酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年08月10日(日) 『死水』 三浦明博

 早瀬は事故で娘を失い、人生に迷ってしまう。釣り仲間の大道寺の夢の川づくりを生業とするべく、世捨て人のようにリバー・キーパーとして生きていた。川を見守り管理していた早瀬はある日ブラックバスを釣り上げる。この魚は悪食で川に棲む魚たちの生態系を破壊しかねない。密放流されたのだ。しかも死体まで見つかった。早瀬が守る川に流れてきた死の気配。そして事件がはじまった・・・。

 江戸川乱歩賞受賞作品の『滅びのモノクローム』では、ひとつのリールに隠された歴史の闇に迫るお話でした。この三浦さんはよほど釣りがお好きなのだなぁと思います。美しい川のほとりに丸太小屋を建てて暮らす。それは理想郷なのでしょうね。文明に慣れ親しんだ生活をする私ではありますが、不自由でもそこは楽園かもしれないな、と思ってみたり。
 今回の物語も透き通った文体で淡々と読ませてくれました。前作ともども読みやすいし、内容も気に入っています。自然破壊に関することは興味を持っているのでとても勉強になりました。
 今はもう物語の中にさえ存在しないけれど、早瀬の守った川べりでのんびり読書なんてしてみたかった。ビールでも呑みながら。

 身体を動かそう、そう考えた。近ごろ雑念が入り込むことが多くなっている。汗をかけば、胸の中のざわつく水面も落ち着きを取り戻すかもしれない。

『死水』 2003.7.31. 三浦明博 講談社



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