冒険記録日誌
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2002年07月24日(水) |
魔城の迷宮(奥谷晴彦・刀根広篤/二見書房) |
普通のゲームブックとは一味違う作品。 この本は砂漠にたたずむ迷路の町“ルドス”に訪れた旅人となり、ルドスのどこかに隠されているといわれる幻の秘宝を探し出すという設定である。本書の特徴はパラグラフの大半が迷路の一枚絵になっていること。 主人公には装備や能力値の設定もない。すべてが迷路上になっているルドスの町並みを、読者はただひたすらに、さ迷うゲームなのだ。 一言で言えば本書の印象は、巨大立体迷路ゲームを本にしたような感じ。しかしそれだけでは単なる退屈な迷路本になってしまう。 そうならないのは、このルドスという町に、地元住民の生活臭がただよっているから。 彼らは宝捜しなどにはあまり興味がなく、ただ自分の生活を営んでいる。 下の水場にいけば女達が洗濯物を洗っている。ある部屋では住民同士がヒソヒソ噂している。礼拝場で人々が拝み、広場では陽気な音楽を鳴らして楽しむ。市場では生活用品の買い物に市民がごった返している。 素朴な絵と簡素な文章で表現されたそんな町を、読者は宝の手がかりを探しながら歩いてゆく。 散策しているうち移動の近道などを覚えて、嬉しくなっている自分に気がつく。この町の一員として溶け込んだ気持ちになる。 依然として宝は見つからず、あてもなくルドスを歩く。それが楽しい。 魔物と戦ったり、大事件が発生するわけでもないが、しっかりと読者がその世界に入り込める本。 ゲームブックの一つの完成形だと思う。
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