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2007年02月26日(月) ■ |
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伯爵と25のシチュエーション |
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俺は孤独だ。 誰にも理解されない。 誰にも理解できない。
そう、俺の孤高な心をわかることができる奴なんて誰もいないのだ。 人の苦しみのわからぬ奴らめ。 理解をすぐに放棄する奴らめ。
自分の孤独を声高々に叫び、人の孤独を見ぬ振りをする。 短い物事でしか量れず。 稚拙な言動で人を謀る。
俺は孤独だ。 俺だけの孤独だ。 誰にもわけてやるものか。
だから その差し出した手をどけろ そんな澄んだ眼で俺をみるな
そんな 優しい言葉なんて かけないでくれよ
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2007年02月13日(火) ■ |
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伯爵と25のシチュエーション |
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「Nくん。そのチョコレートどうしたの?」 「スーパーマーケットでね、安売りしてたから買ったの」 「そっか、僕はてっきり慌てんぼうのなんとやらかと思ったよ」 「???」 「明日バレンタインでしょって話」 「ああ、そういえばそうだね。それでチョコ安かったのか」 「浮世離れしてるね」 「そういう伯爵だってクリスマスにケーキ、ホールで食べたじゃん」 「そういうキャラだもの」 「でも明日はバレンタインなのか。これだとチョコレート食べたくなっても買いに行けないなあ」 「行けばいいじゃない。そんなこと気にするの?」 「気にするキャラなの」
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2007年02月10日(土) ■ |
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伯爵と25のシチュエーション |
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ツーツーツー
「どうした?」 「彼女の電話、電池が切れたみたいですね」 「お前ら二時間喋ってたからなあ」 「僕の電池もそろそろ切れそうでしたからちょうどよかったですね」 「……」 「元気ないですね。最初は僕がNさんと電話してたらちゃちゃ入れてきたのに途中から黙っちゃって。……もう、放っておいたからってすねないでくださいよ」 「違う。お前とNがほんと楽しそうに会話してたから、邪魔したくなかっただけだ」 「あなたが隣でいろいろ言っててくれた方が楽しいです。彼女だって受話器の向こうで笑ってましたよ」 「お前がそんなに楽しそうに喋るところ、初めて見た」 「……そうなのかなあ」 「どうする? 帰るか?」 「ええ、帰りましょうか」
カンテラ伯爵は携帯電話をしまい、インスリン男爵は伝票を手にした。
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2007年02月08日(木) ■ |
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伯爵と25のシチュエーション |
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「うーん、この履歴書に書く長所って何がいいかなー。ねえ、Mさん、僕の長所って何だと思います?」 「……そんなの自分で考えようよ伯爵」 「とは言っても僕のいいところ。果たしてあるのかなあ」
「ハイ伯爵。コンチハ」 「ああ、こんにちは」
「ねえ、伯爵。今の中東っぽい顔つきの人誰?」 「ええ、と。名前は知りません。このごろよく会うんですよね。この前はおいしいカレー屋さんに連れていってもらいました」 「見るからに大学生じゃなかったよねあの人。どこであんな人と会うの?」 「さあ、普通に歩いてたらよく出会うので。……それよりも僕の長所ってなんだろう」 「……僕が口にすることじゃないんだろうね」 「はい?」
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2007年02月06日(火) ■ |
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伯爵と25のシチュエーション |
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「まあ、そんな気がしてました」 カンテラ伯爵はあっけらかんと言い切った。 『後からはいくらでも言えるだろ』 Lは内心そう思いながらも「じゃあ早く言っててくださいよ」といやみを言うのでやめておいた。 「でもですね、ほら僕このグループとは仲がいいわけじゃないでしょう。僕が言ってもやっぱり部外者の言葉なんです。悲しいけれど。だから、好きにやってもらって、それが成功しようと失敗しようと手助けしよう、とだけ考えていたんです」 「立派なことですね」 Lは興味なさげに返事をした。
「だから、あなたを責めたりもしませんよ。Lさん」
Lの鼓動が、早くなる。 「わざとでしょう? 間違えたの。でも、それをいちいち暴き立てても、もう何も変わらないし、僕は、やっぱり黙っていることにしてます」 「なんで……」 口走ってしまう。 「なんでそれを……」 カンテラ伯爵は、あっけらかんと言い切った。 「まあ、そんな気がしたということにしておいてください」
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2007年02月04日(日) ■ |
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伯爵と25のシチュエーション |
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夜道。二人きり。 私は隣を歩くKに言った。 「月影って言葉があるんです。月に影と書いて月影。意味は月の光、月の光に照らされたもの。夜の世界では光や物そのものが影なんですね。でもそう考えるとですよ、今私たちの足元にあるこの影は、何なのでしょうね。光に名を奪われたこの月光の影は、少しかわいそうだと思いませんか?」 彼は答えた。 「お前、結構深いこと言うなあ」 空の月は、少しずつ欠け始めている。
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2007年02月03日(土) ■ |
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伯爵と25のシチュエーション |
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「伯爵。暇だから遊ぼうぜ」 インスリン男爵の電話である。 「今日は駄目、今から先輩の演奏会を聞きに行くのです」 男爵はとてもつまらなそうな声を出す。 「えー、この頃ぜんぜんつるんでないよなー。俺のこと嫌いになった?」 私は少し困った。 「この頃も何も私達そんなにプライベートは一緒じゃなかったでしょう」 「そりゃそうだけれど」 「それに男爵こそ私が誘った時はいつも何か用事を入れているじゃないですか」 「それは俺が忙しい時に暇なお前が悪い」 なんとまあ、横暴な。 「じゃあ、私もう行かなくては」 「あー、またなー」
いつもと同じような会話をして、電話を切る。 そこでふと考える。 こうまで合わない私達が、どうして仲がよいのだろう。 まあ、いいか。 仲がよいなら、それに越したことはないのだから。
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