冒険記録日誌
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2016年02月14日(日) 一緒にアクシア 大遺産を探せ!(若桜木虔/光文社文庫)

 先日遊んだ「爆走バイク!アメリカ大陸縦断レース」が割と面白かったので、最近は光文社のゲームブックをいろいろ遊んでいます。
 それで今回紹介する作品は「一緒にアクシア 大遺産を探せ!」です。
 光文社のゲームブックレーベルの第一弾(厳密に言えば「F−4Jファントムラインバッカー作戦」との同時発売)であり、表紙の実写の女の子を使った表紙が目立っていて、昔にゲームブックを求めて古本屋めぐりをしていた頃にも、比較的よく見かけた本なので、なんとなく光文社のゲームブックの代表作というイメージを持っていました。
 今見ると、表紙の女の子が時代を感じるという意見もありますが、これはまあ、週刊誌でも観光パンフの写真でも、女性の写真を使ったものがすぐに古びてしまうのは宿命みたいなものです。

 ただ、この作品で気になるのは作者が若桜木虔さんということ。
 若桜木虔さんのゲームブックというと児童向けの「誘拐犯はエイリアン?」(2003年08月29日の冒険記録日誌参照)以外に、秋元書房のエスパーシリーズをちょっとだけ遊んだことがありますが、あのシリーズは蟻地獄のように無限ループになる箇所を何か所も設置しているのと「最善手は○○手!」と最短クリアの手数をPRするのを特徴にしていました。
 山口プリンの感覚では、クリア不能な場所を延々とまわるのは苦痛でしかないうえ、最善手とか言われても焦るばかりで、むしろこれはマイナス点なのですが、若桜木さんは逆に長所と思っているようなのですね。
 本作も後書きを先に読んでみると、やはりその2点がしっかり書いてあります。他にも「通勤や通学の電車やバスの中でも楽しめるように、まず読みやすいということを目標に作りました。」と、能力値やフラグ管理を不要にしたことを書いていますが、その一方で、「四つの迷路がゲーム中にあるが、そのうち2つは非常に難しく、メモなしで2つとも突破できたらよほどの強運の持ち主」という意味の事も書いています。電車やバスの中でマッピングなんかできるかい!などと、作者の矛盾したコメントに突っ込みを入れてから遊んでみました。

 主人公は東京に住む男子高校生であり、超能力研究会なるサークルの部長です。(怪しげな肩書ですが、この設定はゲーム中に特に意味はなかったです。)
 本日は美少女揃いで有名な女子校生達とサークル同士の合コンとのことですが、やってきたのは本作のヒロインの西条優貴ちゃんだけ。それもそのはず、主人公は優貴にだけ集合時間を1時間前に偽っていたのです。
 こいつ、山口プリン的には駄目なタイプの主人公だわ。
 そこへ突然やってきたフランス人が血を流しつつ登場し、「アク…シ…ア…」と呟きつつ、優貴にもたれかかるように絶命。その手に握られた封筒には<マドモアゼル・ユキ・サイジョウ>の文字が!
 死体の事は駆け付けた警察が引き取りましたが、封筒の事は主人公が優貴に口止めします。そして一緒に謎を解こうと優貴を誘って、封筒に入っていたヒントを元に、他の情報が保管されているとされる、駅のコインロッカー探しが始まります。
 ここからゲームスタートです。さすがに序盤だけあって、コインロッカー探しは鉄道移動を使った簡単な内容で、土地勘のない地方の私でも一発でクリアできました。

