冒険記録日誌
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2009年07月16日(木) |
ウォーロック 第51号 1991年3月 |
巻頭特集記事は「1990年ストーリーゲーム総括」。要するに1990年に発売されたゲームブックについての年間特集です。 ウォーロック創刊以来、ずっと続いてきたゲームブック年間特集もこれが最後となっています。 この年に発売されたのはゲームブックの冊数は、年間リストからTRPGリプレイ本などを除いて数えてみるにおよそ40冊。どんな作品かタイトルを挙げてみると、エニックス文庫からドラゴンクエスト4(1・2巻)、社会思想社から「奈落の帝王」「オーバーキル城」「ゲームマンの挑戦」「送り雛は瑠璃色の」、創元推理文庫から「夜の馬」「ティーンズ・パンタクル」「ネバーランドのカボチャ男」、富士見書房から「魔術師の挑戦デュエル・マスター」「ウィザーズ・クエスト」、双葉社からは……これは30冊近くあるので割愛。 コラムは「ゲームブック辛口レビュー」を書いている竹谷明さんが書いていますが、なかなか興味深いことを書いているので、これを端折って書き出してみます。
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昨年のゲームブック界はたいへん話題に乏しい一年だった。社会思想社、創元推理文庫、富士見書房からのゲームブックの出版数は激減。各社とも代わりにTRPGを主眼にしており、それぞれT&T、ドラゴンウォリアーズ、ソードワールドを売りだしている。しかし、創元推理文庫はこれによって身動きできない状況になったのではないだろうか。ゲームブックコンテストも尻すぼみになってしまい、今後はもうコンテストは企画されないだろう。 そんな中でも、ただ一つ気を吐いている双葉社のハイスペースなゲームブックのリリースには頭がさがる。だが、「昨年を代表するゲームブック」となると、どうしても双葉社以外の作品から選ぶことになってしまう。双葉社にも秀作はあるが、ファミコン冒険ゲームブックなどのいわゆる“原作もの”のゲームブックに方向転換が必要な時期にきているのではないか。コンピュータゲームは進化を続けストーリーも長くなり、ゲームブックに移植するとき無理矢理一冊に収めようとするあまり、ゲームブックならではの余裕がなくなっているのではないか。 90年は大手サークルの休会もあいつぎ、ゲームブック界の弱体化は誰の目にも明らかである。しかし、だからこそ突破口の模索のための挑戦は行われている。イラストを中心に据えた「ウィーザズクエスト」、一つの世界を広げていく「魔界物語シリーズ」、ボードゲームと組み合わせた「ネバーランドのカボチャ男」、心をイメージに結びつける「夢草枕、歌枕」(文庫版“送り雛は瑠璃色の”に収録)、手軽さを優先した「ドラゴンクエスト4」、恋愛ものの「ペパーミントシリーズ」など。それぞれ、ゲームブックにしかできないこと、ゲームブックだからできること、を考えた作品である。 これらの試みはまだまだ大ヒットには至っていないが、条件さえそろえばゲームブックが注目をあつめる可能性も存在するのである。
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私の記憶ではこの年のゲームブックはまだ健在で、本屋の店頭にはゲームブックコーナーがあった気がします。もちろんブームというには出版点数の激減はあきらかでしたが、ウォーロックの暦年の年間総括をみる限り、世間一般まで猫も杓子もゲームブックという時代は1986年で、ウォーロックが始まったころまでです。すでに1987年にはゲームブックの出版社は半減していてゲームブックブームはとっくに去っていたと解釈してもいいでしょう。じゃあ、1987年以降はなんなのかというと、ある程度ゲームブックというものがジャンルとして定着していた時代ということだと思います。(注) 傍目にもはっきりわかるほどにゲームブックの存在が消えたのは1991年です。この年に発売された作品は「パンタクル2」(鈴木直人作品最終巻)、「天空要塞アーロック」(日本版FFシリーズ最終巻)、「嘆きの壁を越えて」(T&Tソロアドベンチャー最終巻)などで、次々に打ち切られていった様子が伺えます。双葉でさえも「戒厳令のトルネイド」(ルパン三世シリーズ最終巻)など1991年でゲームブックの生産は打ち切りになってます。つまり一斉に全てが消えていったわけです。 創元推理文庫はもう少し頑張って1992年半ばに「第七の魔法使い」と「ギャランス・ハート」を出していますが、これは今の創土社のゲームブックのように注文しないと手に入らない状態になっていまして、当時の本屋の店頭でこの2冊を見かけたことはなかったですね。この後もゲームブックの新刊を出したのはエニックス文庫くらいでしょうか。 ウォーロック自体もここからあと1年ほどで休刊になっていったことを考えると、まるでゲームブックの運命に合わせるように、といってもいいかもしれませんね。
注: もっとも私が普段の冒険記録日誌で“ゲームブックブーム当時”と書いているのは1991年までを含んだ意味です。なぜなら一々、「ゲームブックがジャンルとして定着していた時代〜」なんて書くのはめんどくさいから。
話しを切り替えて、他のコーナーの感想をざっと書きます。 この号から「めるへんめーかーのゲーム大好き」という漫画連載が始まっています。漫画家はタイトル通り、めるへんめーかーさん。作者自身のゲーム体験記エッセイとでもいった内容でして、前回のTRPGリプレイ漫画連載とはうって変わって面白い。楽しんで書いてるって感じがしますね。 もう一つの新連載は「ファンタジークリエイターレビュー」。毎回、ファンタジー作家をゲストに呼んで対談しようというコーナーで、第一回は「グインサーガ」を執筆していた栗本薫さん。グインサーガはこの頃が一番面白かったなぁ。今年の春にお亡くなりになって未完の大作になっちゃいましたね…。 「ゲームブックの出来るまで」は、井上尚美さん自身の作品「プロ野球ファミリースタジアム ナムコスターズの挑戦」を見本にフラグ処理などの話しをしています。この作品を製作したときの気づきや反省など交えていて、今までありそうでなかった、ゲーム製作の過程が記録された貴重な資料といえるかも。 AFFリプレイは「運命の森」が舞台。このシリーズは書籍化されていて、文庫版を購入した方のサイトではあんまり良い評価が書いてないことが多かったのですが、実際に読んでみると普通のドタバタコメディ系リプレイ小説で、別に変な内容ではなかったです。これを不満に感じるとすれば、ゲームブックにあった硬派な雰囲気とのギャップの違いかな。FFシリーズのファンの中でも、原書がどうとかこだわる人は本当にこだわりますからね。私はボビージャパンのラノベリメイク版とかも楽しめる性質なんで平気ですけど。 「タイタン世界の歩き方」最終回。前号で旧世界大陸に到着したロッコちゃん、ついにマンパン砦でクライマックスです。この企画が始まったときは、ギャグみたいな物語かなと思っていたけど、意外とシリアスに物語が展開してました。ミニマイト族のカイトって妖精が予想外の大活躍ですが、こいつの大阪弁はなんか浮いていたなぁ。 「エンサイクロペディア・がらくた/順不同」。摩由璃さんの長期連載コラムですが、今号のテーマは「中世食事情」となっています。現実にあった中世ヨーロッパの様子を紹介するという話題は大好き。こうゆうのを読んでからファンタジーゲームなどを遊ぶと、冒険者が飲んでいるスープも、これは古い豆のスープだろうか?村が貧しそうだから香辛料は使ってない?とか想像力にプラスアルファされて良いのですよ。
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