冒険記録日誌
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2022年03月17日(木) |
ルパン三世ゲームブック さらば愛しきハリウッド復刻版(吉岡平著・塩田信之編/双葉社) |
ゲームブックブーム当時に、双葉文庫がファミコンゲームを次々にゲームブック化していたのは有名ですが、その一方でルパン三世を題材にしたゲームブックもシリーズ化していました。 シリーズは全19巻にも到達しており、ルパン三世というコンテンツの根強い人気ぶりがうかがえます。共通の世界観を使ったゲームブックの作品数としては、和製ゲームブックではぶっちぎりの最多です。 ちなみに私自身としては、ブーム当時はプレイした事のないシリーズでしたが、2004年07月にシリーズ全作品をプレイし、冒険記録日誌には簡単にですが感想を書いています。
さて、そんなルパン三世ゲームブックですが、なんとシリーズ第1巻の「さらば愛しきハリウッド」が去年に復刊しているではありませんか。こりゃびっくり!いや、以前にも一部作品が電子書籍化したとか、ルパン三世ゲームブックのストーリーが漫画化されたこともあるので、意外に双葉社に見捨てられてはないコンテンツなのか?と思ったことはありましたが、復刊までこぎつけるとは嬉しい限りです。 最近ルパンの新作アニメシリーズをやっていた背景もあるのかな、と考えつつ購入すると、ゲーム本編の前後に合わせて30ページ以上にも渡って、塩田信之さんによるゲームブックの解説がありました。 解説を読むと、この復刻版は塩田さんのご尽力があってこそ成立した企画だったようで、創土社で鈴木直人作品などを復刊させた酒井さんを思わせるような情熱を感じました。凄い、凄いよ、塩田さん!
そんな興奮を落ち着かせて、改めて復刻版を見てみます。本編より先に解説から読んだ方も多いと思いますが、私は本編のゲームブックを遊ぶ方を先にしました。 本作のゲームシステムですが、基本的には体力ポイント、武器ポイント、情報ポイントの3つの能力値を管理するだけで遊べます。サイコロなどの乱数要素もありませんし、ルールは難しくありません。10点を3つの能力値に好きに振り分けて自分のルパンの特徴を決めてスタートします。私は体力4・武器3・情報3で遊びましたが、ギリギリ各判定を成功させ、クリアする事ができました。実際に遊んでみるとわかるのですが、例えば体力8・武器1・情報1という極端な振り分けをしても、高ポイントが生かされる判定がないので、結局は3つの能力値は均等に振り分けた方が無難です。ここはちょっと残念なところ。 本作品のストーリーは、ハリウッドを舞台にルパンが映画撮影のスタントマンとして潜り込みながら、ある幻の映画を映した一本の古いフィルムを盗むというものでして、終盤で判明するそのフィルムの秘密(ルパン自身は初めから知っているがプレイヤーは知らされていない。)がお洒落なのですよ。ルパン三世の世界観もちゃんと再現されており、ある程度は選択肢を好きに選んでも問題なく進められる難易度も相まって、今遊び返してもちゃんと面白かったです。シリーズ中でも上位の良作だと思っています。本編の著者である吉岡平さんの新装版あとがきを読むのも感慨深いです。
そしてゲームブックの解説の方ですが、こちらの筆者の塩田さんと言えば、双葉で多くのゲームブック執筆を手掛けていた方で、ゲームブックがほとんど出版されなくなっても、現在に至るまで折に触れてはゲームブックの事を語ってくださっている印象がある方です。 本編前にゲームブックとは?という説明、ルパン三世ゲームブックシリーズの解説、吉岡平さんのプロファイルがあり、本編後には私見も交えながらゲームブックの歴史を丁寧にまとめられています。もし、ゲームブック講座とかするなら、そのまま使えそうなくらいの完成度です。その後は、ゲームブックの書き方を説明してくれますが、これがかなり具体的かつ実践的なものなので、ゲームブックの制作に興味がある人なら必見の内容でしょう。 総じて、非常にゲームブック愛にあふれた内容でして、古参ゲームブックファンの私なぞは、読んでいてほっこりした気持ちになりました。お値段こそ、1,900円と高めですが、ファイティングファンタジーコレクションや、ウォーロックGMの値段を考えれば、商業ラインにのせるには仕方がないのかなと感じます。それにルパン三世が題材な時点で購買層は高めと思われ、価格面はさほど問題じゃないかもしれません。 ちょっと気になったのが、ルパン三世ゲームブックシリーズの解説が冒頭にくる本書の構成でして、この解説はカラーページになっていて目立っています。なんというか「さらば愛しきハリウッド」の復刊というより、塩田さんの解説メインの本に感じてしまうのですよね。カラーページを使うなら、「さらば愛しきハリウッド」の舞台地図やイラスト入り登場人物紹介のページをカラー化して、あくまで本編を第一にすべきじゃないのかなと感じました。吉岡平さんのプロファイルも後書きでの紹介で良いかと思います。 最後に、塩田さんの希望によると、さらなるシリーズの復刊も狙いたいとの事ですが、身も蓋もない本音を言うと、全巻面白いわけではないので、ベストセレクションにすべきと思います。例えば、塩田作品を復刊するなら、単調な迷路でしかないシリーズ5巻「暗黒のピラミッド」は飛ばして、7巻の「謀略の九龍コネクション」を選びたい。そして「謀略の九龍コネクション」にしても、五右衛門が“ガチョーン”のギャグをとばすのはどうかと思うので、いろいろ現代風に改訂して欲しいところです。 一番嬉しい理想は、新作を出してもらうこと。樋口明雄さんや塩田さんの新作ゲームブックとか胸アツですよ。などと、我儘な希望を言いましたが、そんな期待も込めつつ今回の感想を終わります。
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