冒険記録日誌
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2017年02月12日(日) バニラのお菓子配達便!2〜スイーツ女王と秘密のドレス〜(藤浪智之/角川つばさ文庫)

 バニラのお菓子配達便!〜スイーツデリバリー〜の続編です。(前作の感想は2013年9月2日の冒険記録日誌に書いています。)
 主人公は小学5年生の元気な女の子、天馬ばにら。ばにらは3姉妹の末っ子で、2人の姉さんと一緒に街のケーキ屋を営んでいて、ケーキの配達をまかされているのでした。
 前作同様、3つの短編ゲームブックによる連作ですが、前作以上にひとつながりになったようなストーリー構成です。雰囲気は変わらないので、前作を気に入った人なら問題なく楽しめるでしょう。私は楽しみましたよ。

 今回からツンデレで主人公にライバル意識を燃やす女の子、豪紗須メル(ゴウジャスメル)が新登場。ほーほっほっほっ、とかベタに笑ってくれます。
 有名スィーツチェーン店の社長の娘で、ばにらの町内に出店してきたのです。メルが挑戦的に、内容はおまかせでケーキを注文してきたので、どんなケーキを作って配達するか思案するのが第一話。
 グッドエンドは2種類ですが、メルがケーキのお返しをするエピソードはなんとなく予想はついていたけど、やっぱりいいですね。

 第二・三話は前編後編でスイーツクイーン・コンテストに出場して優勝を目指すという内容。ケーキと調和する衣装も用意する、ファッションショーとスイーツコンテストを合わせたような企画だそうです。上のお姉さんが思い付きに出場を申し込んだおかげで、パテシェの下のお姉さんとモデル役のばにらの2人が出場する羽目になったというお話し。

 第二話はコンテストに出す、ケーキと衣装のアイデアを出すようにお姉さんたちに言われて、ばにらが悩む内容。町内のいろんなところを歩いて、人と話したり小さな事件を解決しながら、アイデアを貯めていくのですが、発見できるアイデアは沢山用意されている中から、1つ2つ見つければ十分なのでクリアは簡単。前作をクリアした人だけが進める特典ルートなんかもあります。
 面白いのは読者が実際に、紙に衣装とケーキを描いてデザイン候補にすることも可能という仕掛け。本当に書かせるとか、ブレナン作品の影響かな?絵を描いた後で色合いとか、デザインの傾向とか質問があって、部類分けされていました。

 第三話はいよいよスイーツクイーン・コンテスト。この回は今まであったような、町の地図の絵を中心に自由に探索していくタイプの双方向システムとは違い、予選から勝ち抜いていく一方向システムです。
 見どころはやっぱり決勝のシーン。選んだ衣装に関係する第二話の登場人物が、決勝直前に激励してくれる演出があったうえ、イラスト担当の佐々木亮先生が素晴らしい仕事をして、登場するアイデアの数々のどれを選んでも、ちゃんとその衣装を着たばにらのステージイラストを見ることができます。どの衣装でも笑顔のばにらに、物語が華やかに盛り上がってましたよ。
 ちなみにシークレットドレスを選ぶと、少しだけゲーム的に有利になるけど、このドレスは用意されたものなので、衣装製作担当の上のお姉さんがちょっと可哀そうな気がしました。(笑)
 読者自身が考えたドレスで出場した場合は、さすがにイラストはなかったです。矛盾しないよう文章もあたりさわりのない感じになっているので、このパターンだとちょっと展開が地味目です。ただ、ゲーム的にはこちらの方が優勝に有利になるのですけどね。あと、考案した衣装とケーキが‟ユニーク”なデザインに分類されたパターンでの、観客の驚き具合がなんともいえず。軟体動物がばにらに取り付いてウネウネしているところをモザイクがかかったような、怪しげな映像が脳内に浮かんでしまった。(汗)

 さて、本作は読む前に他のサイトで、「スイーツクイーン・コンテストは運がないと優勝できない作りなのが問題」といった事を書いている方がいたので、実際はどんな風なのかと、今回は興味深々で遊んでいました。
 確かにランダム要素がある作品なので、優勝は運がからんでいます。でも、良い選択を選んでいけば、アイテムが増えて優勝の可能性はあがる作りだったので、逆にゲーム性を高めていて良かった点だと思いますね。
 ただ、このシリーズは角川つばさ文庫から出ていますからね。「火吹き山の魔法使い」を遊んでいる私みたいな人には良くても、読者層的にはそういったゲーム性を求めていない人もいるという可能性はあります。ゲーム性を出すにしても、SCRAPの脱出ゲームブックみたいに、パズル中心にした方がウケるのかもしれない。
 もっとも、私は逆に本格パズル系は苦手なんで、仮に続編が出ても是非この路線のままでお願いしたところです。正直、自分が楽しめなきゃ意味ないし。うん。
 もし続編が出たとしたら、上のお姉さんが、ばにらの優勝特大パネル写真を店内に飾っていると思う。そして、いい加減止めてほしいと、ばにらが恥ずかしがってぼやいている冒頭が目に浮かぶな。


山口プリン |HomePage

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