冒険記録日誌
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2008年07月15日(火) |
サムライの剣(J.トムソン・M.スミス/社会思想社) |
今回はファイティングファンタジーシリーズ(以下FFシリーズ)の一作品を紹介します。 FFシリーズは有名ですし、冒険記録日誌をわざわざ閲覧するような人なら、「サムライの剣」も怪しい和風ファンタジーゲームブックとして知っている人は多いでしょう。我ながらですが、久しぶりにそこそこメジャーな作品の話題になりましたねぇ。
内容は、八幡國を治める将軍が闇将軍イキルに国を統治する力のある「鍔鳴りの太刀」を奪われた。そこで将軍指南役である主人公に「鍔鳴りの太刀」を取り戻す勅命がおりたという、世界観を別とすれば割と王道もののストーリーです。 またゲームが始まった直後に現れる街道の分かれ道の分岐から、終盤に登場するイキルの本拠地(鬼軽城)までは、まったく別々の道を通るようになっています。登場する敵や地形が違うだけでなく、鬼軽城で必要になるアイテムや情報もまったく別のもの。ようするに使命の内容と終盤を除けば本書には2つのシナリオが収録されているようなものでして、他のFFシリーズに比べるとそのぶん一つの冒険が短めですね。 どちらのルートにせよ、他のFFシリーズ同様に難易度は高めです。
この作品といえば、まずはゲーム性云々よりも日本の江戸時代を思わせる世界観でしょう。厳密にはこのゲームの舞台は、タイタンというファンタジー世界の中にある「八幡國」という国の出来事なので日本とは似て非なるものなのですが、河童や細身の姿をした東洋風の竜など、日本古来の妖怪が登場することや、冒険中は常に武士道を重んじた行動を主人公が求められる点で、日本を意識された世界とみて間違いないです。 特にろくろ首の村のシーンなんか、小泉八雲の怪談そのもの。妖怪だけでなく、私的には浪人にして剣術の達人“銀斎“とか、命を助けられて改心し主人公の部下になる“茂市”なんかが結構好きな登場人物だな。 時々、西洋っぽいキャラクターが混じっていたり、建築様式の一部や、悪大名や巫女さんの衣装が日本というより中国風なのですが、あくまでここは「八幡國」だし細かく気にしない方がいいかも。むしろ日本人読者にはこのギャップというか「外国人がなにか勘違いしている日本」的要素まで楽しめて、二重にお徳な作品です。
ゲームルールは通常のFFシリーズの基本ルールに準じていますが、本作のみの特殊ルールとして、主人公はゲーム開始前に剣術以外の特技を、弓術・居合術・猿飛びの術・二刀流の四種類から一つだけ選ぶことができます。これらの特技は戦闘中の手助けになるものから、ある特定のシーンで役に立つものなど、効能はさまざまです。実際に遊んだ感想としては、ゲーム全体から見るとどの能力が特に有利になるというのは無く、バランスがとられているので、ここは趣味で選んでいいかな。 また通常の技術点・体力点・運点の他に、名誉点という能力値が設定されていまして、この数値は主人公が武士道に対して忠実か否かの行動を取るたびに上下するようになっています。 この名誉点は直接の戦闘能力には結びつかない能力ですが、数値が高いと冒険中に出会う一部の人物や妖怪から協力を得られるようになるなど、間接的に冒険が有利になるのです。そして逆に名誉点が下がり続けて0になってしまうと、パラグラフ99に飛び、そこでなんと主人公は今までの不名誉な行いを恥じ、切腹して果てるのでした。いやぁ、やっぱりいいルールですね。武士といえば腹切りという、南米人の曲解した日本像を具現化しているようで素敵です。 ただ、この切腹ルールは「サムライの剣」の象徴として、読者の間ではつとに有名なのですが、実際にゲームをしていて名誉点が0になるという状態には滅多になりません。むしろ名誉点を常に減らすつもりでプレイしてもなかなか達成できません。何度も狙ってみてやっとパラグラフ99に到着したときは嬉しくなったくらいです。(笑) もし興味が湧いたら、切腹を目指してプレイしてみるのも一興ですよ。ヒントを一ついうと、2つのルートのうち片方のルートでは切腹することは完全に不可能でした。よかったら挑戦してみて下さい。
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