巡礼者の1人キレネーズという男が、 仲間達と共に”修行”と呼ばれる発掘作業に追われていた。 そこはかつてジオシリンダーと呼ばれた街。 今は巨大なゴミ箱と化している。 人類は海上へ逃げ延びるさい、住居を昆虫らの繁殖地にされまいと、 天蓋の一部に穴を開け、そこから残土や産業廃棄物、 はては強力な農薬散布によって殺した昆虫らを、 かまわずどんどん放りこんで埋め戻してしまった。 それから7世紀あまり経った現在。 ドームはある宗教団体の“聖地”とされていた。 信者達は自らの原罪を清める為に、 過酷な手作業の発掘をさせられていた。 キレネーズはスカイブルーのアーマードスーツに身を固め、 今日も単調極まりない作業に従事している。
いくら掘っても半分砂になりかかった虫の死骸ばかり出てくる。 何か価値の有りそうなものを見つけないと、 次の報告会で身を小さくしていなければならないな。 自分にあてがわれた新米の連中はまったくやる気が無いし。 はぁ、こんなことで本当にオレの罪は清められるんだろうか… そんなことを思い巡らしながら、えいっとツルハシを落すと、 虫の死骸の下になにか固い物が当った。 慌ててしゃがみ込んで手でがさがさと穿った。
(…これはなんだろぅ?)
見た事もない物体。 掌サイズの角の取れた2つの四角錐の底辺同士を、 ペタンとくっつけたような形状。 良く解からないが金属の様だ。 にんまりとしながらキレネーズは作業長の元へ急いだ。 とその時、持っていた物体の底辺がブーンと鳴って30cmほど離れた。 離れた空間にホログラムが映し出された。 キレネーズは立ち尽くす。 ホログラムの映像は、裸の男女がベッドの上で縺れ合っているものだった。 キレネーズはなんだか気まずくなって誰にも見られていない事を確かめてから、 それをクズ山の方へ放り投げてしまった。
(あんなものを献上したらよけいに罪が重くなってしまうよ。はぁ)
ひとりごちた。
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