酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年11月09日(日) 『紫蘭の花嫁』 乃南アサ

 最初に、花嫁が消えた・・・。「逃げなきゃ、あいつから逃げなきゃ!」三田村夏季はどこまでも追ってくる男の影から逃げ続けている。神奈川県警の小田垣は連続婦女暴行事件犯を執念で追いかけている。小田垣は法医学研究室の渋沢に目をつけていた。孤高のエリート小田垣が通うバーの美女、摩衣子。摩衣子は小田垣の趣味の蘭の花をいつもどこかにあしらっている。摩衣子は小田垣を追っているのか?

 この物語を読んでいるとまるでサスペンスドラマを見ているかのような気分になりました。もしかしたらこの原作でドラマ化されていたかもしれないですね。
 物語は、追われる者と追う者の心理が複雑に絡み合い、意外な展開へ進んでいきます。本当に追っていた者が誰で、追われていた者が誰で何故なのかが明かされたとき、読んでいた自分がいかに乃南さんに翻弄されていたかに気付くことになります。うまいなぁ・・・。逃げる女の追い詰められた閉塞感・圧迫感は圧巻でした。

「私は精神異常者のように自分を神にたとえるつもりはない。私は、確かに選ばれた人間ではあるけれど」

『紫蘭の花嫁』 1996.9.20. 乃南アサ 光文社文庫



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