ギルドは海賊と、ある協定を結んでいた。 海賊船の停泊、補給、修理を無条件に請け負うかわり、 ギルドの旗を掲げた彼らは、決して海賊に襲われない。
このころ、「人工環礁連合」は、 軍備増強の理由として、海賊からの領民の庇護を挙げていた。 だが実際は本腰を入れていない。 略奪による被害は、もっぱら財政への貢献度が低い、最下層民だ。 ブルジョアは外洋高速ヨットに居を構えている。
海賊の欲がる手合のもの……前時代の遺物は、安全なギルドの本部に預ける慣わしがあった。 ギルドは漁 夫の利を得ていた。
ある海域において、方々より船団が集結しつつあった。 ロフティーは、この頃にわかに各地で自然発生をはじめた半独立組織の自警団を集結させる。
略奪に失敗し、保護区でもあるギルドコロニーへと帰還しようとしている海賊一派がいた。 彼らを迎え撃つために、即席の大艦隊が、ジェリコの城壁の如く、横並びになって錨をおろす方舟の死角を利用している。
コロニーまで数キロまで迫った時……。
ようやく海賊は、見知らぬ船団の存在に気がついた。 しかし、のてんでんばらばらな風体から同業者かと思った。 ギルドに連絡をとったが、なんの返事も無い。 ロフティーは、あらかじめコロニーの代表と密約を結んでいた。 このところ突け上がっている海賊一派を、 煙たく感じていたギルド上層部は、 彼らを見切ってロフティーの自警団を、 傘下に入れようと画策していたのだ。
飼い犬はライオンの檻に放りこまれた…
1発の発煙筒を合図に、横1列になっていた方舟が退避した。 そして一斉艦砲射撃! 陣形も取っていなかった海賊船は、慌てふためいた。 海賊とは、本来海戦には向いていない。 ホームベイから狙った街に出向き、上陸して略奪。 荒らすだけ荒らして帰還する。それが海賊行為の定番である。 海戦に慣れている自警団にとって、不意を突かれた海賊船などちょろいもの。 たちまち戦線放棄する海賊船が後を絶たない。 1/3が撃沈。残りは航行不能。 あっという間だった。 ロフティーは胸のすく思いだった。
後にギルドは、この1件への関与を否定した。
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ロフティーには考えがあった。 その昔ギルドにいた時、苦汁を飲まされた経験から、 思わせぶりなそぶりとは反対に、ギルドへの暗計を練っていた。 ギルドの飼い犬になるつもりなど、はなから無い。
この「自警団連合」を、より密にする為には、 「人工環礁連合」というスポンサーが必要だ。 暗礁海域での妨害行為に腹を立てている連合にとって、 海賊を叩いて廻る自警団の存在は小さくない。 正式な海軍への登用も考えられている。
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ギルドは連合への態度を強硬化させつつある。 難民受け入れの拒否から始まった。 重要な商用航路を牛耳る方舟は、連合に関連する船舶の停泊を拒否した。 人工環礁間の通商妨害とみなした連合は、これを実力行使で捻じ伏せる。 つまり…いまや正式な海軍となったロフティー率いる「自警団連合」を、 ギルド本部のあるコロニーへ派遣したのだ。
つづく
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