2004年01月10日(土) |
24話 『子供達大活躍』 |
13才の三男コザイルと12才の次女テトゥが、 クヴィスの引き摺るシーカヤックの上ではしゃいでいる。
「ここぐるぐる降りていくの面白いー!」
とテトゥ。
「これは遊びじゃあないんだぞ」
1つ年上のコザイルはしかめっ面をして見せた。 と言ってもこの薄暗がりでは相手に見えていないが。
「到着いたしました。さあ船を漕ぎ出しましょう」
クヴィスは腰に結んだロープを解いて2本足で立ち上がった。 彼がこっちを向くたびに額のサーチライトが眩しい。 2人は膝を伸ばしてパドリングの用意をした。 クヴィスは船の艫をえいと押し出した。 すーっと流れるように進むカヤック。 舳先に取りつけたランタンが湖面を映し出す。 それは神秘的なほどに透明な深い深い湖だった。
「わぁ〜 なんかいっぱい泳いでるぅ!」
テトゥは身を乗り出して目を輝かせた。
「クヴィスさんの言うにはウナギとかエビが棲んでいるんだって」
つり竿を準備しながら答えるコザイル。 エサはとりあえず練り餌。ダメもとでチャレンジだ。
「さあ、このへんでいいだろう。竿を下ろしてみようよ」
二人は冷えた空気と薄暗闇に怯えながらも、 ぺちゃくちゃお喋りをして気を紛らわせた。
「ねえってば全然釣れないじゃない〜」
「そうだね。おかしいねぇ」
もう2時間以上こうしている。 クヴィスは念の為、機関銃を構えて上のヘビコウモリの巣のあたりを警戒していた。
「いかがですかお2人ともー」
とクヴィス。
「ダメーー!」
二人の声がジオシリンダーの中でこだました。 なんだか虚しくなった。
「あのさ、さっきから考えてたんだけどね、 このお魚って何を食べているの?」
「そりゃあエビだの小さいのでしょう」
「だったらね、まずエビとかを獲ってね、 それを針に付けないとダメなんじゃないかしら?」
「兄ちゃんだってそのくらい考えついたサ。 でもあのエビは光が当るとスーっと潜ってしまうんだ。 きっと光が怖いんだよ。だから網を仕掛けておいて暗くしないと」
「なんだか面倒ね」
「そういや、前に本で読んだことがあるよ。 ウナギの仲間は狭い場所に入り込む習性があるって」
「…ふぅーん」
「あ、今凄いこと思いついちゃった!」
「どうしたの?」
「オレ天才かも。餌なんて必要無かったんだよー」
そう言うが早いか彼はつり竿を仕舞ってクヴィスの待つ岸へ向かった。
---地上にて
「ピピリとアーミ、そこいらを掘ってペットボトルを探して来い」
鼻の穴を膨らませたコザイルは年下の姉妹に命令した。
「またエバってるぅ。」
砂遊びをしていた二人は膨れっ面をしながらも言う通りにした。 30分程して背負い籠一杯のペットボトルが集まった。
「こんなんで何をするのコザイル兄ちゃん?」
と11才のアーミ。
「まあ見ているがいい。凄いぞ!」
コザイルは紐とドライバーとカッターで何か作り始めた。 それは見事な“仕掛け”だった。 勇みこんで再び地下に降りるコザイル。 今度はピピリ、アーミを連れて行った。 もちろんクヴィスのガード付きで。
さっきのようにカヤックを漕ぎ出すと、作ったばかりの仕掛けを次々に沈めて行った。 仕掛けに結びつけられた「浮き」が点々と連なっている。 30個くらいの仕掛けを沈めると、独り言を言った。
(これでバッチリだ。間違いない)
翌朝、彼は成果を確かめる為また地底湖へ向かった。 結果は大漁であった。 どの仕掛けにも一匹ずつのメクラウナギが入っていた。
「母さん喜ぶだろうなっ……」
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