酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年10月12日(日) |
『赫い月照』 谺健二 |
母が不在の夜、物音で圭子は目覚めた。兄の悠二が出かけようとしている。兄の後をつけた圭子が目撃したのは、少女の首を切断する悠二の姿だった。 悠二の事件を苦にして母は自殺。天涯孤独となった圭子は、鯉口という刑事の後ろ盾で占い師となる。そして圭子の周囲でふたたび悪夢が幕をあける・・・。
この物語は、圭子のほかに、摩山という震災で心を病んだ男が登場し、ふたつの視点が交互に語られていきます。摩山は、酒鬼薔薇事件の少年の動機を探ろうと小説を書き始めます。この作中小説のタイトルが 『赫い月照』(あかいげっしょう)。圭子と摩山が係わり合い、物語は終結しますが、かなり心に重かったです。読み進めるも困難だった・・・。 あの震災と酒鬼薔薇事件は神戸の人々の心にどれだけ深い疵を残したか、考え込んでしまいました。酒鬼薔薇聖斗と名乗った少年Aは、自分の行為を“人間の壊れやすさを確かめるための聖なる実験”と語りました。こういう精神構造はどうやって形成されたのでしょうか。生まれながらのモンスターだったのでしょうか。どんなに理由を知りたくても、事件の真相は誰にも理解できない。少年Aだってどこまで自分の行為の意味を理解していたことか・・・。 いずれにしても加害者の家族の人生はずたずたにされてしまうのですね。
子供は何か不条理なことが起きた時、それを他人のせいになどできない。そんな理屈は持っていないんだ。世界が間違っているなんて、考えられない。そうだろう? 自分がこれから生きていく場所なのに。
『赫い月照』 2003.4.24. 谺健二 講談社
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