酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年08月15日(金) 『直線の死角』 山田宗樹

 弁護士の小早川は(もと)暴力団の顧問弁護士をやっている。紹介状を携えてやってくる相談者はろくなもんじゃない、と自分で言っている(笑)。ある日、美しい未亡人が小早川のもとへふらりと相談にやってきた。主人が交通事故死をしたと言う。小早川は、その未亡人・水野由美に‘逸失利益’を手にすることができる可能性を示唆する。また別口で顧問の(もと)暴力団、現在インタースピリッツの社長から知人の娘が起こした交通事故の示談の相談にのってくれるよう頼まれる。忙しくなってきた事務所に新しい事務員・紀籐ひろこが採用される。有能で美しいひろこに惹かれていく小早川。しかしひろこには人に言えない秘密があった。小早川とひろこは事務所のエンジェル坂本君によってどんどんと心が近づいていくのだが、大きな事件の荒波に飲み込まれてしまう・・・。

 これは、先日読んだ『嫌われ松子の一生』の作者・山田宗樹さんの第十八回横溝正史賞受賞作です。『嫌われ松子の一生』はぐいぐいと物語に引き込まれましたが、この作品もあっと言う間に読めてしまいました。保険金殺人は派手でリスクが大きいですが、この作品では‘逸失利益’という計算式をもってきているところが目新しい。保険金を狙って殺人をおかすという神経はちょっと怖すぎですね。
 『直線の死角』は保険金殺人に過失致死にヤクザに病気とたくさんの要素が盛り込まれています。それをごてごてめんどくさい〜と思わさないで最後まで運ぶあたり、うまいなぁと思いました。中でも小早川弁護士の死の瞬間は笑いなくしては読めません。だって・・・以下自粛。
 しばらくは山田宗樹さんの追っかけを続ける所存にございます。

 その幸福に満ちた笑顔を見たとき、私は、この女のためなら死ねるな、と思った。

『直線の死角』 1998.5.30. 山田宗樹 角川書店



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