酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年07月16日(水) 『エディプスの恋人』 筒井康隆

 火田七瀬は、ある学校の事務員として働いている。七瀬は、エスパーの持つ選民意識をひとりの生徒から感じ取る。その少年の周りでは不可思議な事件が数多く起こっていた。まるでなにかの‘意思’に選ばれ守られているかのように。いつしか七瀬は少年に恋焦がれるようになるのだが・・・。

 《エディプス》はギリシャ神話に登場する悲劇の男の名前。エディプスは父を殺し、知らずに母親を妻としてしまう。ぶっちゃけて言うと近親相姦ですね。
 今回、七瀬はエディプスの母親から、「愛と幸福な人生が、完全に約束された」
。女性にとって大切な瞬間を奪われながら。
 うーんと、七瀬は『七瀬ふたたび』で死闘の果てに倒れました。なのに過去の意識はいっさい持たずに事務員として働き、興味の対象をさぐり、恋に落ちます。自分にとって大切な仲間をある瞬間まで思い出しもしない。その意味に七瀬が気づいた時、すごくせつなくなりました。七瀬は、家にはじかれ、国に戦いを挑まれ、神に好きなように動かされます。七瀬という魅惑的な女性の物語をここで終らせるにはこういう結末しかなかったと言えるのかもしれませんね。

 しかし過去のさまざまな神話を思い出してみれば、昔から神といわれていた存在には、神が保護しようとしている者に対して害意を抱く人間への極端な荒あらしい無慈悲さがあるようで、これは神の特質かもしれません。

『エディプスの恋人』 筒井康隆 新潮社文庫



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