冒険記録日誌
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2003年02月16日(日) バック・トゥ・ザ・フューチャー(安田均・TTG/創元推理文庫)

タイトルを見てわかるように、スピルバーグの映画をゲームブック化した作品。
原作については大半の人が知っているでしょうが、一応ストーリーを説明します。
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マッドサイエンティストっぽい科学者ドクの作ったタイム・マシーンで30年前に戻ってしまった主人公マーティ。
彼はよりにもよって、高校時代の父と母の出会いを邪魔してしまい、母親から好意をよせられるはめになってしまったのです。
マーティはなんとか父と母を結びつけ、自分が元の時代へ帰る方法を探し出すことができるでしょうか。
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このゲームブック版では、読者がマーティになって話しを進めるわけですが、この作品は私がゲームブックを知らない人に必ず最初にお勧めする一冊です。
それは原作映画を見たことある人なら、スムーズに物語に入り込めるうえに、ルールも運点の管理とサイコロ一個を振るだけ。誰でも抵抗なく、楽しむことができるからです。
読んだ人の中には「映画と同じように進めたらクリアできたから簡単すぎる」という感想を言う人もいましたが、そうしたら「ちっちっ、違うのだな。映画にない行動がいろいろできるのが面白いのよ」と言ってあげます。
この作品は本当に脇道がよく作られているのです。
両親に自分の正体を明かす選択肢があるのはもちろんの事、警察にタイム・マシーンを没収されて取り戻すオリジナルエピソードや、マーティがビフを殴り倒して、ビフが転校してしまうという原作とまったく違う展開まで用意されているのです。
笑えるのは、お母さんの誘惑に負けて一緒に一晩すごすと、現代に戻ったときにお兄さんが一人増えていたというエンディング。ブラックなオチが効いていてステキです。
そして簡単ながらルールにある運点の存在が、普通の分岐小説とこの作品の明確な違いを出しています。
マーティの行動の成否判定には、サイコロを使うのですが運点を消費すれば運命を好転させることができます。またもし致命的な選択ミスを侵しても、運点が残っていれば途中からやり直すチャンスがあるのです。運点はその使いどころを考えることでゲーム性を作り出しているのです。

もう一つ、素晴らしいと思うのは、これがゲームブックでしかできないゲームであること。
コンピュータゲームでは、このテンポよいストーリーは再現できませんし(ただしサウンドノベルなら可能性はあるが)、TRPGでこの作品を再現しようとしても、プレイヤーの行動を一部強制しないかぎり物語が成立しません。父と母の運命的出会いを邪魔するシーンなど、ゲームブックならその箇所に選択肢を作らず、小説のように進行させるだけでよいのです。
本書はゲームブックを文化として定着させる一つの可能性を見出していたと私は思っています。
こんなわけで私のお気に入りの作品なのですが、安田均が自ら後書きでこれは実験作品と書いているように、このタイプのゲームブックは意外と少ないです。
私が思い出すのは二見書房の「グーニーズ」くらいかな。なんだか残念な気がします。


山口プリン |HomePage

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