冒険記録日誌
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2022年03月31日(木) |
ドラゴンクエストII 悪霊の神々[下巻] (樋口 明雄/双葉文庫)その13 |
(ネタバレ注意。プレイ予定の方は読まないでください。)
ムーペタの町から旅の扉を抜け、邪神の像を使うと、ロンダルキアの洞窟に到着した。ここは原作で悪名高かった高難度ダンションなはずだが、ゲームブック版では敵一匹いない一本道という本当にただの洞窟だった。 洞窟を抜けると、パーティ一行は幻のローレシア城に佇んでいることに気づく。ルビスの守りで幻影を打ち砕くと、ハーゴン神殿の禍々しい姿が登場した。そして呆然とする主人公一行の足元には稲妻の剣が転がっていたのだ。って、展開早いな。 稲妻の剣を拾ってLv5に到達したところで、一旦、地上に戻ってペルポイの町へ向かい、武器屋で破壊の剣と交換してもらう。
ハーゴン神殿に戻って、神殿内を探索すると、次々とモンスターが登場する。 リビングデットを葬った後は、ドラゴンフライ、そして鏡だらけの部屋で魔法をしかけてくる妖術師との戦闘を勝利。邪教の大神官ハーゴンの前に辿り着く前に、最後の敵ラリホーアントが立ちふさがる!
( ゚д゚)マジカ
いやいやいやいや。原作ならアトラス、バズズ、ベリアルといった、中ボス3連戦のタイミングだぞ。ここでラリホーアントとか、少しでも原作を知っている人には想像もできないだろう。作者はおろか、編集者も原作をやったことがないに違いない。ちなみにラリホーアントのクセに、Lv3以下なら問答無用でゲームオーバーになる強敵扱いである。 その後、悪魔の鎧を着てしまった主人公の呪いを解くために、町まで帰還するトラブルがあったものの、今度こそハーゴンと相まみえる。 ハーゴン戦では、バトルポイント制の戦闘に突入して敗北。杖からレーザー光線を発射してくるという謎の攻撃を食らって、下巻2回目のゲームオーバーとなる。パペットマンの時は逃げて先に進めたが、流石にここは倒さないとクリアできない。仕方なく、下巻で初となるバトルポイント表の書き換えをして再挑戦の末、今度は勝利。ハーゴンの杖のエネルギーが切れたスキに、ハーゴンを倒すことができた。アイテムに頼りすぎて自滅するとか、どうもこのハーゴンは小物っぽい。
ハーゴンを倒すと、真のラスボスである破壊神シドーが登場。 「私の名は、シドー。この世の暗黒を支配する者。ロトの子孫たちよ。私を倒さねば、真の平和はこぬぞ」 原作では無言だったシドーが、セリフを吐いて最終戦を盛り上げてくる。こいつは金縛りや激しい炎で攻撃し、ベホマで完全回復も忘れず、とさすがにラスボスの貫録を見せつけてきた。しかし、原作で一番嫌な攻撃だった、デカすぎるグラが、ステータス画面にまで食い込んで、ムーンブルクの王女のMPが見えなくなるという技はない。(当たり前だ。) 奴の吐く炎を破壊の剣で弾き飛ばし、主人公が宙高く飛び上がって、シドーの脳天に剣を突き立てて勝負はついた。 ついに世界に平和を取り戻し、エンディングでは、ローレシア城に戻って、祝賀パーティに出席する主人公一行。割れんばかりの拍手と歓声をあげる人々の前で、3人が礼をするところで完となった。これでめでたくゲームクリア。
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クリアしたところで、ゲームブック版のドラクエ2を振り返ってみる事にします。 まず気になったのはリプレイでも散々話した通り、モンスターの分布がメチャクチャという事です。他にもムーンブルクの王女がベギラマを使う、しびれくらげがホイミで回復する、玉ねぎ型のはぐれメタル(ただしイラストは正しい姿)と遊んでいて違和感が多かった。 これは想像ですが、原作の発売日から7か月後に出版という事から、作者はまだゲームの情報があまりない状態で書いていたのでしょう。しかし、ルプガナのパフパフ娘、ペルポイの歌姫アンナ、逃亡中のラダトームの王様といった単なるフレーバーキャラがしっかり登場しているので、わかる範囲ではなるべく原作を再現しようとしていたのではないでしょうか。 宿屋や道具屋等の店員は町によって個性があり、モンスターの性格もいろいろ違っていて戦闘中もどこか陽気な感じです。その一方で、スターウォーズネタを初めとするメタな会話や面白くないギャグがよく出てくるのは、興ざめというか、特に上巻はそれが顕著で、ノリについていけない読者も多かったと思います。 意外に思ったのは、RPG原作のゲームブックとしては、ルールが軽くて遊んでいて快適だったことです。バトルポイント制の戦闘は嫌いとは言いましたが、サイコロを振らないのでテンポが良いという長所がありますし、戦闘中の描写があるのも悪くありません。当初は、和製ゲームブックの最高峰とされる鈴木直人作品のような本格派と比べると、いろいろゲーム性が甘いと思っていました。しかし、これはこれで遊びやすくゲームバランスが取れている作品だったのです。 また下巻は、船を入手してからクリアまでをよく詰めこめたなと感心します。塔や洞窟がいくつか省略されていますが、ゲームブックという範囲で、かなり忠実に再現されているのではないでしょうか。一部アイテムの配置が違うのは、原作を遊んだ人でも楽しめる部分ですし、ダンション要素が殆どないのは、パラグラフ数の節約のためでしょうが、ストレスなく話しが進むので、一概に短所とは言えません。ただまあ、上巻の方は、銀の鍵やドラゴンの角が省略され、主なイベントが2人の仲間を見つけるだけなので、その分、勇者の泉と月の塔の部分をしっかり作り込んでほしかったところです。特に幽閉されたムーンブルクの王女を助けに月の塔を登っていくのは、面白い改変だっただけに勿体ないと感じました。 まとめると、一見、しょーもないギャグの多い軽薄な作品に見えるが、原作のゲーム性を残しつつも、軽快に遊べるよう工夫されていた良作だった、というのが今回遊んでみての感想です。パーティの3人は仲が良く、他の二次創作作品にありがちな恋愛絡みのエピソードもないので、終始雰囲気が明るくて、遊んでいて楽しい作品でした。
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最後に蛇足ですが、ドラクエ2のゲームブックは、実はエニックス文庫からも出ていて、そちらの方も序盤だけ遊んでいます。基本は一方向システムがメインのようで、サマルトリアの王子の妹が、主人公にくっついて勇者の泉まで同伴するとか、良くも悪くも独自の展開が多いです。 ドラクエ2のゲーム性を再現したのが双葉文庫版、ドラクエ2の物語を掘り下げたのがエニックス文庫版と考えると良いかもしれません。エニックス文庫版は、双葉ゲームブックの最高傑作「未来神話ジャーヴァス 救世主の章−新世紀を救え!」と同じ作者でもありますし、遊んだ人の感想を読むと、高評価なことが多いので、いずれは最後まで挑戦して感想を書きたいと思います。
(さらに蛇足追記) 読み返してみたら、ラリホーアントは上巻にも登場していました。 しかも、ハーゴン神殿と違って、こっちでは普通にローレシアの王子一人で倒しているんだが。 なんなんだいったい。
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