冒険記録日誌
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2013年11月02日(土) サヴァイヴァル・ゾーン−デーモントライブ ゲームノベル−(友野詳・グループSNE/新紀元社)

 ネオゲーム文庫からまたまた新作ゲームブックの登場です。
 このレーベルからは5冊目のゲームブックですね。原作はスマートフォン向けバトルRPGで「デーモントライブ」というゲームなんだそうです。
 んー、スマホ向けゲームってだけでやんわり拒絶反応がでるのが、私が年を取った証拠でしょうね。考えれば昔でいうファミコンゲームブックと同じようなものなんですから、私が嫌う理由はありません。
 それに、原作を知らなくてもゲームブックとして楽しむことができる内容であればいいわけです。

 本書の世界観、つまり「デーモントライブ」の世界は独特です。
 舞台は現代の世界、もしくはわずかに未来の世界がベースで、「現有界」という人間がする普通の世界以外に「夢幻界」というものが存在します。
 この「現有界」は簡単にいうと、人間が語り継いだおとぎ話や昔話や歴史などで登場する人物や怪物などが、人間の想像力によって生み出された世界ということです。つまり、赤ずきんちゃんや金太郎やピーターパンが「夢幻界」に実在して生きているわけです。このファンタジーの住民は「夢幻界」で物語と同じことをなぞっているだけだそうですが、中には「現有界」にやってきて新しい自我をもち、人間達と生きるものや危害を加える者もいるそう。
 やー、妄想が具現化するとはなんだか賑やかそうです。キャタクターの強さは人間の想像力が多さに比例しており、つまり有名キャラクターほど強いようです。恐らくミッキーが最強でしょうが、いろんな意味で最強ゆえに本作に登場することはないでしょう。
 これだけ書くと「デーモントライブ」の世界は、なんだかメルヘンチックにも思われそうですが真反対です。例えば白雪姫なんか戦闘機に乗って登場します。他にもデモナイズといういわゆる変身パワーアップができたり、自分のデータを組織が記録していれば何度でも復活できる設定とか、ダークでサイバーな世界観といえるでしょう。

 そんな世界の主人公も夢幻界に生まれた一人です。美青年ですが記録喪失で何の物語から生まれたのかわからない状態。人間達と共存を目指す組織に属して、人間達を脅かす夢幻界の住民と戦っています。
 そこへ組織から主人公に指令がくだるところからゲームスタート。使命は同じ組織の新人、ゴルディロックスが指名の途中で行方不明になったので捜索すること。ゴルディロックスはイギリスの童話の主人公で、金髪の可愛い女の子。主人公をお兄ちゃんと慕っていたそうです。
 前半はロンドンの街並みで、情報収集や張り込みなど探偵のような行動となります。このあたりは普通のゲームブックの感覚ですね。少々失敗しても組織の仲間、無口な「ジャックと豆の木」のジャックとか、関西弁を使う赤ずきんちゃんに助けてもらうことができます。最初のプレイでは助けがこないシーンで失敗してしまい、準備不足のまま後半に突入してバッドエンドとなりました。
 うまく行けば敵の親玉に会うところで前半終了です。
 後半は敵の作り出した夢幻界の中をさ迷いながら自分の本当の名前を見つけ出し、親玉と対決します。つまり自分探しの旅です。途中で登場するヒントを元に、何の物語の主人公か考えるのも楽しいでしょう。私は最初のバッドエンドで何の主人公か、一部がわかってしまってましたが。
 不条理な夢幻界の世界だからか、同じ展開を何度も戻って繰り返すことができるのが特徴で、じっくりやっていれば全てのヒントを回収できるのでクリアは簡単でした。
 ただ、デーモンを召喚する選択肢では読者に一般的なファンタジー小説の知識がないと、ゴーレムやサキュバスがどんな魔物なのかわからないので困るでしょう。この本を読むくらいの人なら大体知っているとは思いますけどね。

 続いてゲーム性の話しをしますが、ルールはこのレーベルお馴染みのものです。
 つまりストーリーのポイントになると、そのシーンで使用できる6つの品物や情報の中から、ふさわしい2つを決め使う順番を決めてパラグラフジャンプするのです。正解なら進みます。サイコロの使用や能力値や所持品の設定はなく、普通の本を読むくらいに気軽に遊べつつ、ゲーム性を出したシステムということです。
 ただ、このレーベルはこのシステムを基本に進めるつもりでしょうか?ファイティングファンタジーシリーズのように、レーベルを一本の基本ルールで統一するというのがいけないわけではないのですが、このシステムがそこまで魅力的かというと、私は正直もう飽きたというのが本音ですね。
 とはいえ、本作は不正解が続いても簡単にはゲームオーバーにならず、失敗したら失敗したなりに面白い展開が味わえるようになっており、ゲームブックとしての完成度は同レーベル内でさらに高まっていると思いました。
 本書を楽しめるかどうかは、このゲームの世界観が気に入るかどうかでしょう。気に入ったならオススメの作品です。
 不満点は、幻影のゴルディロックスが全裸で「お兄ちゃん…」といいつつ迫ってくるシーンに、イラストがついてないことです。おかしいと思います。(キッパリ)

 しかし、今回の主な舞台はイギリスでしたが、これが日本ならどうなんでしょうね。日本人の妄想力が生み出す「夢幻界」の住民は独特だと思いますよ。
 例えば学園では世界を改変する力を持つ自己中な女子高校生の他に、お兄ちゃんが大好きな妹が大勢いて、会社では美男子同士のカップルが蔓延するという、大変カオスな状況になっていると思います。7つの珠を集める尻尾の生えた小僧が走り、世界はいつも滅亡の危機を迎え、野球やテニスの試合も人間離れした技が飛び交い、命がけになりそうです。
 それはそれで楽しいか。そんな世界が実在したら俺も自分探しの旅をするとかいいつつ、飛び込んで戻ってこない人達がいるかもしれませんね。


山口プリン |HomePage

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