ぐっどないとみゅうじっく
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2003年01月20日(月) |
言語のない会話〜JOHN ZORN'S COBRA『シカラムータ部隊』@渋谷La.mama〜 |
テニスのサーブがなかなか決まらない夢を見る。テニスなんて高校生の時、町内会のサークルでおばちゃんに混ざりながらちょこっと齧っただけなのに。誰か夢判断して頂戴。
夕べはJOHN ZORN'S COBRA東京作戦『シカラムータ部隊』@渋谷La.mama。今回のは通常の演奏ではなく「COBRA」という1984年にジョン・ゾーンが作曲したゲームの理論を応用した即興演奏の形をとる。プロンプターと呼ばれる指揮者的人物が出す19枚のカードのサインによって演奏が行われる。演奏者からもプロンプターに注文が出来、それらによって大きく演奏も変わっていく。メンバーは大熊ワタル(cl)、太田惠資(vl)、桜井芳樹(g)、さがゆき(vo)、関島岳郎(tuba)、坂本弘道(vc)、海野知子(trumpet)、渡辺明子(trombone)、沢田穣治(b)、川口義之(sax)、吉田達也(ds)。プロンプターは巻上公一(ヒカシュー)。 11人のメンバーがステージに揃ったところで、代わる代わる音を出して行く。客席側からはサインを出すカードはわからない。正確に言うと、見えても数字やアルファベットが書いてあったりするだけで何も分からないのだ。例えばAひとりが演奏している途中に、他のメンバーが挙手をする。Aがその中で仮にC、F、Hと選ぶ(手が離せないため目線やあごで)と次の小節からはその4人での演奏がはじまる。それが数小節で入れ替わり、その次にはC、F、Hの人たちとB、D、Eが交互に演奏したりする。そのパターンが3種類、4種類にも増えてゆく。それがなんともスリリングなこと!最初はステージ上で何が起こっているか分からないまま1曲終わってしまったが、観ているだけで、次第に何となく分かってくる。唯一ちゃんと分かったことは、緑のバンダナを頭に巻くとその人が主導権を握るということ。自分が弾いてもいいし、選んだ人だけに弾かせる場合もある。自分と同じように真似させることも出来る。 それにしても、全員の反応のすばやさには度肝を抜かれる。反応の鈍さや遅れはそのまま音に出る。しかし、その間合いすらも手玉に取るように音で遊んでいる。 メインの楽器の他に飛び道具も多く持参。絶妙な使い方なので、即興でも音が厭なぶつかり方をしない。親の仇のように新聞紙を千切る大熊氏、「シェーッ」を決める太田氏、縦笛を2本吹いたままウクレレを弾くのを指示されて、戸惑う川口氏、吉田氏のドラムをチューバを持ちながら真似する関島氏、ドラムを叩きながら物販DVDの宣伝する吉田氏、などなど普段は絶対お目にかかれないようなものばかり。もちろん何時ものように、電動カッターで火花を散らし鉄鋼所のような焦げ臭いを撒き散らす坂本氏も健在。アンコールでは巻上氏も参加し、プロンプター坂本氏で異様な盛り上がりを見せる、あっという間の2時間だった。
はじめは外国語のように聴きなれないものだったが、それが母国語となり、共通の会話になった。しかし、それは人が誰もが知っていた原始の音だった。そんな言語のない会話を聴いた夜だった。 僕のかなりの表現不足はあるものの、これほど説明しきれないライブも他にない。とりあえずは観て!としか言いようがなくなる…。3月16日にも同じ渋谷La.mamaで他の面子で開催されるので興味がある方は是非。
日々、卑屈になる。人と接するのが億劫になる。このままだと、やさしくされてもやさしく返せない。やさしく出来ても嘘のような気がする。まるで「ガンダムを動かすのは、ぼくが1番上手いんだ」と言い張るアムロのように、ひとりよがりの心は張り裂けそう。
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