冒険記録日誌
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2016年02月06日(土) バンカーズクエスト(高平鳴海/新紀元社)  

 昨年末頃に発売された最新刊と言ってもいいゲームブックです。
 新紀元社から発売されていますが魔法使いディノンシリーズ(2014年09月17日と 2014年11月29日の冒険記録日誌参照)と同じレーベルです。ディノンは編集者の酒井さんの執念で出版された単発企画かと思っていましたので、ちょっと意外でした。今後もゲームブックの新作が出る可能性がありそうなので嬉しいですね。
 他にも先日ゲームブック業界(あるのか?)に関する嬉しい情報提供をいただきました。内容は書けないですが、今後に気長に期待しましょう。

 さてさて、紹介するバンカーズクエストですが、「銀行員ゲームブック」とも題されていまして、ゲームブックでは非常に珍しい、中堅銀行員を主人公とした現代ビジネスバトルものという題材を使っています。
 ひょっとするとこれは、ブーム当時のゲームブック少年達に向けたものでしょうか?今では主人公くらいの立場になっている人も多いだろうし。近年は新作ゲームブックといえば、名作の復刊か、新規ゲームブックファンを呼び込む低年齢向けが主でしたから、少し意表をつかれました。
 本書はルールは特にないシンプルな分岐小説タイプのゲームブック(ただし、過去のヒントからパラグラフジャンプする箇所が少しだけあり。)ですので、この作品が面白いと感じるかどうかは純粋にこの世界観が読者に合うかどうかと言えるでしょう。
 残念ながら山口プリンは小説や漫画でもこのジャンルは苦手でして、ちょっと遊ぶのが辛かったです。自分が正しいことをしたつもりでも、後で上司に叱責される展開は嫌な気分ですし、ましてゲームブックだと自分の選択の結果ですからなおさらです。要するに読書やゲームくらいは現実から離れたいのですよ。同じ現代が舞台でも、学園ものなんかは、今の自分にはもはやファンタジー世界くらい遠いので気にならないのですがね。
 とはいえ、客観的にみると本書は良く出来ていると思います。
 マルチエンディングですが、この手の作品によくある、いろんな事件や出来事に無節操に展開が拡散する内容ではありません。ある悪徳企業家が起こしている一つの出来事を中心に、主人公がどう関わっていくかによってストーリーが変わっていく構造になっています。
 悪事を公にできるのか、債権を回収できるか。アクションより戦略がものをいう世界観で、上司との関わり方もいろいろ変わってきます。私にとっては苦手とはいえ、普通の銀行員がこんな事件に巻き込まれることは現実にはないので、そんな意味では本書も日常脱却系ファンタジー物語なのかも。またセーラー服姿の美少女がルートによって登場しますが、他のゲームブックにはまず登場しないタイプの性格のヒロインなので印象的でした。

 どうしてもゲームブックはジャンルが偏りがちなだけに、このような作品がでるのはいいことです。このクオリティで、一つ別ジャンルもお願いしたいところです。個人的には山岳小説風ゲームブックとか時代小説風ゲームブックが読んでみたいなぁ。




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