冒険記録日誌
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2014年10月12日(日) もしもソーサリーがライトノベルだったら その9

 前回までのあらすじ。
 強力な王たちの冠をカクハバードのマンパン砦に住む支配する魔法少女が「ただの王冠には興味ありません」と奪ってしまった。このままでは旧世界は唯我独尊な彼女の手によって混沌に満ちてしまうだろう。
 あなたは王冠を取り戻すべくアナランドを旅立った。旅の途中に出会った少女アリアンナと(迷惑なだけだが)妖精ジャンを仲間に迎える。
 マンティコアを退治し、スヴィンの村を救ったあなたは、シャムタンティの山地を越え、カーレの街へさしかかろうとしていた。


 スヴィンの村で一晩の休息をしたあなた達は、感謝の言葉をのべ旅の祝福を祈ってくれる村人達を後にして、カーレの街に向った。
 あなたがこの街に来たことはないが、その噂はよく聞いていた。川沿いにできた港町として栄えているという歴史よりも有名なのは、靴紐一本をめぐって殺人がおこると云われるほどのその治安の悪さだ。この街にマンパンの魔王の部下がいないとしても、危険な街だというのは間違いないが、地理的にマンパンを目指す以上はこの街を避けるのは不可能だから仕方ない。今まで以上に気をつけるしかないだろう。
 丸一日歩き、日が沈みかけてきた頃になって、ようやくカーレの外観が見えてきた。ものものしい外壁で防護されている。
 さらに近づいてみると堅牢な門が街の入り口に設置され、何人もの門番が立って入場する人々を厳しく検問しているのが見え、あなたは意外に思った。しかし、このような犯罪都市でも支配者階級は存在し、ある種の秩序は存在すると聞いたことはあるので不思議ではないのかもしれない。
 カーレの貴族がマンパンの魔王と結託しているとまでは考えにくいが、万が一でも捕まると厄介だ。捕まらないにしても素直にアナランドから来たと申告して、敵に自分の動きを知らせる危険は避けたほうがいいとあなたは判断した。
 ジャンはむしろここで締め出されて残ってくれた方が助かるが、勝手に空を飛んで塀を越えるだろう。
 「で、どうすんだ。お人よし。そのまま門にいって通らせてださいというのか?」
 アリアンナが聞いてくる。試しにいいアイデアはないかと逆に質問したところ、「おまえの旅だろうが」と鼻を鳴らして正論を返されてしまった。
 「あたいはただの暇つぶしについてきた付き添い人だ。簡単な協力くらいはしてやってもいいが、それくらいのことは自分で考えな」
 あなたは少し迷ったが、背嚢から、なるべく見栄えのする着替えの服を取り出して着替えた、続いて魔法に使う小道具の中から金の装身具や、真珠の指輪など飾りになるものを選び出して身に着ける。カーレの貴族に会いに来た裕福な友人という設定だ。自分の簡単な変装が完了したころアリアンナが声をかけてきた。
 「いうとおりにしたけどさ。これでいいのか?」
 アリアンナには最初に出会ったときに着ていた家庭的な姿になっていた。おつきの女中というわけである。あなたでさえ最初は騙されたくらいだ。口の汚さがなんだが黙っていればただの美少女ではあるし、なんとか誤魔化せるだろう。
 「口が汚いとはなんだ。せっかく、おまえのくだらない案に協力してやっているのにさ!いっそ呪ってやろうか?いっとくがあたい呪いの言葉は本物だぞ」
 歩きながらもアリアンナはぶつぶつ言っていたが、そろそろ門番に声が聞こえてくるだろう。
 「落ち着きなさい。役に入るんだよ、わかったかね?アリアンナ」
 「……かしこまりました。ご主人様」
 こちらに目を留めた門番をチラリと見て、アリアンナはうつむきながら返事をする。もっと笑顔で!門番にも愛想良く!とあなたがさらに小声で注文を付け加えると、多少引きつり気味だったがニッコリと笑う。
 笑顔のまま「後で殺す」と小さくつぶやくのが聞こえたが、あなたは気づかないふりをした。
 果たして変装の効果があったのかはよくわからないが、検問は無事に通過でき、あなた達はカーレの街へ入ったのであった。


続く


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