったか?)を思い出して
しまった。カドフェルにも、まんまそんなネタあったなぁ、とか。……



〜人民の数がふえて、皆がそれぞれの流儀で安楽にくらし、そのうえ
教養や学問を身につけると、人はそれを見て結構なことだというが、
それはただ叛逆者をやしなうだけのことだ〜(ファウスト)



〜地上のことはもう知りぬいた。天上へ昇る見込などありはしない。
眼をぱちぱちさせながら空を仰いで、雲の上に自分のような者が
いると空想するのは馬鹿だ。
それより地面をしっかり踏んまえて周囲を見まわせ。
有為の人間にはこの世は隠し立てをせぬ。なんで永遠の境へさまよう
必要があろう。ちゃんと認識したものは掴まえることができる。
こうしてこの世の日々を送ればよいのだ。
幽霊が出てきても歩みを変えることはいらぬ。先へ進むには、苦しみも
あれば幸いもあろう。どんな瞬間にも満足はしない男なんだ。〜(ファウスト)


羨ましい境地だけど、すべての学問を究めて、じじいになって
悪魔と契約していろいろあがいて後ようやく至った境地だし。
一般の人には望むべくもないだろうな。


〜幸福も不幸も共に悩みの種となり、満ち足りながら餓えに悩む。
歓びであれ苦しみであれ、なんでも翌日へ延ばそうとし、ただ未来を
待ちうけるばかりでいつまでも成就することはないのです〜(憂愁)

……問答無用で、痛かった一節……
 

で、ファウスト返却して次は、

『醒めた炎』上下 村松剛 (中央公論社)を借り〜。
木戸孝允(桂小五郎)さんの小説です。
ちょろっと見た感じでは、かなり史実、史料重視型の
小説らしい。楽しみです。

閉架だったので、出してきてもらったのですけど、びっくり
するほど分厚かった。重たい。
上巻だけで700頁超。下巻も800頁超。がんばろう。

ついでに、マダオこと長谷川泰三さん(銀魂)のもとキャラは
あの渋くて素敵な長谷川平蔵さんというのはほんとなの? と思いつつ
幕末維新・明治維新・近世・などの人名辞典をぱら見。
だって、マダオと似たとこ全然ないし。火付盗賊改。

いや、いちばん好きだけど。マダオこと長谷川さんが。
だもんで、それっぽい長谷川さんがいるのかどうか眺めた次第でした。
いなかった。でも長谷川泰って人が幕末維新人名辞典にいたので
一瞬萌えてしまいました。


2008年01月06日(日) 今年読みたい一覧 つけたりうだうだ

今年読み終わりたい本を十冊挙げておく。ぼちぼちやるべ。

ラノベ・BL・コミックは含まない。
これから出る本ももちろん含まない。……わからないから。

今読んでるのは、ファウスト(岩波・相良守峯訳)
休み前に図書館で借り。期限は13日。終わらん。無理。まだ一部。
必ずや、延長か延滞するであろう。(延滞はいけない)

書き写しするせいで進まない。昔の人は本が欲しけりゃ借りて
せっせと写していたわけで、本当にえらいなぁと思います。
ともあれ。


・「神曲」(集英社版):「吟遊詩人」と「薔薇の名前」から
・「デカメロン」(まだ未定):「薔薇の名前」から
・「Patrick」:聖パトリックについての冊子「修道士カドフェル」から
・「聖書」:高校卒業あたりでもらった究極の積読。引用が多いので今度こそ通読したいなーと思う
・「ロンドン ある都市の伝記」(朝日):「ロンドン塔」から
・「亭主 酒場と旅館の文化史」(白水社):ちょっとした興味
・「中世文学集」(筑摩):「アイスランドのサガ」などから
・「デンマーク人の事績」(東海大学出版会):同上
・「歴史」(岩波):読みかけだから
・「十八世紀パリ生活誌」(岩波):「路地裏の大英帝国」から


以上の如し。



以下は、欲しい本の一覧。欲深な自分に呆れつつも。
本が欲しいという気持ちは、知識欲じゃなくて物欲。

・「アイスランドサガ」谷口幸男 新潮社
・「スールの子 ギースリの物語」三省堂
・「サガ選集」東海大学出版会
・「イギリス古事民俗誌」大修館書店
・「アイルランド地誌」青土社

