冒険記録日誌
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2016年02月20日(土) F−4Jファントムラインバッカー作戦(ワールドフォトプレス/光文社文庫)

 戦争を題材にしたゲームブックというと、敵地に潜入する特殊部隊ものを思い浮かべますが、本書のように空軍を対象にしたものは珍しいです。他にはリヒトホーフェン(2013年10月01日の冒険記録日誌参照)くらいかと思います。
 本書は全223ページの本なのにゲーム開始前の説明が78ページもあるのも特徴的。といっても、純粋にゲームブックとしてのルール説明は数ページです。大半はベトナム戦争における敵味方の空軍設備などの背景説明や、空中戦におけるテクニックや用語などが細かく書かれています。
 著者となっているワールドフォトプレスは、ミリタリー系の解説本も出しているようです。本書もゲームブックが収録されているミリタリー入門書と考えた方が正解かもしれません。

 ゲームブックの主人公は戦闘機のパイロット。ナビとして同乗する相棒のスコットと一緒に出撃し、無事戻ってくるか撃沈される一回のミッションまでが収められています。
 主人公には戦歴ポイントなる経験値が存在し、一度ゲームが終わっても引き継いで再び遊ぶことができます。戦歴ポイントと運命ポイントを使った表にサイコロを使った乱数処理を行っており、戦歴ポイントは高いほど、つまり繰り返し遊ぶほど有利になるシステムとなっています。ちなみに運命ポイントは出撃の度に決めなおすもので、いわゆる今日はついている日、ついてない日を表します。同じ状況でも毎回うまくいくとは限らないわけです。
 目的は敵機を5機撃墜してエースパイロットになることですので、最低5回は繰り返しプレイする必要があります。撃墜された場合でも状況によっては戦闘機から脱出して生還でき、ゲームを続行できますが、戦死もしくはベトナム軍の捕虜になった場合はゲームオーバーとなり、戦歴ポイントは引き継げません。

 文章やゲーム展開は非常にストイックな感じ(いかにもな兵士達同士の軽口はありますが)で、現実的なシュミレーションとなっています。主人公が何もできないまま天候不順による出撃中止で、パラグラフ1からやり直しになる冗長な展開も、本書だと納得できますね。
 敵機に遭遇するかなども含め、運の要素が多くてプレイヤーに選択の余地があまり多くない気もしましたが、気ままな冒険者と違って、勝手に巡回コースを変えられるわけでもない一戦闘員の立場ですから、現実の戦争もそんなものかもしれないです。
 敵機に遭遇すると空中戦が始まるわけですが、どのような操縦をするかなどで専門用語が飛び交い、ゲーム開始前の長い解説がここで役に立ちます。ゲーム中に一々解説を入れていたらテンポが悪くなるし、案外合理的に書かれた本という気がしてきました。
 主人公にまつわる特別なストーリーとかはないのですが、敵のエースパイロットに遭遇してしまった場合なんてボス登場といった趣で燃えます。

 他のゲームブックでいうと、システム的にカザンの闘技場(社会思想社)に近い内容じゃないでしょうか。それに本書もまさに大空を闘技場にした格闘です。


 


山口プリン |HomePage

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