 細かいところを省いて展開を説明すると、殺されたのは最近死亡した大富豪、セレクタン氏の代理人。セレクタンはたいした縁もない優貴に莫大な遺産を相続させる遺言を残している。襲ってきたやつらはそれに反対する一派だろう。相続のためにはヨーロッパに行かなければならないが、旅費がないので困ったとの内容。
 ここでものすごく唐突に、優貴が映画のヒロインとして町でスカウトを受けます。出演すれば金が手に入るし、これは渡りに船とばかりに、すぐさま承諾して2人は映画のロケ地に向かいます。相続や映画の出演とは、無関係なはずの主人公まで、なぜ優貴についてくるのかは謎です。ここまで一緒に過ごしたのだから、もう優貴とは恋人も同然とか勝手に言ってるし。
 ところで映画出演は罠でした。ロケ地までくると、フランス人を殺害した一味に襲われて、なんとか優貴と主人公は天然の地下洞窟に逃げ込みます。
 ここでひたすら長い迷路シーンに突入。前進する、後退する、左に進む、右に進む、たまに上(下)に進むという選択肢が延々と続きます。
 適当に進むと手合い頭に、追っ手に捕まって簡単にゲームオーバーになります。追っ手をかわすヒントもないので、マンピングをしつつ、ゲームオーバーを繰り返しながら正しい道を探すしかないようです。
 マッピングしようとすると、あれ?
 同じパラグラフを何度も行き来するのに選択肢は、前進する、後退する、左に進む、右に進む、となっているので、文章通りにマッピングすると意味不明になるよ?これは2人が迷宮の中をカニ歩きをしていると考えるべきかな。まるでドラクエ1です。

 なんとなくマッピングする気力も沸かなくなったので、指挟みによるゲームオーバー回避も駆使しつつ、なんとか先に進みます。ウンザリするほど迷った後、かけつけた警官隊がいる安全地帯に脱出成功。
 そこにはもう一人のセレクタンの代理人、ジャンヴィエ氏がいました。ジャンヴィエ氏にすっかり事情を聞いた優貴と主人公は、セレクタンの城のあるフランスのアクシア村まで連れて行ってもらえることになります。
 謎めいたアクシアという単語が地名というのも肩透かしですが、それよりも主人公が余計なことを言わずに最初から警察に封筒を見せていたら、危険な目に遭わずにすんで良かったのでは?という事の方が気になりました。

 それからなんだかんだで、セレクタンの城に到着するわけですが、優貴と主人公が先に城内に入った瞬間、外にジャンヴィエ氏達を残したまま扉は閉まり、部屋の床がエレベーターのように2人を乗せたまま下降します。ギャグ漫画かよ。
 ここからはまた城内をめぐる迷路シーン。今度の迷路はセレクタンの悪趣味なのか、城内のあちこちに幻影や動く扉が仕掛けられていて、狂気そのものです。
 動く甲冑が襲ってくるし、こいつはどうやっても全然倒せないし、あー、もう意味わかんねぇですよ。もしかして、ここは無限ループの罠に入っているのかな?だとしたら指挟みテクニックも使えないし、いったいどこからやり直せばいいんじゃい!
 
 というわけで、ここで残念ながらリタイアです。
 この後の展開はセレクタンの財宝の部屋に入れば、ゲームクリア。優貴にも「ああ、私の王子様……。」とか言ってもらえるのですが、仮にちゃんとクリアできたとしても、ここまでのストーリーが適当すぎて感動できそうもないです。
 迷路シーンでも主人公から見た優貴の様子をいちいち描写したりと、それなりに文章に肉をつけているのは唯一の良心だと思いますが、ゲーム的にはただ不条理な迷路が続くだけの、ひたすらストレスが溜まるウルトラ電流イライラゲームブックでした。スーパー頭脳集団アイデアファクトリー作品を愛しているような私でも、このゲームブックを楽しめる悟りの境地に達するには、まだまだ修行が足りないようです。
 ちなみに若桜木虔さんのHPを見るとこの作品のことに触れられていました。本書はフジフィルムのCM企画として、小説版と同時に書いたそうです。
 出来は2の次で良いから、早く出版を!って頼まれた仕事だったということですから、このような内容になったのも必然といえるのかも。ちなみに校正ミスにより、一カ所バグがあるらしいですが、それがどこなのか書いていません。私も探す気力はないです。
 カバーガールは本来なら当時のフジフィルムのCMに合わせて、人気絶頂期の斉藤由貴を使うはずだったそうで、もうそうだったなら少し価値があがったかもしれず、残念……でもないか。作者ご自身がやっつけ仕事と認めているのではどうにもフォローのしようがないですなぁ。(汗)


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