冒険記録日誌
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2022年03月14日(月) |
火吹山の魔法使い1.5〜火吹山ひとたび半の冒険(藤波智之/新紀元社) |
「火吹山の魔法使い1.5」とは、「GMウォーロック」という雑誌(ムック本?)の第2号に収録されているパラグラフ数60の短編ゲームブックです。 「GMウォーロック」とはなにかと言うと、TRPGやカードゲームそれにゲームブックも含めた最新のアナログゲーム情報を主に扱う総合誌というのが私の主観です。はるか昔のゲームブックブームの際に、「ウォーロック」という雑誌が発売されていたわけですが、根強いファンに支えられて、こうして雑誌が復活したわけで、本当に凄いことだと思います。 ただ、昔の「ウォーロック」は当時からその存在は意識していたものの、各号を買いあさるには金銭的に厳しく、また近くに売っている本屋がなかった、さらにはTRPGの方はさほど関心がなかった事もあって、私にはどちらかと言えば縁遠い存在でした。そのせいか今回の「GMウォーロック」もあまり食指が動かずにこれまで購入はしていませんでしたが、今回この作品の為だけに第2号を購入しました。
さて、「火吹山の魔法使い1.5」に話を戻すと、「火吹山の魔法使いふたたび」が日本で初お披露目される背景の中で、藤波智之さんが執筆した作品です。ざっくりしたストーリーを説明すると、時間軸は「火吹山の魔法使い」で主人公に倒された邪悪な魔法使いザゴールがまだ復活を果たしておらず、「火吹山の魔法使いふたたび」に至る前のエピソードです。本当にザゴールは滅びたのか、まだ見ぬ財宝が残されているのかを確認するために、主人公は廃墟と化した火吹山の地下迷宮に潜り込むという内容になっています。 さすがに短編だけあってあっという間に、迷宮の最奥に到着してしまいますが、蛇と鍵の入った小箱だの、川にネズミ男など、「火吹山の魔法使い」を連想させるものが沢山登場します。しかし、今回の作品で凄いのは、そんなノスタルジックを感じさせる部分ではなく、最初の酒場の親父の質問に答える最初の選択肢です。なんと、ここの答えによって、その後の冒険がまったく違うゲーム性になっており、その2つの冒険は多くのパラグラフを共有しているのです。この作品を書くには、パラグラフの番号の振り分けが滅茶苦茶難しかったのではないかと思われ、作者の藤波智之さんの力量に驚きます。同氏のこれまでの作品でも、挿絵に隠された数字に気づいてパラグラフジャンプするとストーリーが分岐という仕掛けはありましたが、今作はそれにさらに捻りが入って、何が幻想か、うつつかというこの作品独特の奇妙な雰囲気が、さらに強調される素晴らしいアイデアだと思います。 不満点の方は特にありませんが、強いて言えば戦闘システムが従来のファイティングファンタジーシリーズと違う事でしょうか。これは戦闘時にサイコロを2個振った数値と主人公の技術点を加えたものを、表示されてる敵の戦闘力と比べ、勝った側が相手の体力点を2減らす、を繰り返して、片方の体力が0になると終了というもので、サイコロを振る回数がオリジナルの半分になるので遊びやすいルールです。一応、のぞむ人は敵の戦闘力を7減らして、ファイティングファンタジーシリーズの戦闘ルールで遊んでも良いとも説明されています。でも、他作品ならともかく、仮にもファイティングファンタジーシリーズの原点とされる「火吹山の魔法使い」を継承する作品なら、ここは遊びやすさよりも定番の安心感を重視して、ここは初めから旧来の戦闘システムでやってほしかったところです。なお、私自身は戦闘時の運試しルールを積極的に使いたいタイプなので、オリジナルルールの方で遊んでいました。 総じて言うと「火吹山の魔法使い1.5」は、短編ゲームブックらしく1回のプレイ時間が短くて気軽に挑戦できるのに、濃厚さも兼ね備えているという、とてもよく出来た作品でした。こんなレベルの作品が毎号掲載されるなら、私も「GMウォーロック」を定期購読しちゃうだろうと思います。
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