問題は、どれもこれも新本がないことです。ぬう。
手の出る値段で発見できたら嬉しいなぁと願いを込めて。



何故、本なんて読むのかなぁと思う。
勉強になるとか、興味深いとかいってもそれが一体何になると思う。
ぶっちゃけ私は頭が良くないから、本を読んでも賢くならない。
つかむしろだんだん馬鹿になってると思う。それでも本が欲しい。
現実から逃避してるだけだとしても、それの何が悪いのかと思う。
人が自分で紡ぐ物語の九割は駄作で陳腐だから、常に愛せる訳じゃない。
でも、だから本を手放せないのかというとそれだけでもないしなぁ。
……はぁ。

例えば最後の一冊のために読んでいるのかなと思ったりする。
最後の一冊はきっと究極の一冊で、それを読んだらそれだけで空ろな
自分の内側をいっぱいに満たせるに違いない。――という幻想。

さてさて、明日が仕事始めです。
ああああああ。怠惰は罪です。わかってます。
でも怠けすぎて、明日が不安です。


2008年01月04日(金) マルドゥック・スクランブル  冲方丁

全3巻 ハヤカワ文庫

読了

読み始めたら止まらなくなりました。目使いすぎて、吐き気がしてます。
なにもそこまでして本読まなくてもいい気がする。
昨日から今まで考えてみれば起きてる時間ほとんど字を読んでます。
肩が修復不能にばりばりです。気持ち悪いー。

次の三冊を購入しに本屋に駆け出したくなるくらいには、楽しかった。
ていうか、いいなぁウフコック。優しくとっても善いネズミ。
そんでもって、楽俊とだぶりました。
ネズミ=いい人 という図式ができそうです。私の中で。

薔薇の名前は旧年から読んでいたもので、子年になってから一作目
としてはまことに適切な選択だったなぁとうっとりしてます。

三角関係の結末はとても悲しかったですが、ウフコックは一人だから
こうなるしかなかったのかな。

ボイルドが真に求めていたのはウフコックそのものじゃなくて。
シェルが真に求めていたのもバロットそのものじゃなくて。
そんな二人が組んでウフコックとバロットを手に入れようとしてる
構図はどこか滑稽だなとか思いながら読んでいたんですけど。

ボイルドは本当にウフコックが欲しかったのかなーと最後まで
読んだ現在はちょっとわからなくなりました。
ただ、環境が無邪気な友愛を育ませなかっただけなんだろか。








2008年01月03日(木) 薔薇の名前 上・下  ウンベルト・エーコー

東京創元社
河島英昭:訳


購入したもののずっと積読だったもの。
何故購入したかというと、修道士ものを探していたため。
先に、映像作品の方の薔薇の名前を見つけて見た。その後、原作購入。
映画と原作は別物だろうと思って興味がわいた。

ようやく読了。

……といっても、すっきりしたーというより敗北感を味わう。
難解で知力が足らんよ、出直しといでと本に言われたような気分です。
頭が疲れたので、また時間を置いて再読してみたいです。

下巻の解説を読んで、解説書の多いことに驚く。
謎めいたものは、すべてつまびらかに、まる裸に、無防備に
してしまわないと気がすまない、パスカヴィルのウィリアム修道士
みたいな人々がこぞって挑戦してるってことですよね。

殺人事件・秘された図書館・異端・宗教と政治・見習い修道士の恋
……様々が平行して語られて濃くて面白くてやたら疲れた。
キリストの清貧についての論争とか、キリスト教の部外者の私には
滑稽だったけれど。笑えるけど笑えない。
キリストが財布持ってるか持ってないかで人が死ぬんだなぁ。

苛烈な異端審問官のベルナールが一人勝ちだったなと思った。
正しい正しくないは置いておいて。

居残り組みが際限なく欲しがったせいで、なにもかもなくなった気がする。





◇書物に対する偏愛と過度の所有欲とは、やがて病に高じて、人をも殺しかねない。

◇書物は書物について語る場合の珍しくないことが、それどころか
書物同士で語り合っているみたいなことが、私にもわかった。〜中略〜
文書館はいっそう巨きな不安の塊りのように見えた。どうやらそこは
何百年もの長きにわたって、ひそかな囁きの場であり、羊皮紙と羊皮紙
が交わしてきたかすかな対話の場であり、文書館は一種の生き物であり
人間の精神では律しきれない力の巣窟であって、多数の精神によって
編み出されてきた秘密の宝庫であり、それらを生み出した者たちや媒介
した者たちの死を乗り越えて、生き延びてきた

◇書物というのは信じるためにでなく、検討されるべき対象として、
つねに書かれるのだ。



あの文書館に入ってみたいです。読めないけど。


恵 |MAIL