酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年11月19日(水) |
『ピリオド』 乃南アサ |
葉子はフリーのカメラマン。結婚相手の浮気を機に離婚し、独身。付き合っている相手は編集者の男で不倫関係。両親は他界し、今、兄が癌におかされ死に向っている。兄嫁はかつての同級生、志乃。歯切れが悪く物事をはっきり言わないつかみ所の無い女性だと思っている。甥は大学受験で、姪はある事件のトラウマで、東京の葉子のもとへ交替に転がり込んでくる。そして、不倫相手の自殺。兄の病死。葉子はもどかしいほどの望郷の念を心に抱きながら、甥や姪に必死でかかわりあっていくのだが・・・。
参りました。いきなり癌で死に向う人間が登場します。人間というものは窮地でその真価が人となりがまざまざと表れてくるものだとつくづく思ってしまう。重苦しい物語なのですが、葉子という一人の孤独な女性の魂は美しいです。葉子が耐えて頑張っているからなんとか読破できました。帰りたい、帰りたい、どこかへ帰りたいと心で悲鳴をあげている葉子。 生きていくという行為は、時代時代でひとつずつ‘ピリオド’を打ちながら、次へ進まなければならないのでしょう。その‘ピリオド’の打ち方を間違ったり、打たずに進むととんでもないことになる。私もきちんとピリオド打たなきゃなぁ・・・。はぁ。
人間は、傷つかずに生きてはいかれない。傷は、完全に癒えることない。それでも、もしかすると醜く残った傷痕さえ自分の一部として、受け入れていかなければならない。あらゆる傷を受けてもなお、生き続けた方が良いことを、この子はいつ知ることだろう。
『ピリオド』上 2002.5.20. 乃南アサ 双葉文庫
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