冒険記録日誌
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2013年08月05日(月) ミラクルタイムアドベンチャー1 白銀の騎士と恐竜のなぞ(藤浪智之/ポプラ社)

 タイトルと出版社から想像がつくかもしれませんが、本書は児童向けゲームブックです。
 児童向けゲームブックは、ゲームブックブームの頃にも何冊かありましたが、これは最近刊です。
 新刊のゲームブック。実にいいですねぇ。
 古本にも味はあるでしょうが、私の場合は古本屋めぐりをするのも、絶版の本を発掘するためであって、同じ本を買えるものならば真新しい本を購入して読む方が好きです。
 今思えば、ファイティングファンタジーシリーズやスーパーアドベンチャーゲームブックの真新しい一冊を買っていた頃が、私が一番ワクワクして本を購入していた記憶ですね。

 しかし、ゲームブックとはいえ子ども用となると、普段は買う時に不安をよく感じます。つまらなかったら嫌だなーと。
 極端な例をあげると、ほぼ一本道で進むかゲームオーバーの二択続きというゲーム性だったり、ストーリーや文章が適当というかしょぼい内容だったり、そもそも絵本にパズルがついただけでこの冒険記録日誌でいうゲームブックとは別物だったりする作品は、よくありますから。全て実際に経験したものです。
 最後のはともかく、1・2のパターンのものは「子どもなめるな!」と言いたい。絵本など他のものでもそうですが、児童向けでも良い作品というものは、大人も面白いと感じるものである、というのが私の持論です。
 ただし、藤浪智之さんは少し前にも、「バニラのお菓子配達便!」のシリーズを角川つばめ文庫で出されていますし、過去にもだんしょん商店会や、雑誌ウォーロックにゲームブックを掲載していたこともあります。
 その独特のほんわかした世界観は、読み手によって好みが分かれるような気もしますが、少なくともゲームブックとして及第点が保証されているようなもので、今回は安心して注文できました。

 結果は満足。パラグラフ数は100に満たないルールも簡単な作品ですが、ゲームブックとしてバランスよくできています。
 内容は小学生の仲良し3人組が、タイムトラベルをして別の時代の事件を解決しようとするストーリー。
 なにやら藤子・F・不二雄の漫画「T・Pぼん」や、学研の雑誌にある歴史の勉強を連想するような設定です。
 初めてゲームブックをふれる子どもを対象に、ゲームブックがどうゆうものかの軽い解説もあり、読者ターゲットが絞られているだけあって、先日紹介したテキサス・ゾンビーズなどの、グループSNEが出しているネオゲーム文庫のシリーズより、とっつきよさではこちらが数段上でしょう。

 さて、短編ですし、詳しく書くとネタバレしそうなのですが、遊んだ感想を少しだけ書きます。
 冒険に出る小学生3人組ですが、利発そうな女の子アスカと、ガキ大将タイプの男の子タケル、そして主人公のユウキ(君自身)となります。
 主人公はイラストを見ると、男の子っぽいですが、ボーイッシュな女の子にも見えなくもなく、読んでいてもわかりませんでした。読者が感情移入できるようにあえてそうしてるのかもしれません。
 本書のタイムスリップの目的地は、中世ヨーロッパ。剣と魔法のファンタジーのイメージに近い世界ですね。
 最初に田舎から出てきた少年騎士ジャンと仲良くなった3人は、彼の案内で本物の城にたどり着きます。
 ここで城のマップを見て、気になる場所になるパラグラフ番号へ進むという双方向システムになります。
 台所に潜入して昔の食事を味わったり、城門の構造を知って感心しながら中世の世界を見学するところは、まるで学習マンガみたい。
 友達になったジャンが馬上試合に出場するというので、甲冑に着せるのを手伝って応援します。見事勝ち残った(ちなみに甲冑の着せ方を間違えると、ジャンは負けてみんなで安宿に泊まる展開へ進む)ジャンと一緒にお城のパーティに参加し、翌朝お城を出発して目指すはなんとドラゴン退治!
 なんと!現実にドラゴンがいるのか!?って、書きたかったけどタイトルでネタバレしてますね(汗)
 後半は分岐小説風の一方向システムですが、偶然発生したタイムトンネルからやってきた恐竜に、少年騎士と3人が立ち向かう展開があったかと思えば、別のルートでは恐竜を利用する悪者を成敗するとか、展開が変わることがあり。エンディングも複数あります。
 難易度は低く、前半はマップを総当たりで調べ、後半は今までちゃんと読んでいれば答えられる問題に間違えなければ、そんなにゲームオーバーにはならないとは思います。
 欠点として、双方向部分の前半はともかく、割とあっという間に終わってしまう後半が残念といえば残念。少ないパラグラフ数で、マルチな展開を用意しているので仕方ないことではありますが。
 

 ただし、同時発売された同じ3人が登場する2巻「忍者軍団と吸血鬼のなぞ」では、若干パラグラフ数が増え、クリアにかかる時間が少し伸びているので、この不満点は解消されています。
 ストーリー的には独立しているので、どっちから先に読んでも問題ないですが、2巻の方が難易度がやや高いので、1巻から楽しむのがお勧めです。
 シリーズものとして3巻以降の発売もありえるかもしれません。実現の為にも売上に協力してあげたいような気もしてきます。
 ゲームブックブーム当時からのゲームブックファンの方々、お子さんに買ってあげるのにちょうどいい感じですよ、一冊いかがですか?


山口プリン |HomePage

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