冒険記録日誌
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2017年02月04日(土) イース 戦慄の魔塔(塩田信之・大出光貴/双葉文庫)

 双葉のファミコン冒険ゲームブックということで、原作はファミコンRPGなのですが、イースというと、私の中では黎明期の和製パソコンゲームのイメージですね。
 ファミコンにせよパソコンにせよ、私は原作の方を全然やったことないので、原作と比較しての内容は語れません。ここでは純粋にゲームブックとしての感想を書いてみます。
 主人公は現代の男の子、名前はヒロユキ。ある朝、学校を遅刻しそうになり、パンを口にくわえて走って登校していたところを車に跳ねられて……気が付くと、剣と魔法が支配する異世界のエステリアにきてしまったというプロローグ。いやぁ、設定がベタベタです。
 ゲーム開始早々、ラスボスとなるダルク=ファクトなる魔王が登場して、「下等生物の分際で」とか、挑発的なことを言って去っていき、なんとなく世界を救う冒険にでるわけですね。
 ちなみにこの魔王は、美形、ロン毛、頭にヤギのような角、漆黒のマントで身を包み、人を見下した態度という、今ならBLなどで出てきそうな魔王のイメージを全て兼ね備えているキャラだったりします。幸いセクシーゲームブックシリーズではないので、このゲームブックでは主人公とそんな展開になったりはしませんけど。
 主人公達を下等生物と蔑む割に、世界をどうこうしようという魔王が、いちいち登場しては主人公達に何度もちょっかいをかけてくるのが謎と言えば謎です。

 一方の主人公側ですが、異世界にやってきたとはいえ、移動したのは精神だけで、肉体は本来のイースの主人公であるアドルという青年のものです。
 しかし、アドル本人の意識も残っていて、主人公の頭の中で怒ったり助言をしたりと、いろいろ脳内で会話してくれます。アドルの性格はしっかりめの同級生な感じ。アドルからすれば自分の肉体ですから、主人公のやることが心配で大変でしょうね。
 もっとも作中に描写はないものの、ヒロユキの方も現代で車にはねられた自分の肉体が気になって仕方がないんじゃないかと思いますね。冒険をやりとげて元の世界に戻ったら、肉体は火葬されていたじゃ笑えませんよ。

 ルール的には、勇気ポイント、熟練ポイントという2つの能力値の他に、剣などの装備品を含むアイテム管理、アルファベットによるフラグチェックです。
 経験値や所持金の管理はなし。サイコロやバトルポイント表といったランダム要素もなく、その分戦闘はしっかり描写されているので、遊んでいてRPGというよりはフラグの多い分岐小説という印象でした。
 イラストは悪くなく、特にヒロインを始めとする女性キャラが可愛くて申し分なし。ただ、国の命運がかかっている冒険の割に、総登場人物は10人程度と少なめで、物語の壮大さはあまり感じなかったかな。
 難易度はやや簡単なくらいか?重要アイテムが入手できるかが、ヒントのない分岐で決まってしまう事もよくあり、初回プレイだと運がよくないとクリアは難しいものの、基本は一方向システムで謎解きやランダム要素がないゲーム性なので、繰り返しプレイすれば必ず先に進めるようになります。
 自分のプレイでは鏡の迷路にちょっと苦戦したほか、序盤で入手できる薬を取らなかったせいで最終バトルに負けたりもしましたが、手詰まりになった感覚はなく、3回目のプレイでクリアできました。
 魔王との最終バトルは多くのパラグラフ数を使って、戦闘が繰り広げられています。自分のプレイでは最強装備をキチンと揃えてのクリアでしたが、クリア後の楽しみに他の分岐を追いかけると、意外にも装備が貧弱でも魔王を倒せる可能性があるようです。
 特に、店売りの普通のロングソードを構える主人公に「ふっ、そんなおもちゃで私を傷つけられるものか」と嘲る魔王。ここで勇気ポイントがかなり高いと気合で強引に叩き切きることができ、「な…なぜだ……斬れぬはずの剣が……」と魔王が絶命する展開は好き。理屈より根性ある方が勝つという少年漫画的内容が熱いですよ。

 このように本作は、細かい事を考えずに王道ファンタジーなライトノベルゲームブックと思えば楽しい作品です。
 ただ、魔王は倒せたものの、仲間たちとロクにお別れも言わないまま、すぐに主人公は現代に強制送還されたところで終了という、尻切れトンボ気味なラストがちょっと不満。あと1ページでもいいから、アドルと主人公のその後をエピローグに書いて余韻に浸らせてほしかった。
 双葉文庫からはイースゲームブックシリーズは3巻まで発売されているので、このラストも続編で仲間との再会を喜ぶための演出かなと、期待してイース2を見てみると、イース2とイース3は作者が竹田明さんで、1とは話しが全然つながっていないんですね。これは残念すぎてガッカリしました。
 別に竹田明さんの書くゲームブックが悪いというわけではないのですが、同一レーベルでシリーズものを出すなら、設定はつなげてほしかったなぁ。


山口プリン |HomePage

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