冒険記録日誌
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2016年01月16日(土) 恐怖の神殿(イアン・リビングストン/社会思想社)

 ゲームブックを知って間もない小学生の頃に購入した作品です。
 当時のスーパーの駐車場でやっていた朝市にあった古本コーナーで、ゲームブックが一冊100円で大量に売られていまして、その中から買った一冊ということまで覚えています。(現在から見れば宝の山ですね。)そんなわけで思い出深い作品ではありますが、特に好きだったわけでもなく、ちゃんと最後まで遊んでいませんでした。クリアしたのは去年と、実に30年近く経過してからのことです。

 恐怖の神殿は有名なFFシリーズの一作品ですから、この日記を見ているような人なら既に内容はご存知かもしれません。
 一応説明しますと、オーソドックスなファンタジー冒険もののストーリーで、主人公はどくろ砂漠のどこかにある失われた都ヴァトスに潜入し、妖術師マルボルダスの野望を阻止するため、5つの竜の飾りを見つけ出して破壊するのが目的です。
 先ほど特に好きな作品ではないと書きましたが、本作は良くも悪くも典型的なリビングストン作品なのです。
 まず、いかもにファンタジー世界で冒険している世界観は大好きです。砂漠の中にある謎の都市を探索するという直球なストーリーだけで、ワクワクします。
 さらに他のリビングストンのゲームブックを遊んだ人なら、「運命の森」に登場した善の魔法使いヤズトロモがストーンブリッジの町を訪ねてくる冒頭部分の他、「盗賊都市」の舞台だったポートブラックサンドを道中に通過するなど、他作品とのリンクだらけでこの世界の広がりを感じます。
 ストーリー的にも「運命の森」の後日談とも思われるので、その気になれば運命の森でクリアした主人公のデータ(能力値と装備品)をそのまま使って、キャンペーンゲームとして楽しむのもありでしょう。
 あと本作だけの要素として、ヤズトロモが主人公に簡単な魔法をいくつか教えてくれるのですが、どの魔法を選ぶかは楽しいですね。攻撃系にしようとか探索に役に立つ魔法にしようとか、はたまた危機回避に備えた魔法はどうかとか。
 しかし、ゲームとしては不満だらけ。
 まず敵の戦闘力が強いです。クリアに必要な戦闘でも容赦がないので、技術点7の戦士なら遊ぶ前からゲームオーバー確定。技術点は6+サイコロ1個というルールから考えると、ゲームバランス無視の作りなんですよね。当時は大砂蛇に襲われたあたりで心折れました。
 続いてクリアにいたる道が狭く、正しいルートを少し外れるとすぐにクリア不能になります。これは序盤から容赦がなく、ノーヒントなことも多いので、どうしても死んで覚えろな攻略法になります。ゲームブックは自分が思うように行動できる小説という認識で遊んでいた私にとって、クリアに至るルートが一本道というのはゲームブックの魅力を潰しているように思えたのです。また、ポートブラックサンドで、あからさまに怪しい住民の誘いに乗り、襲ってきた暴漢を倒して得た戦利品がクリアに必要になるのですが、わざと愚かな行動を選ぶ必要があるというのが納得できないところでした。
 
 このような理由で長い間、本作に限らず手を引いていたリビングストン作品ですが、近年はまだ遊びつくしていない貴重なFFシリーズ作品ということで、ぼつぼつ再挑戦してクリアしています。
 初めからリビングストン作品は、技術点10以上のキャラで遊ぶものと心得れば、戦闘バランスの悪さもある程度は許せますし、なにより世界観の魅力は捨てがたいです。
 恐怖の神殿も子どもの頃は遊んで何度も死にまくっていたのに、正しいルートがわかってくる中盤からは、意外と詰まることなくクリアできてしまいました。
 本作の肝である5つの竜の飾り探しは、みんなわかりやすいところに隠されていますが、一方で死の使者というモンスターが仕掛けた死の文字が各所に配置され、そちらを発見すると体力を失うというペナルティがあります。死の使者の隠したものを発見しないように、5つの竜の飾りを探すというギミックは、だんだん死の使者を介したリビングストンとの知恵比べという気分になってきて、そこそこ熱くなれました。
 ルートが限定されるだけに、一度クリアすると今度は別のルートで再挑戦という風に遊べないので、今でも好みのゲームブックとはいえないのですが、決して出来が悪いわけではありません。むしろ当時の海外産ゲームブックの基本形として、仮に「昔のゲームブックってどんな感じだったの?」と人に聞かれれば、真っ先に紹介してしまいそうな作品です。


山口プリン |HomePage

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