2004年01月11日(日) |
25話 『ドーラの冒険が始まる』 |
アルバトロスの船倉には分解されたトラック。 左右のカタパルトにはコンテナを改造した貨車が1両ずつ。 ようやく北の海上駅に着いたのは夕暮れ時だった。
ドーラは村人に出迎えられるとまず村長(むらおさ)の元へ急いだ。
「今回戻って来たのにはある計画があってのことです。 それは地下鉄の復興に先駆けて、 自分自身で全軌道を確認するために旅立つことなのです」
「ほぉ、それは難儀なことよのう」
なんだかのんびりした答えが返って来た。
「ぜひ協力を…あなた方の協力が必要なのです」
ドーラは前のめりになって訴える。
「協力と言われてもあれだよ。ここは見てのとおり寂れた寒村じゃ。 男手は足りんし若者も少ない。何が出来るかね?」
しぶい。
「大したことではありません。 私の用意してきた列車を地下へ降ろして組みたてて欲しいのです」
微妙な間が空く。
「良かろう。それに乗ってあんたは旅に出るというんだね」
「はい」
簡潔に話はついた。
---翌日
がらんどうのエレベーター通路から、 重い部品をひとつひとつ降ろして行く。 なかでも水素タンクは慎重を要した。 コンテナは大きすぎて通らないので、 2つに切り分けてから降ろし、下でまたくっつけた。 作業は船大工の棟梁ナルーザスさんが、 若い衆を先導して引き受けてくれた。 ナルーザスさんの跡取息子のサウムという若者が、 何故かドーラによく懐いて、あれこれと世話を焼いてくれた。 きっと職人気質のドーラの姿にある種の憧れを抱いたのだろう。
「ドーラさん、実は僕も連れて行って欲しいんです」
藪から棒になんだろぅ。
「地下鉄の旅へ…かい?」
ドーラは連結器の調整をしていた手を休めて訊いた。
「僕はもう20歳です。子供ではありません」
やけに真面目腐った顔で言う。
「そうだね、私もキミの歳には海へ出ていた」
しばし沈黙が流れる。
「棟梁は知っているのかい?つまり…」
ドーラは整備中の列車(のようなもの)を見上げてから、 プラットフォームの向うへと続く暗闇を指し示した。
(この先には何が待ちうけているか解からない。危険な旅なのだ)
「僕は一生こんな小さな村で終わりたくない。 外の世界を見たいんだ。それがどんなものであれ」
うつむきながらも真剣に語るサウム。 自分にもこんな情熱的な時代があったっけと少し照れたドーラだった。
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