冒険記録日誌
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2022年03月12日(土) 火吹山の魔法使いふたたび(イアン・リビングストン/SBクリエイティブ) その1

 この冒険記録日誌を読むような方には当然のような情報ですが、海外産のゲームブックを愛好していた方には聖典のように崇められ(言い過ぎか?)、社会思想社から出版されていたファイティングファンタジーシリーズの一部が、昨年にSBクリエイティブから、コレクターボックスという形でめでたく復刊いたしました。「火吹き山の魔法使い」「バルサスの要塞」「盗賊都市」「モンスター誕生」に加え、なんと旧版では発売されなかった「火吹き山の魔法使い ふたたび」が、初翻訳されて抱き合わせセットで販売されたのです。復刊と言いつつも、日本のファンにとっては、実質シリーズの新作を遊べるわけで、テンションがあがらないはずはありません。残り4冊は、このセットを買うような人なら、過去にプレイ済という人が多いかと思いますが、シリーズ後期作品の「モンスター誕生」は初めて遊ぶという方はさらにお得でしょう。
 私も早速、昨年の夏にはセットを入手して「火吹き山の魔法使い ふたたび」を遊んでいました。こんな貴重な新作をたった1日か2日の日誌のネタで終わらせるのは勿体ない、と思っていたので、購入した当初は初プレイからクリアまでのリプレイをじっくり書いていくつもりだったのですが、実際に遊んでから、もう半年も経過してしまいました。
 残念ながらリプレイを載せるには、鮮度が落ちているどころか、即身仏になるくらい時間が経過しています。2回もクリアするくらいは遊んだので勿体ないのですが、今回は感想だけ書いておき、また程よくプレイの記憶が薄れて、本作をまた遊ぶ気になれば、今度こそリプレイを載せたいと思っています。
 そんなわけで「火吹き山の魔法使い ふたたび」は、どんな作品なのかと言うと、作者は共著だった「火吹き山の魔法使い」の片割れであるリビングストン氏。「火吹き山の魔法使い」の冒険から十年後を舞台に、火吹き山の迷宮の主である魔法使い「ザゴール」が蘇ったために、再び火吹き山に討伐に乗り込むというのが、粗筋です。ファイティングファンタジーシリーズ、いやゲームブックの原点復帰とも言ってよい内容です。

 と、持ち上げてみましたが、ここからは山口プリンの本音を書きます。
 私は、ゲームブックというジャンルを広く愛しているので、当然、ファイティングファンタジーシリーズも大ファンだったりします。なにせ、社会思想社のファイティングファンタジーシリーズ、創元推理文庫のスーパーアドベンチャーシリーズ、双葉文庫のファミコン冒険ゲームブックシリーズの3大柱が、私のゲームブックへの愛着の土台になっているのですから。
 しかし、どのシリーズも全作品が大好きというわけでもなく、むしろ昔はリビングストン作品が嫌いでした。
 嫌いな理由その1。ゲームバランスが滅茶苦茶だから。
 彼の作品の大半では、1回の冒険中に戦闘力が異常な奴と戦う羽目になることが必ずあるので、ルール通りに能力値を決めて遊ぶと、技術点7のキャラクターは、まずゲームをクリアできません。そこまでの道中で、救済アイテムを入手できていれば、戦闘を避けられる、もしくは低い能力のキャラクターでも、戦闘を有利に出来るというギミックなら、問題ないのですが。それが、必要なアイテムがなければ、強敵とは戦闘すらできずに即死。アイテムを持っていて、初めて技術点11や12クラスの化け物と真っ向から戦えるという狂った趣向ですから、ゲームをクリアさせる気がないとしか思えません。特に昔の私は、ゲームブックは必ず説明されたルール通りに挑戦しなければならず、ルールを端折って、戦闘は自動的に勝ったことにして進むとか、プレイヤーとして邪道としか思えない石頭だったわけですから、相性が良いはずはありません。
 嫌いな理由その2。クリアを目指すと行動の自由がないという事。
 「運命の森」や「トカゲ王の島」といった初期作品は別として、多くのリビングストン作品では、クリアに向かうルートは基本的に一本道、さらにアイテムの取りこぼしを一つでもすると致命傷という事も珍しくないので、リビングストン氏が用意した真の道を探すゲームと割り切るしかありません。そう割り切っても常識的に選ばない選択肢が、クリアに必要な行動という事も多いので嫌になります。具体的な例では、「恐怖の神殿」の序盤でポートブラットサンドに立ち寄るシーンがありますが、そこではいかにも怪しい奴が主人公を町の路地裏に案内しようとします。理性的に考えれば、こいつは強盗でもするつもりだろうから無視するべきと思え、また実際にそいつを信用してノコノコついていけば、襲われるわけですが、そこで倒した敵から入手するアイテムがクリアの必需品なのです。強盗がそんな物を持っていたのは、単なる偶然なので、意地の悪い仕掛けとしかいえません。初見でクリアする気なら「リビングストン作品だから、ここは寄り道をするのがクリアのコツだろう」というメタな発想をするのが攻略法になるわけです。
 要するに私がゲームブックに求めている「自分が思うように行動して、物語を作っていける本」という考えとは反対なわけですね。
 この2つの問題は、他の作者も含め、ファイティングファンタジーシリーズの多くの作品にありがちですが、リビングストン作品は特にその傾向が強く、むしろリビングストンこそが、その悪いスタンダードを作った犯人ではないかと思うわけです。

続く


山口プリン |HomePage

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