冒険記録日誌
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2013年09月14日(土) 癌の雄叫び  メディカルアドベンチャー(若菜大輔/金芳堂)

 メディカルアドベンチャーシリーズの一冊「癌の雄叫び」を読みました。 以前、ミクシィでこの本を読んでみたいといったら、「このシリーズは医学知識がない人には意味がわからない内容ですよ」と、コメントをもらったのですがまさにそのとおりの内容でした。
 主人公が医師で患者を治療する経過をゲームブック風味に表現しているものの、かなり専門的な学習本なので、医療関係者か医学生でもないとわからないような医療用語が次々とでてきます。
 本書では主に子宮頸がんを扱っている関係上、女性器の構造について長々と解説が続くくだりがあるのですが、これがまた完全に医学書風で色気のイの字も湧いてこない雰囲気でした。
 医学的内容については、1991年とゲームブックブームの末期に発売されたとはいえ、もう20年以上前の作品ですから、おそらく現在とは違っている部分も多いでしょうね。子宮頸がんをテーマにしながら予防ワクチンの存在に一切触れていない点もそうですし、がんの告知についてが作品中でかなり重要視されている作りに社会的論争になっていた当時の世相を思い出します。

 
 ゲーム自体は君はこの症状をみてどう判断する?などといった問題と回答ばかりで、ゲームブック的なストーリー分岐の選択肢はかなり少ないですが、そのたまにある選択肢が、例えば患者にがんの告知をするべきかとか、患者に諦めずに治療をすすめるべきか緩和ケアに方針を変えるべきかとか、内容が重いです。
  序盤こそ上手に進めば完治する軽度の患者が相手ですが、終盤は末期癌、しかも主人公の恩師が患者でどうやっても最後は死んでしまうという、容赦のない展開です。
 しかし、苦しい思いをしながらも恩師の葬式に出席し、故人を前に医療の道への研鑽を誓う主人公というエンディングは、ブラックジャックのような奇跡は存在しない医学界に咲いた小さな希望という感じで私的にはよかったです。
 その主人公とは、君自身。つまり誓っているのは、本書の読者対象である医学生自身の姿なのだ!という解釈は深読みしすぎでしょうか。

 
 それにしても、こんなに真面目な内容なのに、「癌の雄叫び」ってタイトルのインパクトが凄い。正直それだけで買っちゃった本です。最強の出オチゲームブックです。
 このシリーズは他も「鮮血の瀝り」だの「恐怖の痙攣」だのいいセンスした名前がついてます。
 表紙は乱暴な字でタイトルが書いてあるだけというシンプルなものです。昔見た記憶では人面疽みたいなやつが声をあげてるようなイラストが表紙を飾っていた気がしていたのですが、勘違いだったのかな。「2002年暗黒霊の復讐」(桐原書店)や「悪夢の幽霊都市」(祥伝社)あたりの表紙と混同したのかもしれません。
 でも、どうせならそこまで突き抜けてほしかった気もするなぁ。


山口プリン |HomePage

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