冒険記録日誌
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2013年06月16日(日) |
都会のトム&ソーヤ ゲーム・ブック 修学旅行においで(はやみね かおる/講談社) |
本書は人気の児童書シリーズ「都会のトム&ソーヤシリーズ」のゲームブック版です。 去年本屋でぶらぶら本をあさっていると、児童書もコーナーで当時新刊だった本書がポンと売っていたのでビックリして買ってきたわけです。 そのときにすぐ遊んだのですが、今はその本が自宅の本の山のどこかに埋もれているので、記憶だけで感想を書いています。どこか間違っていたらごめんなさい。
さて、ゲームブック版を買った時点では、都会のトム&ソーヤは読んだことがありませんでした。 シリーズの存在は知っていたのですが、児童書なのであまり関心はなかったのですね。同作者の別のミステリー作品を読んだことはありますが、そちらがちょっと好みでなかったせいもあります。 ちなみに今は、ゲームブック版を遊んだあと、文庫版で本編も2巻まで読んでいますよ。 シリーズの内容を単純にいうと、サバイバルに優れた内藤内人と大富豪で秀才の竜王創也の中学生コンビが、現代版トムソーヤの冒険のような活躍をする話です。侵入した夜のデパートで謎の追跡者から逃げ回ったり、罠の仕掛けられた廃ビルの中を登って行ったりと、子ども心をくすぐるようなシュチエーションの冒険が多くて、小中学生の頃に出会っていれば夢中になって読んでいたと思う小説です。
さて、ゲームブック版の話しに戻すと、本書は結構凄い作品ですよ。 原作つきのゲームブックというのは、よくあるものですが、これは原作者のはやみねかおるさん自身が執筆しているのです。新人が書いた二次創作的な外伝作品とは扱いが違います。 これに匹敵するのは、宮本恒之さんが書いたザナドゥのゲームブック版くらいじゃないでしょうか。 しかも、ゲームブックでは修学旅行を題材にしています。学園ものとしては、これ以上なく美味しい修学旅行というイベントを、惜しげもなくゲームブックに使うなんて本当にいいの?と心配になるくらいです。
興奮するのはこれくらいにして、内容と感想をいいますと、主人公はオリジナルキャラであり、あなた自身。内藤内人や竜王創也らと同じ学校へ通う男子中学生です。 そして修学旅行に行くことになったあなたが、一緒に行動することになったグループのクラスメイトというのが、内藤内人と竜王創也はもちろん、他にも堀越美晴を始め本編のレギュラー陣ばかりというファンにはたまらない設定です。旅行先は修学旅行の定番中の定番、京都です。 修学旅行初日の朝からゲームは始まり、旅行中に挑戦してきた栗井栄太(本編で対決した謎のゲームクリエイター集団)の出す謎を解いて、指示されたお土産を手に入れるのが目的。旅行を終えて栗井栄太に旅行のお土産を渡したらエンディングです。 こう書くとすごく普通みたいですし、実際後から読んだ小説本編と比べても地味目な冒険です。というか、こんな挑戦してきた栗井栄太は暇人だな。 旅行中に発生する事件というのも他愛のないものが多いです。バッドエンドは存在しますが多くはなく、集合時間に遅れて置いてけぼりとか、悪ふざけがすぎて水道で旅館の部屋を水浸しにしてしまい、旅行から強制送還とか現実的にありそうな内容ですし。 ただ地味といっても、力量のある原作者の執筆だけあって、十分に読ませる力はもっています。ホテルでの夜なんていかにも、小・中学生の修学旅行みたいなノリと展開でにやついてしまう。どこに旅行しても殺人事件が発生する某小僧名探偵みたいな非現実感よりも、こちらの方がリアルな修学旅行気分が味わえて案外良かったかもです。 原作ファンとしての楽しみ方としては、あなたという一般人の目をとおして、普段の内藤内人や竜王創也を見ることが出来る点でしょうか。 人付き合いの嫌いな竜王創也は修学旅行中も一人で本を読むなど皆と距離を置いてますが、行動が一人だけ浮いていたり、竜王ファンのクラスの女どもが騒ぐので、何かと目立っていますね。 逆に本編の主人公である内藤内人は、ゲームブックの主人公であるあなたに、何かと気さくに話しかけてきますが、原作を知らないと普通の人みたいでまるで印象に残りません。本来は、謎のお婆ちゃん仕込みのサイバイバルテクニックで凄い活躍をする人ですが、平和だと力の発揮場所が限られるからでしょうかね。原作を読んでから改めてゲームブックを読み返すと、水道の蛇口に細工したり即興で役に立つ小道具を作ったりと、要所要所でさらりと小技を使っていたのがわかりますが。
ゲーム的なルール面でいうと、能力値の存在はないですが、所持品管理は必要です。特にエンディングへの分岐の鍵となるお土産は、それぞれ番号が振られているので、メモくらいはしたほうがいいでしょう。 謎のメッセージを解読しては、清水寺などの観光名所に向かい、正解していればさらに隠されたメッセージを見つけ出して、栗井栄太の求めるお土産がわかるという繰り返しです。 パズル要素が強い作品ですが、ゲームブックとしての出来も悪くなく、大まかな流れは一本ですが、細かい展開はいろいろ変わるので、繰り返しプレイにも耐えられます。真のエンディングというのも存在しますが、あんな指摘をされるオチとは思わなかったよ。 嬉しいのは、はやみねかおるさん自身がゲームブックファンみたいで、後書きでゲームブックそのもののPRに努めてられていたこと。ゲーム中でも、パラグラフ14でドラゴンファンタジー(グレイルクエスト)のことを語っちゃったりしています。 これを読んだ都会のトム&ソーヤファンが、他のゲームブックも遊んでくれるといいですね。
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