冒険記録日誌
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2002年08月06日(火) |
展覧会の絵(森山安雄/創土社・創元推理文庫) その3 |
<続き> それでこの作品がなぜ私のお気に入りかと言うと、まずは主人公の最大の武器が琴という設定。 恐ろしい魔物を退散させ、人の敵意を溶かす魔法の音楽。きったはったのファンタジーとも違う、絵になる光景が読んでいると次々に想像できます。 プロローグからすぐにゲームが始まり、話しがいくらか進んだ後にルール説明がある演出。難易度やテンポのよい展開も理由の一つです。 しかしなんと言っても、最大の印象はラストでしょう。 ネタバレになるので書きませんが、通常のゲームブックは終わり方があっさりしている中、本書の最後は泣けます。 ゲームブックで泣けた経験はこれが唯一のものでした。逆に言えばこの作品が名作と呼ばれるのは、感情移入が容易なゲームブックの魅力を十二分に引き出した結果じゃないでしょうか。 なんだか書いていてすごーーーく、オーソドックスな感想になっちゃいました。 まあそれだけ素直に楽しめたということです。
さて創元推理文庫版と復刊した創土社版との違いですが、基本的に内容の変更はありません。 大きな変更は装丁と挿し絵。本のサイズの事もさることながら、挿し絵のイラストレーターが、米田仁士さんから伊藤弥生へと変更しています。 見比べると米田仁士さんの絵にくらべ、伊藤弥生さんの絵はタッチが柔らかい印象です。いずれにせよ新旧版共に甲乙つけがたい出来栄えですけどね。 それから創土社版には組曲“展覧会の絵”についてコラムが追加されています。より本書と原曲の密接な繋がりを感じとれる事でしょう。 あとは後書きが新しくなったり、新しい小冊子がついている所かな。読んでいるとニヤリとしてしまいました。 それにしても小冊子で話題がありましたが、平田さんの新作を読める日はくるのでしょうか。 そのためにも、まだ買ってない人は売上げに協力して読んでね。絶対面白いから。と、締めくくっておきます。
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