2003年07月09日(水) |
11話 『不思議なロボット』 |
象牙色の人形はむっくり立ちあがると、 まるで執事のような口ぶりで話し始めた。
『・・・ありがとうございます。緊急避難より76日が経ちました。 お客様がたの身に、何かご不自由はございませんか』
「・・・・・・?」
これはいったい何だろう。
「ぁ、あなたは誰ですか?」とリアラが近付きながら問い掛ける。
『私はクリヒバウム航空のコンダクターロボット。クヴィスと申します』
よく解からないが、これは危険な”機械”ではなさそうだ。
「クヴィスさん? あなたは…あの中で何をしていたのですか?」
『私は76日前の観光水上艇墜落事故から、救命カプセルの中でスリープ状態にありました』
「事故があったのですね」
『はい』
「…では、他の乗客の皆さんはどうなさったの?」
『救命カプセルは自動発信の信号により策偵されます。 おそらく無事に救助されたことでしょう』
「あなたはどうして…ここに…」
状況がよく飲み込めないリアラ。
『海流の影響ではぐれたのでしょう。それに乗客以外の救出は後回しにされていますから』
「……それは」
この入り江にはまったくなんでも漂着するものだ。
「ではクヴィスさん、一緒に来てください。頼みたい事があります」
『ハイ、喜んで』
クヴィスは開いた卵の床下から、小さなトランクを引っ張り出した。 中には非常食とサージカルキットが入っている。 リアラ達は、もうオオガニが居ないのをよく確認して岩場へ飛び降りた。 怪我をした男の子を応急手当して、クヴィスが背負ってくれた。 彼(?)は人間に奉仕のために存在するのだった。
とりあえずロフティーの建てた小屋へ行くと、 男の子をソファーに寝かせた。そして彼の手当てをはじめた。 すると、見ていたクヴィスがおもむろに近づき片手を差し出した。 細い手首がパカッと割れて、中からマイクロハンドとレーザーカッターが出てきた。
『お任せ下さい。消毒と縫合を致します』
「そ、そうですか。お、お願いします」
リアラはソファーから一歩下がった。 クヴィスが患部の周りの衣服を切り裂いた。 手際よく手術がなされるのを皆で見守る。 男の子はリアラの手をぎゅっと握り締めた。 子供達はクヴィスの名医のような手捌きを食い入る様に見つめていた。 リアラは麻酔が効いてまどろみ始めた男の子に声を掛けつづける。
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